初心者のためのブッシュクラフト入門#04|自然と向き合うマインドと、安全な飲み水を確保する方法を学ぼう
こんにちは、フリーライターの古性のちです。初心者のためのブッシュクラフト入門も、ついに最終回を迎えました。
・第2回『体温を守るためのシェルターを作ろう』はコチラ
・第3回『ライターやマッチなしで火をおこす方法を学ぼう』コチラ
最終回では、「自然と向き合うための心構え」と「飲み水を確保する方法」を学んでいきたいと思います。
引き続き教えてくださるのは、サバイバル・インストラクターの川口 拓さん。
1971年生まれ。2001年より WILD AND NATIVE を主催、2013年、一般社団法人危機管理リーダー教育協会を設立。現在も自分で学びながら、ネイティブアメリカンの大地と共に生きる術、哲学、アウェアネス(原始の感覚の使い方)、サバイバル技術などを、一般の方々から現役自衛官、警察官の方々に至るまで、幅広く共有している。
もくじ
「ワイドアングルビジョン」で自然と向き合い、地球を感じてみよう
それではのちさん。いよいよこのブッシュクラフト入門もラストスパートです!
ですね! わたし最初の頃よりも、生存率が確実に上がってる気がします。
今回で、もっともっと上げていきましょうね。
さて、早速実践……と行きたいところなのですが、今回はせっかく都会を離れて森の中に来ているので、感覚を研ぎ澄ます練習をしてみたいと思います。
普段、のちさんは仕事やプライベートで森の中に来ることってありますか?
うーん、あまりないですね。普段は都心でデスクワークだし、休日も大体PCを叩いてます。なので、そういえばこんなにたくさんの緑に囲まれることって、すごい久しぶりかも!
ですよね。のちさんは、普段生活をしていて五感をフルに使っているな、って実感したことはありますか?
フルかーっ。今、ちょっと神経が研ぎ澄まされてるな〜…くらいはあるんですけど、全部をフルに! ってのはあんまりないかもしれないです。
ですよね。現代生活では、コンビニに行けば食べ物は手に入るし、水を飲もうと思えば蛇口をひねれば出る。生きるために必要なものを手に入れることは、そんなに難しいことではありません。
それがゆえ、人間が本来持っている「感じとる力」が鈍くなりがちなんです。
森はそんな日常と、切り離してくれる場所。人間の五感を取り戻せる場所なんです。
改めて言われなければ気づかなかったけれど、都会で生活するようになって、確かに感覚は鈍っているかもしれないなあ。
こういう気づきも、ブッシュクラフトの魅力のひとつなんですね。
その通り! 自然がくれる温度や色、音が、脳の普段とは違う場所を刺激してくれるんです。
ということでのちさん。ひとつ、自然をもっと身近に感じて、五感を研ぎ澄ますエクササイズを行いたいと思います!
はいっ、お願いします!
ワイドアングルビジョンという名前を聞いたことはありますか?
初めて聞きました。でも、イメージはしやすい名前かも。
早速やっていきましょう。まずは、目線を地平線くらいの高さにします。
まっすぐ見る感じですかね?
ですね。そして深呼吸をして、自然の音に耳を傾けてみましょう。
何が聞こえますか?
静か……ではないですね。いろんな音がする。森って、こんなにたくさんの音があったんですね。気づかなかった。
でも、うるさい訳ではなくて心地良い。
そのまま、体も心もリラックスさせていきましょう。
次に、一点に焦点を定めずに物をとらえてみます。
自分の持っている視野全体を広く、1度に見るように意識してみてください。
ん……?めっちゃ難しい!(笑)何かポイントはありますか?
いきなりは難しいですよね(笑)言い方を変えると、あれは木だな〜とか、土だな〜とか、そういった意識をなくしてみてください。
ただ視界に入ってくる奥行きだったり、木が風に揺れる動きだったり、そういったものを眺めるだけ、を意識してみてほしいんです。
ただただ、ぼーっと眺める。普段は意識していなくても、頭の中って自分が思っているよりすごく忙しいんです。
確かに、意識していなくても「猫だなー」とか「コップだなー」とか、頭の中でいろんな会話をしてしまいます。
意識せず、自分の視野全体を1度に見る……。
この見方ができるようになると、あれこれ日常考えている脳みそが休憩できるんです。ブッシュクラフト中、少し時間があいてぼーっとするタイミングや、焚き火にあたっているときなどに試してみてください。
自然との距離が、いつの間にか縮まっている実感がわくかと思います!
わかりました! やってみます!
飲み水を確保する方法を学ぶ
のちさん、ちょっとはリラックスできましたか?
はい! だいぶ。まだ少し頭の中で考えてしまいますが、良い感じです。
よしよし。ではそろそろ本題の、飲み水を得る方法について学んでいきましょう!
お願いします!
水を探す・得る
まず、一番初めにやること。それは、とにかく水を確保することですね。
ですね! それがないと始まらない。
山の場合はたいてい、ある川の水をいただくのが一般的です。でも、そんな都合よく水があるとは限らない。
ということで今回は、飲めなさそうな汚水も、綺麗に浄化して飲めるようにする方法を一緒に学んでいきます。
そこらへんの水たまりから、水を入れてきました!
確かに「なんでもいいよ」と言ったものの、こんなに汚い水を見つけてきたのは初めてです(笑)
では、このめちゃくちゃ汚い水を綺麗にしていきましょう!
煮沸殺菌ができる場合
水を消毒して、飲めるようにするのに一番簡単な方法。それは、煮沸殺菌をすることです。2~3分ほど火にかけてあげれば、あっという間に飲み水のできあがりです。
でも、いつでもそんなことができる入れ物があるとは限りませんよね。あと、わたしの持ってきた水に関しては根本問題、煮沸殺菌しただけじゃ、絶対飲みたくない……(笑)
ですね(笑)のちさんの言う通りで、火にかける鍋がないとこの方法は難しい。
焚き火で石を焼いて中に入れる方法もありますが、熱い石を手で持たなければいけなかったり、まず火をおこさなければいけなかったりと、ちょっとハードルは高めです。なのであくまで、その環境がある場合にこの方法をとってみてください。
煮沸殺菌ができない場合
さて、今回の場合はこちらですね。煮沸殺菌できる環境がなかった場合。
のちさんが持ってきたような、ハイパー汚い水しかなかった場合です。
(笑)
こんな風に、濁った水を飲んだり調理に使わなければいけなかったりする場合は、ろ過器を通して不純物を取り除く必要があります。
ちなみにこれに合わせて煮沸殺菌なんかができれば、かなり安全な水を手に入れることが可能です!
ろ過器は身の回りのもので簡単にできるので、作ってみましょう。
はい!
簡易なろ過器の作り方
必要な材料は、ブッシュクラフトナイフと蓋付きのペットボトル2本。
え、それだけですか?
そう。それだけ!
めっちゃ少ない!
まずは2本のペットボトルの底の部分を、こんな風に切り落とします。
そんなに正確に、「このくらい!」は気にしなくて大丈夫です。ぐるっと切り落としてください。
次に、ペットボトルの蓋に小さな穴をたくさん開けます。これも2つ作ってね。
これは、最終的に綺麗な水が出てくる穴です。ナイフの先端をグリグリ回転させてやると、うまく開きます。
現段階までで、綺麗になった水が出てくる想像が全然できない……。とりあえず5つほど、穴を開けました!
ペットボトルの底を落としたら、ここに水を浄化するための層を作っていきます。今回は、炭・砂・小石の3層のろ過部分を作っていきます。
炭と、砂と、小石…!?
そんなもので、水が綺麗になるんですか?真っ黒そうなイメージ……。
ふふふ、どうかな(笑)
下から、炭→砂→小石の順番で入れていってください!
炭が大きい場合は、こんな風に木を使って少し細かく砕いてあげましょう。
表面積が多ければ多いほど、効果が高まります!
全部詰まるとこんな感じ。今回、水がとにかく汚いので、ペットボトル→炭→ペットボトル→砂→一番上に小石……の、ペットボトルを2回挟む構造にしてみました!
それぞれの層が厚いほど浄化能力は上がるので、炭も砂も、たっぷりめに使ってます。
なるほど(疑いの目)
綺麗な水になる想像、ついてないでしょう?(笑)
ごめんなさい。まったく(笑)
そしたら早速、さっきの汚水をこの中に入れてみましょう!
簡易なろ過器で水を浄化していく
水の浄化には時間がかかるので、どこかに倒れないように固定しておけると良いでしょう。今回は木の棒に固定させてもらいました。
そしたら早速水を入れていきます!
うーん……。汚い。
ですね。本当に汚い(笑)でもこれが、このお手製ろ過器にかかると……
ー 約30分後……
え!?!?水が……
めっちゃ透明な水ができてる!?!?
大成功ー!
こんな風に、実は水のろ過は身近なもので割と簡単にできてしまいます! 自然のものでろ過器を作る方法もありますが、都市災害に遭遇してしまったときなど、ペットボトルのほうが手に入りやすい場合もあるかと思います。
臨機応変に、そのフィールドで手に入るものを活用してもらえたら嬉しいです!また、ろ過器を使用した際に思ったほど水が透明にならない場合は、何度も繰り返す、または、砂が穴から落ちていかないように、葉をちぎって詰めて間を埋めるなどの対処をしてみてください。
全4回のブッシュクラフト入門を終えて
川口さん。わたし今回のこのろ過器が、今までのブッシュクラフト入門で一番衝撃的でした……。人間て、すごい。
一番リアクション大きかったですもんね(笑)
これでわたし、ひと通りの生きるために必要なものを、自分で手に入れる・作る能力が備わったということですね!
ですね! ブッシュクラフト入門、どうでしたか?
うーん。これで遭難しても災害に遭っても大丈夫! とは思わないんです。絶対にパニックになるから……! でも「あのとき、こんなことを習ったな」って、何も知らない状態よりは絶対にできることが増えた!……はず。
今回かなりたくさんのことを詰め込んだので(笑)ぜひもう1度、おさらいしてみてほしいです!
はい。もう1度、生きるために必要な5つのことからおさらいしてみようと思います!
「ブッシュクラフト」とは、人が自然と関わるきっかけをくれるもの
最後に、川口さんはブッシュクラフトと今後どんな風に付き合っていきたいですか?
僕はこれからも、こうしてのちさんのように、ブッシュクラフトに興味を持ってくれた方に「こんな楽しみ方があるよ」と提案していきたいですね。
僕は本来「ブッシュクラフトは、○○である」みたいな定義は、あまりなくて良いな、と思っていて。自然が暖かくすべてを包み込んでくれるのと一緒で、ブッシュクラフトという言葉の定義も、自由な定義があって良いのだと思っています。
自然の中で一晩過ごすのが怖ければ、お茶をして帰ってくるでも良い。自宅でナイフを使ってスプーンを作るでも良い。これらも立派なブッシュクラフトです。
人と自然の架け橋になってくれるもの。それがブッシュクラフトの役割なのでは、と思っています。もっともっと、ブッシュクラフトに興味を持ってくれる人が増えると良いなあと願っています。
わたしも川口さんのおかげで、ブッシュクラフトにも自然にも、より興味を持つことができました! ありがとうございました!
それでは、また!
超アウトドア派のインドアなライター。
1989年横浜生まれ。旅するフリーランス。ふわふわ漂いながら、「旅x仕事」の新しい働き方の提案・実践しています。自然が好きな超インドア派。いつか沖縄のムーンライトマラソンに出るのが夢なので、今年はこっそりランニングをはじめたい。