累計282㎞・12日間のヨーロッパトレイルの装備を公開|WORLDTRAILS 番外編
WOLRDTRAILSは海外のトレイルルートのトレイル記を残していくことで日本から海外に歩く人が1人でも増えたらいいなと思い始まった連載企画。今回は芦塚勇樹さんが2024年の7月に歩いたモンブラン山群の周りを一周する「TMB(Tour du Mont Blanc)」と世界遺産ドロミテにある「AV1(Alta Via1」の2つのヨーロッパトレイルで使用した道具をご紹介します。
トレイルの詳細は下記記事をご覧ください。
もくじ
持って行った装備
今回は2つのヨーロッパトレイル、累計282㎞を12日間で歩きました。
標高は高いところで3,000m近くあり、寒暖差に備える必要があります。テント泊中心の行程を想定したため、食料についても基本的には持参し、現地の食事の利用は数回に抑える方針としました。円安、物価高もあり、コストを抑えるためにも。
トレイルで持って行った装備は以下です。昨年、ヨーロッパのモンブランからマッターホルンまでを繋ぐWHR(The Walker’s Haute Route)を歩いたときは、約30kgの荷物を背負って12日間歩いていましたが、今年は、速く、長く歩けるように、約18kgの重量となる様に装備を見直しました。大きなところでは、ザック、シュラフ、テント、三脚も軽量化のため、昨年から変更しています。
なお、今回はイタリアのAV1を歩いた後に、TMBを歩く予定にしていたため、後半のTMBで使用する食料などは、中継地であるミラノで預けてから、AV1を歩きました。使用した荷物預かりサービスは以下になります。
衣服
ウェア類は、山行中のベースレイヤーとアクティブインサレーションに加えて、テント泊時の保温着持っていきました。その中でも特に使用感の良かったものを紹介します。
Power Dry T-shirt(MMA)
・POLARTEC® Power Dry素材により、速乾性と通気性に優れる。速乾性が高いため、汗を掻いても比較的速やかに乾燥した。また、雨で濡れた後や水洗い後も、晴天下で1時間ほど着用して歩けば乾きました。
・2~3日に1回の水洗いにより、ロングトレイルで一番気になる匂いは発生しませんでした。
NeoShell Jacket 02 / Pant 02(Ansewr4)
・POLARTEC® NeoShell®素材により、レインウェアでありながら、通気性に優れるという評判の通り、大雨でも防水性に問題なく、ゴアテックスよりも蒸れない印象でした。登山時の体内の発熱・発汗が進むと、暑くなるときもありましたが、着用時の行動も基本的には問題ありませんでした。
・柔軟性・追従性に優れ、嵩張り、ごわつきが無く、動きやすいため、歩行の妨げになりませんでした。
Alpha Flash (Rab)
・軽量なPOLATEC®Alpha™ダイレクト素材を使用しており、通気性と保温性に優れ、動くと外気を通す一方、停滞時には保温されるという評判の通り、行動時は風抜けが良く、身体が発熱し温まるまでは快適でした。
・休憩・停滞時は保温着としても活用でき、これと上記で紹介したネオシェルのレインウェアを併用することで、寒さも問題ありませんでした。気温が暑くなく、風で肌寒いときに、特に重宝しました。
Sonic Tee(Rab)
・圧倒的に軽い。
・速乾性も高く、汗・雨に濡れても乾きやすかった。
・川等による水洗いにより、気になる匂いも発生しなかった。
Talus Ultra Shorts (Rab)
・シンプルな構造で圧倒的に軽い。ただし、トレイルで重宝するポケットが無いのがネックであったが、サコッシュ等があれば特に困らなかった。
・速乾性も高く、汗・雨で濡れても乾きやすい。着用したまま湖を泳いでも、問題なく、すぐに乾いた。
・水洗いのお陰か、トレイルで一番気になる匂いも発生しませんでした。
・他の防臭・速乾のパンツよりは厚めの生地であり、着用前は暑さ・蒸れが気になると思っていましたが、トレイル中も全く気になりませんでした。
・防臭効果も高く、連続着用でも匂いは発生しませんでした。着用感も良いため、他の防臭・速乾のパンツよりも良い印象で、夏はもちろん、服にも着用できそうです。
・素材がメリノウール生地であるため、速乾性はポリエステルなどに比べて劣る印象を受けましたが、気になる範囲ではありませんでした。
ライトアルファタイツ(山と道)
・軽量なPOLATEC®Alpha™ダイレクト素材を使用しており、行動時は通気性に、停滞時は保温性に優れる。特に、山小屋やテント場での休息時に活用した。
ハイカー 1/4ソック ミッドウェイト クッション(ダーンタフ)
・適度なクッション性があり、トレイル時に足に水泡(水ぶくれ)が発生しなかった(事前に水ぶくれしそうな箇所にテーピング処置はしていた)。
・メリノウール配合により、トレイル時に不快な匂いは発生しなかった。ただし、土砂降りで靴の中まで濡れた後に、当該ソックスをビニール袋に入れておくと、翌日には異臭がしました。
・雨天時のトレイルを除き、蒸れも発生しなかった。
スポーツてぬぐい 松葉(chaoras)
・日除け、タオル代わり等、様々なシチュエーションで重宝します。
・汗をぬぐうことはもちろん、沢等で濡らして首に巻いたりして冷却グッズとしても、テントの露を拭くためにも、活用しました。
・軽く、速乾性も高いため、濡れても、晴天時であれば行動中に乾いてました。
アクティブアイス クロマフルサングローブ (アウトドアリサーチ)
・紫外線対策として、晴れの時は基本的には常時、着用しました。
・汗を吸水しやすく、その蒸発時に周囲の熱を奪う仕組みを利用した冷却作用、及び皮膚に直接、太陽光が当たるのを防ぐためか、炎天下で着用しても暑さは感じなかった。
・グローブしたまま、携帯を操作できる点も良かった。
・指穴あき、なしをシーン(岩場、鎖場)に応じて使い分けました。
フェロッシーハイブリッドゲイター (アウトドアリサーチ)
・通常のゲイタ―より圧倒的に軽く(63g)、ローカットシューズと組み合わせるには最適でした。
・伸縮性が高く、歩行の妨げになりませんでした。
・ザレ場等の砂利道において、小石や砂が靴へ混入することを防げました。
・小雨~雨は防げましたが、撥水機能は無いためか、大雨では機能を発揮していない印象であった。
道具
道具についても、軽さを重要視しながら使用しやすいものを厳選しました。
Mythic Ultra 120 Modular(Rab)
・330gの軽量シュラフであるが、独自の構造と保温機能により、夏の高山でのロングトレイルでも快適に使用できました。
・疎水性ダウンであり、テント内の結露でも内部が濡れることはなく、太陽の下で干したときに素早く乾燥しました。
・背中にはダウンがないが、R値6.9のエアマットと組み合わせることで寒さを感じず快適な寝心地でした。なお、10月中旬の穂高岳山荘テント泊でも、エアマット Rab Ultrasphere 4.5に組み合わせて使用した際にも問題なく熟睡できました。
・身体を入れるジッパー部分が短いため、当初は身体の出し入れに苦労したが慣れれば問題ありませんでした。
OOahh Sport (OOFOS)
・軽量なリカバリーサンダル。今回は、ソックスを履いたまま着用できるモデルを選定しました。
・休憩時、宿泊地で大いに活用し、靴から解放されたリフレッシュ感、またクッション性能により、足の疲労がすぐに取れました。これまで使用していたサンダルと比較すると、圧倒的に気持ちよいことに加えて、本サンダルのお陰で、最後まで脚の故障・疲労無く歩けた気がします。
パックアウト コンプレッションスタッフサック20L (アウトドアリサーチ)
・シームテープは貼られてませんが、一定の防水性能はあるため、主に濡れたくない衣類を入れ、コンプレッションにより圧縮する用途で使用しました。
・予備的な簡易ザックとしても利用でき、カメラとレンズ、他ある程度のものを入れることができる容量であるため、ちょっとした外出、また、飛行機内の機内持ち込み荷物としても活用しました。
バードコール(オーデュボン)
・軽くねじることで、小鳥の鳴き声が出せます。
・利用時に小鳥が寄ってきて、心地よい囀りを奏でてくれたシーンもありますが、もともとそばに鳥がいないと高い効果が得られない印象でした。
ナルゲンボトル(ナルゲン/ドットヒャッケイ)
・500mLサイズのボトル。飲みやすく、洗いやすく、飲みやすいため、水分補給に最適でした。
・無印良品の「水に溶かす」シリーズ(ソルティライチ/アセロラ、ルイボスティー)を水に混ぜて、行動時のリフレッシュドリンクを作る際にも活用しました。
食料
持参する食料について考え方は以下です。
カロリー・タンパク質・食物繊維のバランスを見て持参します。もちろん、ビタミンやミネラルなどの必須栄養素も1日必要量以上摂取できるようにしています。MCTオイルも日常的に摂取し、持久力を高めるような身体作りをしており、さらに、アミノ酸摂取で疲労感軽減も狙いました。なお、重量を加味すると、エナジーバーやサプリメントが中心となりました。なお、全ての食料を持参するのではなく、現地でしか味わえない山小屋の食事も併用して利用するのが良いでしょう。
医薬品・生活用品
普段から使用するコンタクトレンズやUVケアアイテムに加えて、常備薬(風邪薬、胃薬、頭痛薬等)や自身が扱える範囲のファーストエイドアイテムも持参しました。特に、ヨーロッパは日差しが強いため、UVケアは必須となります。上記の写真には写っていませんが、保湿剤やステロイド軟膏剤も持参しています。
まとめ
日本での夏の縦走と同じような装備をベースに、ヨーロッパ特有の気候(強い紫外線、乾燥気候、夏でも雪が降る可能性がある)も加味して、装備を選択しました。また、ロングトレイルでは、ベースとなる体力も必要ですが、疲労や体調不良が生じないように、摂取するエネルギー、栄養素も考慮する必要があります。海外トレイルは、日本よりもハードルが高く感じますが、事前に計画を練って、適切な行動を取れば、非常に素晴らしい経験になります。達成感や感動もこれまで以上のものになるでしょう。今回の装備が記事を読んでいる皆様のトレイルの参考になれば幸いです。
保険、GPSアプリ、言語の問題、その他の留意事項などは、昨年歩いたヨーロッパトレイルであるWHR(The Walker’s Haute Route)と共通しております。こちらも参考にしてください。なお、荷物を比較すると、昨年から軽量化していることが分かります。
【前編】ヨーロッパのロングトレイル「オートルート(The Walkerʼs Haute Route)」に挑戦!必要な準備や持ち物は? – .HYAKKEI[ドットヒャッケイ]
【後編】ヨーロッパのロングトレイル「オートルート(The Walkerʼs Haute Route)」を歩いて – .HYAKKEI[ドットヒャッケイ]
なお、インスタグラムでも様々な写真を紹介しております。もし本トレイルに興味があれば、ご連絡いただければ、相談や情報提供もできますので、お気軽にお問い合わせください。
絶景求めて、山をひたすら歩いています。 福岡市出身、京都市在住。平日は会社勤務。週末はどこかの山へ。朝焼け、夕焼け、テント泊での長期縦走が好み。季節問わず、その時にしか見れない景色を見に、日本アルプスをメインにしつつも、九州〜北海道、時には海外も訪れる。最近ようやく軽量化に目覚めたものの、まだまだ重量系ハイカー。フルマラソンやウルトラマラソンも走り、日帰りロングトレイルも得意。