21 ホシガラス 〜野川かさね エッセイ〜
ガァーガァーとしゃがれた鳴き声が森に大きく響き、
黒い鳥が木から木へと飛びうつる。
羽ばたくというよりも、降下してくるように飛ぶ様子は
すこし不器用な動きにも見えた。
葉がすっかり落ちた木々のてっぺんを陣取り、
鳴き声をあげるとまわりを見わたし、また次の木へと移動した。
何回かそんなことを繰り返して、その姿は
もう私たちのいる場所からは見えなくなってしまった。
ガァーガァーという鳴き声だけが
私たちを森の奥へと導いているかのように
響きつづけている。
写真家。
山と自然をテーマに作品を発表。著書に「山と写真」、共著に「山と山小屋」「山小屋の灯」「山・音・色」など。ホシガラス山岳会としても出版、イベントに携わる。