
NANGAが生んだ“MODMNT”という実験服
もくじ
「服を道具に」──MODMNTが掲げる新しい哲学
2025年10月8日、NANGA SHOP harajukuで「MODMNT(モドメント)2025 Press Preview & Launch Party」が開催された。
“MODMNT”は、「Module(構造)」「Mode(様式)」「Equipment(装備)」「Element(要素)」の4つの言葉を掛け合わせて生まれた造語。
日常に拡張性をもたらす、“道具のようなウェア”をテーマに掲げた新ブランドである。
これまでNANGAが築いてきた“ダウンブランド”の印象を超え、ファッションと機能性の境界を軽やかに横断する。
着る人の発想次第で形を変える、そんな構築的で自由な服の世界が広がっていた。

デザイナー・鈴木大器が描く、“服を組み立てる”という遊び
MODMNTのデザインを監修するのは、Engineered Garmentsのデザイナー、鈴木大器氏。
ニューヨークを拠点に、ワークやミリタリーを現代のライフスタイルに再構築することで知られる。
鈴木氏は語る。
「服をパーツのように扱って、それを組み合わせてコーディネートを構築する。そんなブランドがあったらおもしろいと思ったんです。」
その発想の根底には、子どもの頃に夢中になったブロック遊びのような自由さがある。
完成された服を着るのではなく、着る人が組み立てて完成させる――そんな思想がブランド名にも宿る。
「〈ナンガ〉のブランドだと気づかれないくらいにしたかった」と鈴木氏。
アウトドアブランドの延長線ではなく、ファッションとしての挑戦を意識した結果、
“レイヤー”“組み合わせ”“拡張”といったキーワードが生まれた。
アウトドアではなく、あくまで装い。
しかし装飾的ではなく、どこかアメリカ的な無骨さが漂う。
構造と余白、その絶妙なバランスがMODMNTの魅力なのだろう。
ギアの構造美。モジュールで遊ぶ服
会場に並ぶアイテムは、まるでギアを組み合わせるように設計されていた。
インナーダウンとアウターをボタンで接続できる構造など、モジュール的な機能がデザインの中に息づく。
“機能を魅せる”という発想ではなく、機能がデザインを構成する。
シルエット、素材、ディテール。
どれを取っても理にかなっていて、同時に美しい。
服というより、システムを纏う感覚に近いかもしれない。

【MIL SMOCK SHORT】ミリタリーとフィッシングの融合
ひと際存在感を放っていたのが、ブランドの象徴的アイテム 「MIL SMOCK SHORT」。
英国ロイヤルネイビーのヴェンタイルスモックをベースに、バブアーの「Spay」に代表されるフィッシングジャケットの要素を取り入れた一着だ。
防水性と透湿性を兼ね備えた3層素材を採用し、耐水圧11,000mm/透湿度8,500g/m²/24hというハイスペックを実現。
雨や湿気にも強く、気候に左右されない快適さを持つ。
ショート丈の設計で、ロングシャツやベストとのレイヤードにも対応。
ミリタリー × フィッシング × モダンデザイン――3つの文脈が交差する、新しいスモックのかたちだ。

【CORDUROY UTILITY CPO SHIRT】秋冬を支える万能選手
もうひとつ印象的だったのが、14Wコーデュロイを使用した「CORDUROY UTILITY CPO SHIRT」。
軍用シャツジャケットをベースに、ポケットの配置を強調したデザインは、見た目のアクセントであると同時に高い実用性を持つ。
保温性に優れた素材は秋冬シーズンに最適で、柔らかな畝が光を受けるたびに表情を変える。
シャツの軽快さ × ジャケットの存在感 × ミリタリーディテールを融合させた構成は、カジュアルからワークスタイルまで幅広く対応。
街でも山でも、装備としての服が似合う季節にちょうどいい。

ファッションとギアの境界線を消す ― “道具のような服”が描く未来
MODMNTのコレクションを前にして感じたのは、「服をどう着るか」ではなく「服でどう遊ぶか」という発想の転換だった。
防寒具でもトレンドでもなく、それは使う人が能動的に構築していく装備。
機能と造形のあいだに線を引かないデザイン。
アウトドアの合理性とファッションの美意識が、ひとつの服の中で溶け合っている。
MODMNTは、アウトドアとファッションの中間ではなく、両者を包括する“第三の領域”を模索している。
ギアを纏うように服を着る――そんな新しい感覚が、このブランドの指針なのかもしれない。
“機能を纏う”時代から、“機能と遊ぶ”時代へ。
その変化の中で、MODMNTがどんな進化を見せていくのか。今後の展開に注目したい。

.HYAKKEI 特派員
日本一周中の出会いをきっかけに登山を始め、Instagramで全国の山や自然の魅力を発信している。
気軽に行けるハイキングから縦走や雪山まで幅広く楽しむ。
イベントの企画やPR活動を通じて、アウトドアの魅力を多くの人に届けている。