水筒とわたし。私が山に行くとき必ず持っていくもの。#02
私は普段ソロの山行が多い。それでも必ず900mlの山専ボトルにお湯を満タンにして持っていく。これだけで気持ち的に無敵である。
ちゃんと山用のザックと登山靴で山に登るようになってから8、9年だろうか。当初は春から夏に登ることが多く、水筒はあまり持たなかった。あったらあったで便利だとは思っていたが、たまに500mlを持って行く程度。ほとんどの場合、山頂でお湯を沸かしてレトルトを温めたりラーメンを作ったりしていた。
お湯を携帯することの大切さが身に沁みたのは、登山を始めて3年目位に梅雨明け間近の白馬岳に行った時である。
当時唯一の山友達と初めての山小屋泊の計画。膨大な期待と少しの緊張を伴い新宿から夜行バスで猿倉荘に向かった。天気予報は登山に向かないと出ており、登山口は予想通りの雨模様。まだ気温が低く、猿倉山荘で準備をしているときは息が白かったような気がする。
この時は昔から使っていた1ℓの水筒を空で持って行っており、登山口で準備をしながらお湯を沸かすつもりだった。だが、雨が降っていて小屋周辺が込み合い、また、最初から雨というのが初めてだったのでそわそわしてお湯のことを失念していた。
とりあえず大雪渓まで行って、体力的に厳しそうなら戻ってもいいやくらいで登り始めたが、7月上旬の登山道は植物が生き生きとしてどんどんテンションが上がる。登っているので体温も上がる。雪渓を目の当たりにして『ほんとに来ちゃったーーーー!!』と浮かれまくっていた。
だが、それは私だけの話であった。
友人はというと、雪渓手前で靴が浸水してしまっていたらしい。それでも今回のために購入した軽アイゼンを使おうと雪渓を歩き出したが、足の冷たさをかばって少し歩き方が崩れたらしく腰の痛みを訴えていた。
雪渓を歩いているときは雨はやんでいたが、下から風が吹き上げてきて体温を奪う。そこまで冷えを感じていなかった私でさえ雪渓では風の冷たさを感じたので、友人は相当堪えただろう。
この時温かいスープでも口にできていればだいぶ違ったと思う。
友人はもともと山に入ると食が細いタイプだったが、寒さで余計に食欲がなく行動食もほとんど食べていないようだった。
この日お湯は私が持って行くと言っていたので、この失敗は本当に申し訳なかった。
今考えれば雨であってもお湯を沸かしてエネルギー補給すればよかったのだが、当時の私たちはそんな機転はきかずただ震えながら足を進めるだけだった。
それでも最大の難関「大雪渓」をクリアしたことで気持ちが少し持ち直したようだった。
コースタイム6時間ほどのところ、8時間かけてようやく白馬岳頂上宿舎到着。この日初めて温かいお茶を口にした。この時の安堵感といったらなかった。湯呑から伝わる温かさと胃が温まる感覚。雨がしのげていることも大きかったが、お茶だけでこんなに温まるのだと実感した。
ここで一日を終えたいところだが、我々の宿泊地までは更に20分。出発から9時間近くかけようやく白馬山荘に到着。本当によく頑張った!!
1日目はつらいことばかりだったが、2日目は青空も見え、更には立派な雲海が広がっていた!
栂池方面へ向かったが、稜線からの見返り白馬岳が最高に格好良かった。前後左右どこを見ても絶景。足元には高山植物。写真を何枚撮っても足らなかった。た。(ちなみに1日目は大雪渓での数枚のみ。。。)
梅雨明け前で登山者が少ないうえ、とにかく下りるのがもったいない絶好の登山日和。
栂池ロープウェーまでコースタイム5時間半程度のところ8時間ほどかかった。苦労した分のご褒美を心ゆくまで堪能した。
地獄と天国を味わったというと語弊があるが、1泊2日の冒険はその後大いに役立つ経験となった。
それ以後、登山でお湯を携帯するのはマストとなり、別件ではあるが山ごはんの魅力にも目覚めた。
・・・これは水筒とわたしというより、お湯とわたしのエピソードといったほうがよいのかもしれない。
何はともあれ、すぐに温かいものを口にできるよう備えるのは時短にもなるしお薦めしたい。
最近は登山の〆のお茶漬けにはまっている。梅茶などを足すと味にパンチも出て疲れた体に沁みるので皆さんも是非一度お試しあれ。
山登り、神輿、キャンプ、旅行ととにかく遊び歩くのが好き。
関東+山梨、長野、福島までは隣町の感覚。