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焚き火の名脇役、焚き火の達人と鉄のアーティストが生んだ革新的『火吹き棒』
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「あの頃はよかった」
と現在を嘆き、懐古主義になるのは容易い。
ただし、そこから一歩踏み出し、現在に対してあたらしい提案をする人は、数えるほどしかいない。
TAKIBISMは、名実共に焚き火と生きる「焚火カフェ」主宰の寒川ーさんと、香川県・槙塚鉄工所の槙塚登さんが立ち上げた焚き火ブランド。共に香川県で育ち、あるとき意気投合して以来、異分野のプロである両者の目線であたらしい焚き火道具を開発している。
![左:寒川ーさん 右:槙塚登さん](https://hyakkei.me/wp-content/uploads/2020/09/12f6ef56fa19d7c8b23f49c2f0508720.jpg)
今回、TAKIBISMの道具が作られている槙塚鉄工所にお邪魔して、TAKIBISMの道具、そして根底に流れている哲学をうかがってきた。前編・後編にわたってお送りする。
もくじ
焚き火の達人と鉄のアーティストの出会い
日本中の多くの人の人生観を変えることになった2011年の東日本大震災。神奈川に住む寒川さんは、震災や原発問題を受け地元香川に疎開していたときに、槙塚さんの作品も展示されていたある展示会にたまたま足を運んだ。
![槙塚鉄工所のギャラリー兼カフェスペースには、鉄製の様々な商品・作品が並ぶ](https://hyakkei.me/wp-content/uploads/2020/09/5ce75b6f46691f1db3895fcf5c11ed06.jpg)
![槙塚さんの作品(提供写真)](https://hyakkei.me/wp-content/uploads/2020/09/5f56fb30690f11b93b85a8751417eb23.jpg)
寒川さんが言うには、自身がかかわるアウトドアの世界と彼の作る鉄の世界は、出会った当時はそこまでぴったりハマっていたわけではなかったそう。
火吹き棒「ブレス・トゥ・ファイヤ」の開発
![2本の棒を組み合わせて携帯性抜群の1本の火吹き棒となる「ブレス・トゥ・ファイヤ」](https://hyakkei.me/wp-content/uploads/2020/09/1d5f8bc096e8495254f95f3641522c18.jpg)
ヨセミテの件もあったから、火吹き棒がコンパクトになるといいなと思っていて、このワイヤーフレームの袋に入る火吹き棒があればベストだと。この袋は、他にも愛用しているソロストーブのトライポッドも入るサイズだからそんな思いがあったんですが、槙塚くんにお願いして作ってもらった2分割されたものが、結果的にジャストサイズだったんです。」
![完成した火吹き棒「ブレス・トゥ・ファイヤ」とMONORALの焚き火台の袋](https://hyakkei.me/wp-content/uploads/2020/09/044d5a889c89b537f0db9d5e246b9b53.jpg)
そこから開発のはじまった火吹き棒の初期モデルは、2本が組み立て式の単にまっすぐに伸びた棒だった。寒川さんがそれを使っているうちに錆びついてしまい2本が取りはずしできなくなってしまったという。
二人はそれを解消する方法として、フックとなる火搔きを新たに設けた。
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確かに、トングを扱っているとどこかBBQ感があるし、キャンプをしていて薪用のトングと料理用のトングを間違えてしまうこともあったりと、色々もどかしい部分があるように思える。
素晴らしいアイディアにより、さらに機能的になった火吹き棒。けれどもすぐさま次なる課題にぶつかる。外したときにこのフックをどう収めるのか?となったのだ。
そこで採用されたのが、火吹き棒の下半分を棒から十手のような形にする方法。しかし、それでは火搔きのでっぱりの影響で2本が平行におさまらなかった。
![十手のギミックで当初作った火吹き棒。おさめた状態でも平行になっていないのがわかる](https://hyakkei.me/wp-content/uploads/2020/09/8fc525d18dfee3671096a4a2e1f5bb61.jpg)
原型はできたので、あとはどう精度を上げていくか。錆びつくこと自体が問題なので素材をステンレスにしてみたり、カタつかないよう内径を調整したりと、細かな部分を直していって、組んだときも平行になるようにしました。」
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「自分のためのもの」から製品化へ
この火吹き棒の製品化において、忘れてはいけない出会いがあったという。スウェーデンのイエリバーレという北極圏で事業を行っているレンメルコーヒーの二人だ。
彼らに会いにスウェーデンに行ったとき、限られた30分のあいだに薪も使わず拾った木の枝で火をおこし、コーヒーを淹れて枝は灰にする、そんな寒川さんの姿に彼らは驚愕していたそうだ。
![スウェーデン、イエリバーレの深い森のなかで焚き火を披露した寒川さん](https://hyakkei.me/wp-content/uploads/2020/09/e73233986b53872f4f8d13289c6f7bfa.jpg)
そう彼らに言ってもらえたんです。彼らに気に入ってもらえたことで自信にもなったし、海外でも受け入れられることがわかりました。」
![寒川さんとレンメルコーヒーの二人](https://hyakkei.me/wp-content/uploads/2020/09/536bf965259d36233bbbffee39e481c0.jpg)
それまでは火吹き棒を製品化するプロジェクトではなく、寒川さんが欲しいものを槙塚さんに作ってもらっているだけだった。もちろんマーケットからニーズがあったから作ったわけでもなく、そもそもリサーチをしたわけでもない。
色々悩んで、埼玉の革の作家さんに相談したら、革を締める方法としてDリングを提案してもらったんです。こうすることで、たとえ革が伸びたとしてもしっかりとベルトを締めることができます。」
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先端のジョイントのネジ切りが自分では精度高くできなかったので、熟達した専門の職人が作ってくれたり。木製の柄の部分もそうです、80歳を超える職人にお願いをしました。最初はどれもこれも自分でやっていたんです、でもそうすると1本作るのに何本もロスをすることになって精度も落ちる。きちんと製品化するにはこれじゃダメだって。」
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思わぬ製品同士の融合、そして完成
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これはまさかの展開でした。そのアイディアをもらって、あくまでオプションではありますが、ジョイントパーツとして作ったんです。ブッシュクラフト好きな人たちからも反応がよかったですね。ただ、この取手をつけている間は火が吹けないという(笑)」
![ブレス・トゥ・ファイヤ本体とディッシュジョイント・フォークジョイント](https://hyakkei.me/wp-content/uploads/2020/09/b080e4243c4914eda867ed0cb537af70.jpg)
![右の初代から開発を続け、左が製品化したモデル](https://hyakkei.me/wp-content/uploads/2020/09/25fec6483ccaa7936e29132a36aca223.jpg)
構想から約2年の開発期間を経て、世に送り出されたTAKIBISMの火吹き棒「ブレス・トゥ・ファイヤ」。
取材の時点では200本が売れ、300本目のオーダーが入っているという。
もう、うちわも、トングもいらない。
スマートで機能的なこの道具を携えれば、焚き火がもっと楽しくなるに違いない。
そしてTAKIBISMの話は、焚き火の本丸、焚き火台へと移っていく。
(後編に続く)
槙塚鉄工所 – Breath to fire
12,500円(税抜) ご購入はアンプラージュ インターナショナル WEBショップにて
写真:羽田 裕明
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LIFE WITH NATURE!
コースタイムの1.5倍はかかる写真大好きハイカー。登山はカメラ3台、キャンプはミニマルに、自分らしい自由なアウトドアを楽しんでいます。フィルム登山部メンバー。.HYAKKEIファウンダー&初代編集長。