18 リンドウの花 〜野川かさね エッセイ〜
歩いていると道のわきに
2種類の異なったリンドウの花があることに気づく。
立ち止まり、図鑑をしらべてみると、
ミヤマリンドウとエゾリンドウだった。
一方は茎にてっぺんにまとまって、
もう一方は茎に沿って両側に連なりながら
花を咲かせる。
リンドウの花たちが咲きはじめると
山は秋の盛りで、
そして、同時に山は冬への準備がはじまった合図。
このことを教えてくれたのは
山小屋のご主人だった。
「きれいな紫色の花が咲いていますね」という
私の言葉を聞くと、
「もうすぐ冬だね」と言った。
私がただきれいだと眺めていた花が
見る人によっては全く違う見方をしていることに
驚き、感動したのを覚えている。
そして、目のまえの景色をひとつの点でしか
見えていない自分に気づき、もっと山のことを知りたくなった。
写真家。
山と自然をテーマに作品を発表。著書に「山と写真」、共著に「山と山小屋」「山小屋の灯」「山・音・色」など。ホシガラス山岳会としても出版、イベントに携わる。