今年もまた雪の時間が訪れた。
標高の高い山はこれから半年ほどのあいだ、
雪とともにある。

山はいつもよりも静かに緩やかに呼吸をしている。
そのペースに合わせるように、自分の歩みもいつもよりさらにゆっくりになる。
吐く息は白く、湿気を含んだその息がネックウォーマを濡らす。


木々に積もる雪が風に吹かれて、
太陽の光を受け、きらきらと光を放ちながら舞い落ちた。
森の中にはキツネやウサギ、テンなどの動物たちが
雪の上に無数の足跡をつけている。
苔や石楠花が寒さに身を縮めて、じっとしている。

そんな山の様子を写真にひとつずつおさめる。
そうしていると、どこにいるのか、
自分が自分なのか、わからなくなるほど
集中している感覚が訪れた。

まわりの世界と自分の区別がなくなり、
山にあるひとつのものとして存在している自分を感じる時間。
この瞬間がどうしようもなく好きだ。

その感覚のなかで雪の森にしばらく立っていると、
鼻と指先の冷たさが急に今ここに自分がいることを思い出させて、
まわりの世界と自分は離れていってしまった。

野川かさね

写真家

Popular Posts

最近人気の記事ランキング

もっと見る

Monthly Pick Up

.HYAKKEI編集部おすすめの記事

New Posts

最新の記事

もっと見る

特集

特集・連載コンテンツ

もっと見る

トピック一覧

トピックから記事をさがす

もっと見る
この記事を書いた人

野川かさね

山と自然をテーマに作品を発表。著書に「山と写真」、共著に「山と山小屋」「山小屋の灯」「山・音・色」など。ホシガラス山岳会としても出版、イベントに携わる。

関連トピック

トピックから記事を探す

▲TOPへ
window.NREUM||(NREUM={});NREUM.info={"beacon":"bam.nr-data.net","licenseKey":"f78476bdcc","applicationID":"10696506","transactionName":"YlwHbEtQXEVRBRZfWlsWJFtNWF1YHxYDUVBG","queueTime":0,"applicationTime":375,"atts":"ThsEGgNKT0s=","errorBeacon":"bam.nr-data.net","agent":""}