04 その時の季節 〜野川かさね エッセイ〜

山のどの季節が好きなのかと聞かれると
答えに困ってしまう。

いつの季節を歩いても楽しいというのが
その返答に困る理由のひとつではあるのだけれども、
1番の理由は、季節というものは
はっきりと区切られているものではないと思うからだ。

山を歩いていると、
流れる時のなかで
自然の小さな変化のひとつひとつが
その日、その時の季節であって、
その季節が連なって存在しているように
感じるようになった。

そんなふうに季節が見えはじめたのは
いつ頃からだったろう。

何度も同じ山を、道を歩くことが
好きになったのも同じ頃だった。

そして、東京の街も同じように
季節を重ねていることに
気づいたのもちょうどその頃だったと思う。

きっと山も街もずっと前から
その日、その時の季節を重ねて
その場所に存在していたのだろう。

もうすこしゆっくりと歩いてみよう。

その時の季節を見つめるために。

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