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「車中泊」を駆使して、 真冬のアウトドアライフの楽しさ・面白さを倍増する!|上高地レポート(後編)

上高地レポートの前編はこちら

わたしは「クルマ旅の専門家」として日々活動しており、前回寄稿した「上高地スノー・トレッキング」の取材も、「車中泊」を駆使して晴れの日の様子をレポートしています。
実は今回、当初計画していた撮影予定日の天気予報が直前に変わり、なんと「雨」になってしまいました。しかし予約の要らない車中泊なら、撮影日を簡単にずらすことができます。また取材前日の夜に出発すれば、目的地に到着できないまでも、途中のサービスエリアか道の駅まで走って休むことで、翌日は朝から効率良く動くことができるのです。今日はそれを「単なるハウツー論」ではなく、「実際のクルマ旅の実況中継」のようなかたちでまとめてみようと思います。

アウトドアの車中泊で大事なのは「どう快適に眠るか」よりも「どうそれを生かすか」

わたしは最初の記事で、「自由奔放アウトドア」という記事を書いていますが、マイカーをお持ちで、登山や釣り、あるいは写真などを楽しむために、足繁くフィールドに足を運んでいる人なら、既に一度や二度は「車中泊」の経験があると思います。そういう人なら、多少シートに凸凹があっても、信頼できるキャンプ用品メーカーのマットと4シーズンシュラフがあれば、冬でも車内で眠ることに「さしたる支障」がないことはよくご存知でしょう。「車中泊」を「キャンプ」と思えば、テント泊よりむしろ快適。しかも宿泊地の選択肢は広範囲で多彩です。その機動力を活かし、翌日の時間を最大限に有効活用できるところを車中泊地に選ぶことが大切です。

厳冬期の車中泊の留意点は、大きく2つ

あえて冬対策をアドバイスするとしたら、まずは冷気が浸透してくる窓ガラスを「内張り」することです。それは防寒だけでなく、結露でシュラフが濡れるのを予防し、車内のプライバシーを保つことにも役立ちます。「内張り」はウレタンの銀マットなどでDIYすることもできますし、ハイエースのように車中泊によく使われているクルマには既成品も販売されています。

加えて、エアコンをつけたまま車中泊するのは、その施設にいる人と周辺に住む人に迷惑なだけでなく、積雪時にはマフラーが雪で埋もれて排気ガスが逆流し、一酸化炭素中毒に陥る危険性のある行為なので控えましょう。

直前の週間天気予報を見て、計画の修正を決断

さあ、ここからは「中継レポート」です。
まず、わたしが住む大阪から上高地に向かうルートは大きく分けて3つありますが、今回は家内が仕事から帰る午後7時前の出発になるため、凍結の恐れがある山岳ルートを避け、少し大周りの日本海沿いを走る北陸自動車道を選択しました。

出発前に天気予報を確認した結果、晴れ間が期待できるのは翌日と次の日までで、以降は天気が崩れるとのこと。本来は能登半島と奥飛騨温泉郷で1泊ずつして、週末に上高地を歩く予定でしたが、それでは天然色の上高地が色のない墨絵の世界になってしまいます。そこで晴天の上高地に行けるようコースを修正することに。

具体的には、初日の「晴れ」を最大限に生かすため、能登半島ではなく富山県の氷見(ひみ)を目指し、この時期には滅多にお目にかかれない「日本海越しの立山連峰」を拝んでから、上高地行きのバスが発着する平湯温泉を目指す作戦です。
朝日が登る午前7時前に氷見海岸に到着するため、この日は200キロ近く走って、福井県の南条サービスエリアで車中泊することになりました。

奇跡のショット。富山湾のケアラシに煙る朝日と剱岳

作戦は功を奏し、ケアラシの向こうに昇る幻想的な日本海の朝日に遭遇することができました。島の右上にそびえる山は、映画「点の記」の舞台となった剱岳。アルペンルートの室堂(むろどう)からでも見えない山が、ここからははっきりと分かります。

さらに日が高くなると、今度は雪を抱いた立山連峰が、まるで屏風(びょうぶ)のようにその姿をくっきりと現しました。これが富山の冬の風物詩と呼べる光景です。

そこで、この景色が見えてデイキャンプができる場所を探しあて、昼食を食べることにしました。

主役は午前中に海鮮市場で仕入れておいた「能登ガキ」です。ちなみに調理に使用したのはカセットガスコンロとプライパン、そしてフタだけ。シェル付きの牡蠣は蒸してやれば、バチンと爆ぜることなく簡単にフタが開き、調味料無しでそのまま食べられます。

また残りの牡蠣は、さきほど使ったフライパンでアヒージョにして、バケットと一緒にいただきました。今は「アヒージョの素」なる便利なものが、どこのスーパーでも100円ほどで手に入ります。これならクルマの脇でも簡単に作れますよね。

上高地行きの路線バスが停まる、「平湯バスターミナル」で車中泊

氷見からは、富山市街に出て国道41号で奥飛騨温泉に向かいます。今宵の車中泊地は、約100キロ・クルマで2時間ほどのところにある平湯温泉のバスターミナルです。そこから上高地公園線の入口「中の湯」を通る、松本行きの路線バスが出ていますので、翌朝はクルマを動かすこともなく、歩いてバス停に行くだけ。始発に乗り遅れる心配もありません。ただし、ここで車中泊が許されるのは上高地が閉山している冬の間だけです。

ちなみにバスターミナルの隣は、500円で日帰り利用できる温泉施設の「ひらゆの森」。中では食事も可能です。

「遠征」と「旅」の違い

少し余談になりますが、百名山の完全制覇を目指している人は、北海道に行くのも九州に行くのも目的は「登山」ですから、アスリートのように「遠征」という言い方がピッタリです。しかも飛行機や列車を利用すれば、そのことに違和感を覚える暇もないでしょう。しかしクルマ旅の場合は、嫌でも標識が目に入りますので、そこにある観光地や景勝に気がつきます。

実際にやってみると、旅というのは「風土」に強く根ざしたもので、目的地へ駒を進める間に、その土地が育んできた歴史文化を慈しみながら、興味を抱けば観光し、お腹が減ればソウルフードを食べ、陽が傾けば1日の疲れを温泉で癒やして、明日の英気を養うことの繰り返しです。

例えば、平湯バスターミナルからクルマでわずか5分ほどのところにある平湯大滝は、この時期になると結氷して「氷瀑」になります。実はさきほどの朴葉味噌(ほうばみそ)もこの平湯大滝も、見方を変えれば「上高地が、いかに冷え込むところにあるのか」を実感する良い「きっかけ」です。確かに直接現場を歩くことも大切ですが、アウトドアライフには「側面」から間接的に、楽しさ・面白さを増幅していく方法もある…

休日が少ない現役サラリーマンの場合は、なかなかそこまで気が回らないかもしれませんが、「車中泊」はその限られた時間を有効活用できる手立てであることに間違いはありません。

日没前に下山し、白川郷へ

さて。うまくスケジュールを調整して、2日間の晴れ間を納得できるかたちで過ごした後は、天気が崩れる前に山を降りて、白川郷に向かいました。実は日曜日が今シーズン最後のライトアップの日なのですが、かなり気温が上がっているため、予報通り「雨」になると判断し、夜景を捨てて、雨が降る前に明るい時間帯の「雪の白川郷」を見て帰ることにしたのです。

この夜、わたしが白川郷の道の駅に泊まった理由は2つありました。ひとつは凍結しやすい夜間の走行を避けるためですが、もうひとつは早朝の空いている時間帯に集落を見ておきたかったからです。折しも時期は「春節」と重なっており、午前9時前には近隣諸国の観光客が大挙押し寄せてくるはずです。

最後に。
それをどうこう言う前に、そもそもわたしたち日本人は、どこまで自国の世界遺産「白川郷」のことを知っているのでしょうか?
ちなみにこの世界遺産の正式名称は、「白川郷・五箇山の合掌造り集落」です。つまりキーワードは「合掌造り」…

その「合掌造り」は、豪雪地帯の厳しい環境を生き抜くために生みだされた、紛れもない自然生活を営むための舞台です。田舎暮らしに興味がある人は、ぜひ機会があれば、中を見てみたいものですね。

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