JR中央線の終着駅、高尾の地ではじまったクラフトビール醸造所「高尾ビール」。その仕掛け人である池田周平さんは、もともとは都内で働くエンジニアでした。そんな池田さんがなぜ高尾山でビールをつくりはじめたのか。

率直な疑問と美味しいビールに惹かれて、高尾山のふもと「高尾ビール おんがたブルワリー&ボトルショップ」に足を運んでみました。

インドア派だった池田さんが山に惹かれた理由

高校時代はバンド活動に明け暮れ、その後大学在学中の学内雑誌の編集作業がきっかけでエンジニアとしてのキャリアをスタートします。


「学生時代はバンド活動、社会人ではエンジニアの仕事などインドアな生活が中心でした。住まいは神楽坂で、職場は都内だったので、アウトドアの誘いは極力避けてましたね笑」

元々はインドアな性格だった池田さんがアウトドアに目覚めたのは、30歳の時。アウトドア好きの奥さんに連れ出された箱根でのハイキングでした。当日、初心者用のハイキングコースを歩いていたら、天候悪化により濃霧に包まれることに。


「真っ白な霧に包まれて周りが見えないことにちょっと怖さを感じたというか。自分ではどうにもできないものに遭遇したというか。そこから山というものにすごく惹かれるようになりました。」

山を求めて移住を決意

それからは毎週のように山に通うようになり、山が生活の中心となったそうです。


「仕事終わりに準備した夕ご飯を持って高尾山に向かい、山頂で夕ご飯食べたりもしてました笑」

そんな生活をして行く中で、徐々に山の近くに住みたいという思いが芽生えてきたそうです。


「山の近くに住んだらもっといろんな山に登れるじゃないですか。都心からの移動時間を節約して、その分遠くの山々まで登ってみたいなと思って。都内まで通勤できる範囲で山に近いエリアを中心に物件を探して周りました」

山を求めて移住を決意|「「下山後に美味しいビールが飲みたかった」元エンジニアが高尾で立ち上げたビール醸造所『高尾ビール』」の4枚目の画像

高尾との出会い

都心からのアクセスも良く自然に近い場所を検討していく中で、高尾の魅力に惹かれるようになります。


「正直にいうと、当初高尾はあまり検討していませんでした。どちらかというと観光地っぽい気がしていたので。ただ、物件探しで通ううちにすごく魅力的な場所だと気付きました。都心へのアクセスも抜群だし、周辺の山々は色々なルートで登ることもできますし」


その後、良い物件との出会いもあり、2013年に高尾へ移住。平日は通勤、週末は山登りといった生活がスタートしました。


「遠くまで行けるようになったので週末に登れる山も増えましたね。都心への通勤も基本的に座っていけるのでストレスもなく、充実した日々を過ごしていました」

高尾との出会い|「「下山後に美味しいビールが飲みたかった」元エンジニアが高尾で立ち上げたビール醸造所『高尾ビール』」の2枚目の画像

住み始めてみて感じた街の課題

一方住むことで街の課題も見えてきました。駅前には登山後に立ち寄れるお店が少なく、登山客や地元の人が集まる場所もあまりないそうです。


「高尾の駅前ってお店が少なく、しかも早く閉まってしまうので寂しいんですよね。山帰りにふらっと立ち寄れて一杯美味しいビールを飲めるところがなくて。登山客の人も電車で来て登って帰るだけという感じが多いですね」

住み始めてみて感じた街の課題|「「下山後に美味しいビールが飲みたかった」元エンジニアが高尾で立ち上げたビール醸造所『高尾ビール』」の2枚目の画像

そんなモヤモヤを抱えていた時に浮かんだのは、以前訪れたポートランドのブリューパブ(Brewpub)の光景でした。


「ポートランドもそうですが、ポートランド近郊の山に近い街”フッドリバー”や”ベンド”にはブリューパブといって、ビール醸造所の併設のパブでビールが飲めるんですよ。そこで登山者と地元の方がビールを軸にコミュニケーションを取っている。マウンテンバイクで泥だらけのライダーに、地元のおじさんが『今日はどこ行ったんだ?』なんて話しかけていたりして。そんな場所が高尾にあれば嬉しいなと思ってました」

高尾への想いひとつで立ち上げた、おんがたブルワリー

誰もやらないなら自分でやろう、と池田さんは動き出します。まずは会社員として勤務する傍ら、ポートランド州立大学にあるクラフトブリューイング科のオンラインプログラムに参加されたそうです。その後はビール醸造家を志し、醸造設備をアメリカから輸入したり、アメリカで醸造技術を学びました。その後勤めていた会社を退職し、2017年10月に「高尾ビール おんがたブルワリー」をオープンしました。


 「高尾という街が好きで、もっと楽しく暮らすためにクラフトビールを作ろう、というすごく個人的な想いがきっかけなんですよね。一からビール造りを始めるのは大変でしたが、その想いがあるから今でも続けられているのだと思います」

高尾への想いひとつで立ち上げた、おんがたブルワリー|「「下山後に美味しいビールが飲みたかった」元エンジニアが高尾で立ち上げたビール醸造所『高尾ビール』」の2枚目の画像

登山客と地元民をつなぐコミュニティの場へ

おんがたブルワリーでは、金土限定で高尾ビールを味わうことができます。オープンからわずか数ヶ月ではありますが、すでに地元のおじさんや登山客が交流する場になりつつあるといいます。


「ビールってすごくハッピーな飲み物なんですよね。他のお酒と比べて、ビールを飲んでいる時ってみんな幸せそうで。このブルワリーもビールを媒介にして、地元と登山客が繋がる場所になればいいなと。この前地元の人と話していたのですが、登山ルートにある人の形に見える木にひたすら詳しい人がいて笑。そういう地元の人と高尾を訪れた登山客が交流できるといいですね」

これからの想い

将来的には高尾の駅前にビールスタンドを作りたい、と語る池田さん。今のブルワリーは駅からバスで10分ほど離れた場所で交通の便もよくないこともあり、高尾の駅前に登山客と地元の客が入り混じる空間をつくることが夢なのだそうです。


「自分が駅前にビールスタンドを作って成功事例を作れば、小さなお店をやりたい人が高尾に集まるきっかけになるのではないかなと思います。サンドイッチ屋さんや珈琲屋さんなどが徐々に増えていくと嬉しいですね」

これからの想い|「「下山後に美味しいビールが飲みたかった」元エンジニアが高尾で立ち上げたビール醸造所『高尾ビール』」の2枚目の画像

「ゆくゆくはスタッフの子にビール造りやビールスタンドを任せて、夕方くらいに一杯飲みに来る自由気ままなオーナーになりたいですね笑」

そう言って笑う池田さん。高尾ビールのウェブサイトには、「高尾に暮らす私たちが、山でもふもとでも楽しく過ごせたら。そんな(ごくごく私的な)想いをもとにビールをつくりはじめました。」とあります。小さな思いがきっかけとして生まれたブルワリーは、今、高尾の新しい街づくりの旗振り役となっています。

これからの想い|「「下山後に美味しいビールが飲みたかった」元エンジニアが高尾で立ち上げたビール醸造所『高尾ビール』」の4枚目の画像
おんがたブルワリー&ボトルショップ
出来たての生ビールの試飲(有料)やボトルビールを購入可

【営業時間】
金曜日・土曜日の正午〜日没まで。
醸造・イベント等のための不定休があります。
最新の営業状況はTwitterにてお知らせします。
https://twitter.com/takaobeerco

【アクセス】
〒192-0154 東京都八王子市下恩方町 1557

タクシー:高尾駅北口から10分。
バス:高尾駅(JR・京王線)北口から 西東京バスにて10分。川原宿大橋バス停下車5分。

【バス系統】
# 川原宿大橋バス停 下車5分
– 霊園11<霊園正門経由>[西東京] 宝生寺団地行
– 霊園21<霊園正門経由>[西東京] 恩方ターミナル行
– 霊園22<霊園正門経由>[西東京] 美山町行

#上川原宿バス停 下車1分
– 霊園32<霊園正門経由>[西東京] 大久保・陣馬高原下行
外山 雄也

バンライフ時々東京で過ごしてます。

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この記事を書いた人

外山 雄也

大手メーカー、ITベンチャーを経て、2016年にSNSプランナーとして独立。キャンパーバンと東京での二拠点生活。いつかはキャンプ場経営を夢見て、アウトドア界隈の面白い人に取材しています。

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