苔の森を歩いていると
ところどころに雪が残っている。
すこしまえ、東京でもぐっと気温が下がった日があった。
このあたりの山では雪が降ったのかもしれない。

雪は溶けかかり、分断され、欠片のように
苔の上にちらばっていた。
欠片のふちは氷のように透きとおっていて
まわりの苔の緑を自分のなかにとり込んで、
ぼんやりと淡い緑色にひかっている。

今日は晴れの予報。
陽に照らされれば、
欠片はあとかたもなく消えてしまうだろう。

自分自身が森のなかにすいこまれていくことも知らずに、
雪の欠片はつかのまの輝きを見せる。

野川かさね

写真家

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野川かさね

山と自然をテーマに作品を発表。著書に「山と写真」、共著に「山と山小屋」「山小屋の灯」「山・音・色」など。ホシガラス山岳会としても出版、イベントに携わる。

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