田舎過ぎず、山登りに自由がある暮らし。登山好き瀧根ご夫婦
自然に囲まれた飛騨エリアで暮らす人々は、どんなライフスタイルを送っているのか。アウトドアファンならちょっと覗いてみたい暮らしを追います。
今回取材したのは、高山市に住む瀧根隆司さんと真由美さん。もともと岐阜出身のお二人は夫婦で登山を毎週のように楽しみ、百名山も制覇済み。新婚旅行も車中泊しながら北海道の百名山を5座めぐるほどの大の登山好き夫婦なんです。お話を聞くと、アウトドア夫婦の暮らしにおいて、ひとつの理想のかたちを見えてきました。
もくじ
歩くペースが一緒だった
男女での登山は珍しいものではありません。夫婦、カップル、仲良しグループ、山を登っていれば誰もが見かける光景です。瀧根さんご夫婦ももともとは共通のアウトドア好きグループで一緒だったそうですが、次第にお二人で登山を楽しむようになったといいます。
「歩くペースとか、この山行きたいとかって人によってけっこう違うじゃないですか。そのあたりで二人の相性が良かったんですよね」
山に入ると色々な景色や発見があるため、人によって足を止める場所が違ったり、山頂へ急ぎたい人とゆっくりその空間を味わいたい人がいたりと、志向は人それぞれ。そのあたりが偶然にも一致したというのは、二人で山を楽しむにはもってこいの相性のように思います。
山が近い、は登山に自由を与えてくれる
お二人に毎週の登山のお話を聞くと、飛騨エリアならではの魅力に気付かされます。全国の山好きが憧れる名山へのアクセスが良いことから、登る山や登るかどうかは当日決めることも多いそう。
「新穂の前泊問題ってけっこうたくさんの人が抱えていると思うんですけど、ここに住んでいれば仕事終わりに行けるし、駐車場がいっぱいでも一時間くらいしか移動していないから諦めがつくんですよね。混んでいれば他の山にしようってなるだけなので、重々しく考える必要がないんです。天気が悪ければ無理もしません。また来週登れば良いだけなので。朝起きて、天気予報が良い山に行くみたいな選択ができるのはいいですよね」
山が近いことによるメリットは想像がつきやすいですが、日本を代表する山においてもそうなんだと語られると、その融通の利きやすさのスケールが違うなと思わされます。
「冬はバックカントリーやスキーをしますけど、近いので朝一のパウダーを狙えるんですよね。職場でも午前休とって一滑りしてきてから出社する人も何人かいますよ。山で出会った方に高山に住んでいるって話をすると羨ましがられたりもします、槍ヶ岳も日帰りで登れちゃいますしね」
まさにエクストリーム出社。職場の環境もその過ごし方をして問題ないというのも羨ましいかぎり。アクセスは気にせず、自分たちのタイミングで、自分たちが登りたい時に楽しめるという生活は確かに憧れの的かもしれません。
登らない日も山がすぐそばに
高山という街の魅力のひとつに「山岳展望」があります。登るのではなく眺める山。住民は登らずとも山に癒され、季節を感じることができます。真由美さんの職場からは美しい北アルプスを眺めることができるんだそうです。
「事務作業で目が疲れたときなどは、リフレッシュのために山を眺めることも多いですよ。特に冬と春は空気が澄んでいる中で冠雪した山々を眺めることができるのでお気に入りです」
自然の恵みを受けて、食も美味しい
登山好きにとってはこれ以上ない環境であることは分かるのですが、暮らす上では不自由なことがあるのでは?という疑念もよぎります。しかし、高山は自然に囲まれているからといって過度な閉塞感がなく、「程よい田舎」なんだそうです。富山湾が近いので魚介が新鮮で、野菜やお酒もおいしい。山に囲まれた地帯なので、正直魚介はどうなんだろうと思っていましたが、なるほど、北陸がすぐ近くなのでそこから送られてくる魚介は一級品なんですね。
最後に、お二人に登山の魅力をうかがいました。
隆司さん「何度登っても、同じ景色はないということでしょうか。あとはビールが美味しい」
真由美さん「自分の足で歩いたっていう達成感と、自分が小さいなって思えるのが心地いいんです。素の自分に戻れるっていうか」
なんとも羨ましいライフスタイルを語ってくれた瀧根さんご夫婦。買い物や古い街並みめぐりといった観光地としてのイメージが強かった高山ですが、登山好きが住むにはもってこいの街なんですね。
(写真:藤原 慶)
LIFE WITH NATURE!
コースタイムの1.5倍はかかる写真大好きハイカー。登山はカメラ3台、キャンプはミニマルに、自分らしい自由なアウトドアを楽しんでいます。フィルム登山部メンバー。.HYAKKEIファウンダー&初代編集長。