青い空と連なる山々を見ると
できるだけ荷物も自分も身軽にして、
あっちの山からこっちの山へとどこまでも歩き続けていきたいなと
いつもよりも遠くに視線をやることが多くなる。

こういう日はいつもの倍フィルムを消耗してしまう。

フィルムは多めに持っているが
「身軽に」というのとは遠ざかってしまう。

そして、私は山に着替えを持っていかなくなった。
2泊までならまったく着替えを持たずに、
それ以上になると予備の靴下を一足。

カメラやフィルムを優先させて、
着替えだけでなく他の装備も
どんどん持たなくなっていった。

最初のうちこそ、多少の心細さを感じたが、
そのうちにすぐに慣れてしまった。

ないものはないものとしての
自分ができあがっていったのだ。

足りないものを補うように用心を重ねるよりも、
いまあるものを十分に味わうことで
気づくことがあると、
山は教えてくれた。

野川かさね

写真家

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この記事を書いた人

野川かさね

山と自然をテーマに作品を発表。著書に「山と写真」、共著に「山と山小屋」「山小屋の灯」「山・音・色」など。ホシガラス山岳会としても出版、イベントに携わる。

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