初心者のためのブッシュクラフト入門 #02 | 体温を守るためのシェルターを作ろう
こんにちは、フリーライターの古性 のちです。またもや作業風景で失礼します。わたしは現在茨城の山奥で、木を削っています。
一体何をしているのかと言いますと。
自然と遊ぶように学ぶサバイバル術「ブッシュクラフト」を学んでいる最中なのです。
前回の第1回では「ブッシュクラフトとは一体何か」「生きるために必要な5つのことはどんなことなのか」を、サバイバル・インストラクターの川口 拓さん指導のもと学びました。 (前回の記事はコチラ)
今回はその中から、もしもの時の必須アイテムでもあり、命をつなぐための「体温」を守ってくれる、シェルター作りにチャレンジしていきたいと思います!
教えてくれるのは引き続きこの人。サバイバル・インストラクターの川口 拓さんです。
川口 拓(かわぐち たく)
1971年生まれ。2001年より WILD AND NATIVE を主催、2013年、一般社団法人危機管理リーダー教育協会を設立。現在も自分で学びながら、ネイティブアメリカンの大地と共に生きる術、哲学、アウェアネス(原始の感覚の使い方)、サバイバル技術などを、一般の方々から現役自衛官、警察官の方々に至るまで、幅広く共有している。
もくじ
命をつなぐ!体温を確保するためのシェルターを作ろう
川口さん! お久しぶりです。今日も引き続き、よろしくお願いします。
よろしくお願いします!
早速ですがのちさん。軽く前回のおさらいをしちゃいましょう。
ブッシュクラフトとはなんだか覚えてますか?
自然と遊びながら学ぶサバイバル術!
お。正解です。
絶対聞かれると思って、ばっちりおさらいしてきましたよ!
素晴らしい!おっしゃった通りで、ブッシュクラフトは、自然から得られるものを最大に利用する技術です。
文明の力に極力頼らない技術” とか、”自然の環境を活かしたアウトドア” とか、いろいろ呼ばれ方があるけれど、わかりやすく定義してあげると、自然と遊びながら身につけられるサバイバル術ですね。
いざという時に自然に力を借りるための技術ですね。
そしたら、前回教えた生きるために不可欠な5つの要素は覚えていますか?
く・・・・空気・・・。
(笑)うんうん、必要ですね。でもあとお腹もすくし、呼吸もするし、暖も取りたいとなると・・・
そうだ。食。火。水。空気でしょ、あとは・・・
愛。
愛。愛・・・? 人のぬくもり?
このくだりも前回もありましたね(笑)正解は、ぬくもりを保つための宿「シェルター」です!
シェルターだ!
と、いうことで今回は一緒にシェルターの作り方を学んでいきたいと思います。
STEP1: 道具を用意する
まずは、必要な道具を準備しちゃいましょう。
前回もお話しましたが、主に必要なのはこのたった5つです。
一番左が、冷たい地面と自分の間に絶縁を作るためのマット。これを敷くことで、冷たい地面に触れずに済みます。その横にある黒いのが寝袋。外気に体温が触れないようにする役割を持っています。その横の緑のものがタープと、そのタープを張るためのロープですね。
タープがあれば風、雨がよけられるし、マットで冷たい地面と自分の間に絶縁ができます。そうすると冷たい地面に触れずに済むので、体力が温存できるんです。
タープ1枚でできちゃうんですね。便利だ。
うんうん。タープだけでも困らないのですが、冷たい外気に体温が触れないように、こういった寝袋があるとさらに良いですね。
シェルターと聞くとかなり壮大なものを想像しますが、ずいぶんコンパクトですよね。
そう。「風に当たらない、雨に濡れない」がとにかく大事なので、ここがクリアできていれば、大げさなものでなくても問題ないんです。
生き残るために、人間の中で一番必要になってくるのが体温の確保と保持です。体温を奪われてしまうと、状況にもよりますが、夏でも3時間ほどで人間は死んじゃうんですよ。
たった3時間・・・! もし何か災害にあってしまったり、遭難してしまったら、この短い時間の中でシェルターを作る必要があるんですね。
そう。なので簡単に作るのがベストです。
STEP2:場所を選ぼう
最初に場所を選びます。
まずは寒さをしのぎたいので、乾いた地面を探しましょう。
どこでも良いわけではないんですね。
この辺りは陽の光も入りますし、ポカポカする!
そうそう。なるべく日当たりの良さも大事です。
あとは、落下物にも注意しなければいけません。枝葉が多い木のそばにシェルターを作ろうとすると、こういうのが頭に落ちてくることがあるんです。
当たったらめっちゃ痛いやつですね・・・。
そんなに太いものでなくても、落差が威力を生み、打ち所が悪いと死にます。
凶器。
ちなみに、今日作るシェルターの形なんですけど、どんなのが良いですかね?
四角か丸か三角か・・・。
三角いけますか?
そしたら最初なので、一番簡単なやり方にしましょうか。三角形のシェルターを作りましょう!
STEP3: 全体にペグを打っていく
場所と作る形が決まったら、まずは普通のペグを打ってしまいましょう。
ペグは向こうに引っ張られるので、角度は30度くらい倒すかな? 地面に対しては60度くらい深く差し込んでしまってください。この時点でペグとペグの間はピーンと張る感じですね。浮かないように。
(カンカンカン)
のちさん、上手いじゃないですか?
おっ褒められた! ペグ、思ったよりもグイグイ進むんで、女子でも意外にいけちゃいますね。
STEP4: 柱とタープを結ぶ
1. タープとロープを固定する
ペグが打てたら、柱となる棒を立てていきます。
ここからはロープワークになります。しっかり見ててくださいね。
不器用なんで自信がない・・・頑張ります!
今回はスリップノットという方法で結んでいきます。
スリップノットは、強くテンションをかけても解けにくい結び方です。ですが、解きたいときにはすぐにほどけて調整が簡単にできるロープワークなので、覚えておけると便利ですね。
まずはタープの穴に、ロープを通します。
次に、木の枝にくるりと巻いてあげてください。
枝を巻いた紐は、15センチくらい長さを取りましょうか。
何かもうすでに違わないですか? わたしの命つなげます? 大丈夫です?
大丈夫です(笑)次に、向こう側を通してクロスさせますね。
で、今度手前側を通してクロスさせます。
ふむふむ。
お、きましたね。そしたら、もう簡単です。手前側に向こう側から入れてあげてください。十字を作るイメージです。
ふむふむ・・・。
そして解きやすくするために、全部通さず、最後にリボン結びっぽく仕上げます。
腹だけ通して頭を残してあげる。これだといくらテンションがかかっても、解くとき簡単なんです。できましたか?
そしてキュッと結ぶと・・・完成です!
すごい。不器用にもできた。
・・・でも残念ながら、てんで覚えられる気がしません・・・もう1度やれと言われたら、唸り声出ちゃいそうですわたし。
(笑)1回で覚えるのは難しいと思うので、何度かチャレンジしてみると良いかもしれません。ネット上に上がっている動画なんかも、参考になります。
この結び方を覚えておくと、何にでも応用が利くのでオススメです!
2.ロープと柱を固定する
タープとロープが固定できたら、次に柱側とロープを固定していきます。
完成系から見せてしまうと、こんな感じになります。
こちら側は先ほどのスリップノットとは別で、巻き結びという結び方をしていきます。
これもテンションがかかればかかるほどギュッと締まっていく結び方なんですが、特徴としては、結び目がないロープワークなんです。
大事な柱を結ぶのに、結び目がなくて大丈夫なんですか・・・?
結び目がないことで、逆にずるずると落ちてくる心配がないんです! とても合理的な結び方なんですよ。
それでは実際に作っていきましょう!
巻き結びにはいろんな種類があるんですけど、まずはこういう形を作ります。よく昔の西洋映画を観てると、下に取っ手がある眼鏡があるじゃないですか。そんなイメージで作ってください。
しかもひねくれて重ねてみてください。
ひねくれた西洋眼鏡・・・それ、余計に混乱する例えな可能性ありますね。
こうですか?
はい、できてますね。
そしたら、眼鏡のレンズ部分を重ねます。やっぱり同じく、ひねくれて合わせるんですよね。
ひねくれて合わせる・・・。こんな感じですか?
そうそう。下になっていたものを上に、上になっていたものを下に持っていきます。そして輪っか部分に手を入れて引っ張ると・・・
はい。できました。
今手を入れている部分に、柱がくるイメージですね!
おおお!めっちゃ簡単!
3.固定用のペグを作り、柱を固定する
そしたら1度、柱を立ててみましょう。実際に立ててみて、何か気になることはありますか?
うーん。これ、もう一方からも引っ張らないと、自立してくれませんね・・・。
ですね。正解です。反対側からも引っ張る必要がありますね。
ということで、引っ張ったロープの延長線上、柱から離れた位置に、3本目の固定ペグを打つことにしましょう!
了解です!
普通のペグを使うのももちろんOKですが、足りない場合は木での代用も可能です。
のちさん、少し太めの枝を探してきて、適当な大きさに折ってもらえますか? ポイントとしては、足を使うと折れやすいです!
こんな感じですか?
そうそう! もし折れにくい場合は、折りたい位置をあらかじめナイフで削っておくと、ポキッと気持ち良く折れますよ。
綺麗に折れたら、ブッシュクラフトナイフをこう構えて、上を丸く削っていきます。こうしておくと、グッと差し込んだときに怪我をしません。
手前から外側に引くようなイメージですね。
ある程度木の先が丸くなったら、今度は先から10cmほどの位置に、ロープが引っかかるくぼみを作ります。
このくらいのくぼみができればOKです。
そしたら、今度は反対側(地面に刺さる方)を先から10cmくらい削って、尖らせていきます。
くるくると回していくと、こんな感じで尖ってきます。
(ショリショリショリ・・・)
・・・これ、気持ちが無になりますね。いつまででもやっちゃう。
自然の中での黙々とした作業って気持ち良いですね。自作のペグは、使ったあとに自然に帰すこともできるので、手持ちがないときや、荷物を減らしたいときに最適です。
ある程度尖ったら、タープが三角にピンと張る位置にグッと差し込みましょう!
上からコンコン叩いて、奥までグッと刺したら完成! あとちょっと・・・!
4.ペグと柱の間に調整用のロープワークを入れる
いよいよ仕上げになってきました。・・・がここでもう1個ロープワークが増えます!
うおお! 3種類目ですね・・・。
今打ったペグと柱の間に今度は、自在にテンションを調整する結び方「自在結び」を入れていきます。
スリップノットに巻き結びに自在結びに・・・ひー! すでに最初のスリップノットが抜けてる気がする・・・!
大丈夫! とりあえずまずは、実践あるのみです!
頑張ります・・・!
まず、ペグのくぼみに通したロープを両手でグッと引っ張ります。このとき、立てている柱はまっすぐになるように注意してください。
次に手前に持っている、先にない状態のロープを、もう一方のロープの後ろに回します。
そして上から通して、下に戻る感じですね。
これ簡単なようでめっちゃ難しい! (笑)
下から通す→上から通す→下に戻る、で覚えてみてください!
そしてキュッとテンションをかけて、結び目を作ったら・・・
10cmほど離れたところで、先ほどと同じ結び目をもうひとつ作ります。
同じ感じでもうひとつできました!
良い感じですね。
そしたら、その少し上にもうひとつ結びを作ります。下から通して・・・
上から穴に通して・・・
キュッと引っ張ると、2個目に作った結び目の上に、こんな感じでもうひとつ結び目が出来上がります!
(真剣)
のちさん真剣すぎて、何も喋らなくなっちゃいましたね。
すみません(笑)これ、すっごい集中しますね。一生分の集中力を使ったんじゃないかってくらい、ロープに釘付けでした。
(笑)そして最後は3つとも整えます。
ちなみにこうやって整えることを、ロープワーク用語で「ドレスアップ」っていうらしいですよ。
ドレスアップ。ちょっと可愛いですね。
はい! 自立しました! しかも今のロープワークを入れたおかげで、テンションも自由自在です。
達成感。めっちゃ嬉しいです!
STEP5:最後にペグを打ち込み完成!
のちさん、完成目前です! 最後にタープをピンと張って、1本空いているコーナーにペグを打ちます。ハンマーでガンガン打っちゃってください!
ガンガンいきます!
はい、ばっちりです! あとは中のシートをちゃんと広げて・・・。
綺麗に広げて・・・
完成です!
できたーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!
三角形のシェルター、ばっちりですね!
しかもこの空間、驚くほどにめっちゃあったかい・・・。
マットを引くと、さらに暖かさが倍増しますよね。特別冷えるときは、ぜひ組み合わせてみてください。
これなら遭難しても生き残れそうな気がしてきました!
(笑)慣れるまでロープワークが少し大変かと思いますが、ぜひ何度か復習して、ひとりで張れるように頑張ってみてください!
まとめ
初めてのシェルター作。非力で不器用なわたしでも設置ができたので、力のない女子や不器用な方でも、気軽にチャレンジしやすいのではないでしょうか。
ぜひキャンプシーンなどでも、試してみてください。
それでは!
超アウトドア派のインドアなライター。
1989年横浜生まれ。旅するフリーランス。ふわふわ漂いながら、「旅x仕事」の新しい働き方の提案・実践しています。自然が好きな超インドア派。いつか沖縄のムーンライトマラソンに出るのが夢なので、今年はこっそりランニングをはじめたい。