尾根道もいいけど、渓谷道もかなりいい。新緑の季節なら、渓は目が覚めるような緑が道々に溢れ、雪解けの清水は瀬に淵にと深い青を湛えている。自然の力で穢れを祓う祓戸大神のごとく、滝や早瀬の水の流れ、渓を吹き抜ける風の流れによって、歩くだけで身心を浄化されていく気分になる。

夏を前に、自然の恵みとパワーを浴びに山へ行こうと過去の写真を眺めていたところ、ずいぶん前に西沢渓谷で撮ったものに目がとまった。そうそう、あそこは山登りじゃないんだけど、ほぼ山歩きの道で、景色が最高なんだよね。

とにかく滝が素晴らしくて、惚れ惚れする渓が奥へ奥へと続く。「日本の滝百選」に選出された七ツ釜五段の滝を筆頭に、数々の滝が花崗岩を削って流れ落ちている。コースそのものが自然の造形極まった芸術作品であるかのようだし、巨大な美術館の回廊を歩きながら滝のひとつひとつを“名画”と思って鑑賞するのも楽しい。とにかく心が躍ること間違いなしのトレイルが待っている。

ピークを目指す登山とは異なる渓谷歩きだが、なかなか起伏がある道なので心得ておこう。登山と変わらず山道を上がって下りてを繰り返すから、装備はハイキングに対応する衣類と道具が必須だ。

西沢渓谷入口を起点に周回すると、コース一周およそ3時間~4時間。安全を期して「反時計回りの一方通行」に定められているということも覚えておきたい。すれ違いがなければ、それだけリスクが減るのだ。

この渓には、フォトジェニックなポイントは数知れず。写真が趣味ならカメラは忘れられないし、これをきっかけにカメラをはじめてみる、というのもいいと思う。それくらいみな、息を止めてレンズをアチコチに向けている道なのだ。

写真好きな人は、決まってみな「1歩進んで2歩下がる」といった調子になる。早く歩きたい人(あるいは写真に興味ナシという人)と一緒だと、いろいろと具合が悪いのでご注意を......笑

そうそう、このコースには大嶽山那賀都神社の分祀がある。この小さな社には大山祇神、大雷神、高龗神という山と水を司る三柱の山神が祀られており、広瀬湖の南にはその本宮が鎮座する。ここだけでも主役級の立ち寄りスポットといえるほど、厳かな雰囲気が漂う山深い大きな古社だ。時間にゆとりがあるなら、ぜひそちらにも立ち寄ってみるといいだろう。

<アクセス>
公共交通なら、JR中央本線・山梨市駅からバス。車なら、中央自動車道・勝沼ICより。遊歩道は冬季閉鎖あり。積雪状況によるため、事前確認が必要。
大内 征

低山トラベラーです。山旅は知的な大冒険!

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大内 征

物語の残る低山里山、ただならぬ気配を感じる山岳霊峰を歩き、日本のローカルの面白さを探究。文筆と写真と小話でその魅力を伝えている。NHKラジオ深夜便「旅の達人~低い山を目指せ!」レギュラー、著書に『低山トラベル』『とっておき!低山トラベル』(二見書房)がある。自由大学「東京・日帰り登山ライフ」教授、.HYAKKEIオフィシャルパートナー。

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