10 石楠花 〜野川かさね エッセイ〜
登山道わきにシャクナゲの花の姿。
雨に濡れて、葉の表面がつやつやと光る。
花についた水滴はその色を含んだかのように薄いピンク色。
シャクナゲの花のまわりにどこか楽しげな空気が漂う。
このあいだ、山を歩いた時、
シャクナゲは冬の寒さに耐え、縮こませてその葉を
ようやく開いたところだった。
その姿からは想像できないほど、
今日のシャクナゲは楽しげに、軽やかに
でも決して派手に騒ぐことなく、
山での自分の時間を楽しんでいるように見えた。
写真家。
山と自然をテーマに作品を発表。著書に「山と写真」、共著に「山と山小屋」「山小屋の灯」「山・音・色」など。ホシガラス山岳会としても出版、イベントに携わる。