• キャンプや登山に関わる人々へのインタビュー記事一覧です。自然に魅せられたアウトドアフリーカー、自然と共に生きるアスリート、熱い信念を持つオーナー等、その想いやヒストリー、展望など、写真と共に丁寧にお伝えします。今後の人生の選択肢のひとつとなるヒントが、見つかるかもしれません。
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【新世代山めし】お湯だけ2分で完成!”食のガレージブランド”が放つ満腹リゾット

食べてみて驚いた。
お腹も心も満たす、ご馳走だった。

“食のガレージブランド”のウルトラランチが世に放つ、ビバークレーション。

ブランド名に「ウルトラ」、商品名に「ビバーク」の文字。ある程度山を知っている人からすると、名前から想像するにどこかストイック。日々のんびりと山を登るようなハイカーとは縁遠い山用食事?そんなイメージだった。

今回お話を聞いたウルトラランチのオーナー、ドミンゴさんはクラウドファンディングをはじめた。その理由はまさに「そんなイメージ」を打破するためだったのかもしれない。

想像以上だった”食のガレージブランド”の壁

山で重宝する食品は世の中にそれなりにたくさんある。ジェルやエナジーバーは小規模事業者や個人がやっていることも多く、バリエーションが豊富で選ぶ側からしてもありがたい。ただ、いわゆる食事系のガレージブランドというのは驚くほど少ないのが現状だ。

「ぼくがはじめた時は、他にも追随してくる人がいるだろうって思っていたんですけど、いまは完全に孤立しているんです。食のガレージブランドは世の中に本当にない。だから、比較対象が最初から大手食品メーカーの出す商品なんですね。それだと個人でやっている身としてはなかなか厳しいんです」

お話をうかがった、ウルトラランチのドミンゴさん

お話をうかがった、ウルトラランチのドミンゴさん

ガレージブランドというと主にウルトラライトの文脈で人気を博し、バックパックやサコッシュなどを中心にデザイン性や特徴が豊かなブランドが多数生まれている。最近では市民権を得て、大手メーカーのそれとは1.5倍ほどの商品単価ながら「それでもこれがほしい、待ってでもほしい」というファンが確実に増えている。

では山めしはどうだろう?

ギアと同様、山での食事も山のぼりの楽しみのひとつのはず。中には重い調理器具を背負い、山頂で豪華な料理をするハイカーもいるほどだ。しかし、このビバークレーションをはじめ、アルファ米や即席調理系の商品は「手頃さ」が重要な選定基準であるように思える。ギアのように「付加価値や特性にお金を払う」という考えはまだまだ浸透していない。それを打破するものが、このビバークレーションにはあるかもしれない。なぜなら、食事の醍醐味のひとつでもある「作る」という楽しみがこの商品にはあるからだ。

“食べること”・“作ること”自体の楽しみは忘れてはいけない

2013年1月にウルトラランチというイベントをおこなったのが、ドミンゴさんが山用食事の取り組みをはじめたきっかけだ。イベントの内容は、トレイルランナー向けにお昼ご飯を作って栄養について話し合うお食事会兼勉強会というもの。当時も今も、山遊びをする人の役に立つ食事、みんなに喜んでもらえることを、という考えはぶらさない。

イベントの様子@東京・世田谷ものづくり学校

イベントの様子@東京・世田谷ものづくり学校

ドミンゴさんはウルトラランチを副業として立ち上げつつ、本業は音楽レーベルを運営していた。当時は昼夜逆転、一日一食しか食べない日も多く、食べるものに気をかけることもなかった。その頃からトレイルランニングにはまりはじめていたものの、そんな生活で100マイルを走るだなんてとんでもない。とりあえず三食食べることから始めた。切り替えるなら大きく切り替えようと菜食にも取り組んだ。

「トレイルランナーは素早くエネルギーを補給するためにジェルやサプリを飲むことが多いんです。最初はアスリートみたいでテンションが上がったんですが、美味しいとは思えなかったんですよね。僕は食べること自体がとても好きだし、音楽の仕事をしていた頃も、よくチキンカレーを作って音楽仲間に振る舞っていました。だから、山でも食事をちゃんと楽しみたかった。

山遊びは昔から好きで、そこでの食事といえば軽くて手軽だからインスタントラーメンを持って行くことが多かったんです。けれども、スープを飲みきるのがしんどかった経験が何度もあったんですよね、捨てるわけにもいかないじゃないですか。そうやって食べ疲れせずに一気に最後まで食べることができたならなって思っていたとき、ジョンミューアなどの海外の代表的なロングトレイルを歩く友人などにもいい食べ物ないかと言われたんです。自分でも考えていたし周りにも言われたら、作るしかないかって思ったんですよ」

‘作る楽しみ’があるビバークレーション

そんなドミンゴさんが作るビバークレーションとはどんなものか。いわゆる即席の米飯だ。200ccのお湯で戻して2分、あっという間にふっくらとした具沢山のリゾットができあがる。ちなみに、2分待たずとも食べられる。お湯を入れて混ぜて、お米のフレークが真っ白から色がついたり戻ってきたようになったら1分でも食べてOKだ。中には30秒で食べる人もいる。

味の種類も4種類、和風から洋風まで老若男女が楽しめるラインアップだ。最近人気なのは、去年秋に出したカレー味。男性はのり茶漬け、女性はポルチーニクリーム、男女関係なく安定しているのはトマトキックだそうだ。

インタビュー時に作ってもらったのはトマトキック

インタビュー時に作ってもらったのはトマトキック

「一食400kcalあるので、山遊びのときの朝・昼の食事としてはこれで十分です。縦走や走る人やテント場での晩ご飯などは、何かおかずを加えて脂肪・たんぱく質を強化するとなおいいと思いますね。1点だけ注意しておくと、200cc以上のお湯で作る方がたまにいらっしゃいます、そうすると味が薄くなりやすいので、はじめて召し上がるときは是非200ccしっかり計って作ってほしいです。そこから自分の好みの濃さに調整してもらえたらなと」

作ることの楽しみを忘れないドミンゴさん、おすすめはトッピングだ。山に入るときにコンビニに寄ることも多いと思うが、おつまみコーナーにあるサラミやチーズ鱈などはだいたい何でも合う。トマトキックはドライフルーツとも相性が良く、ドミンゴさんはマンダリンオレンジのドライを細かく刻んだものをトッピングするんだそうだ。

編集部も後日の山行で、のり茶漬けにイカの明太子マヨネーズスナックをトッピング(THE・つまみ!)。お湯で戻すビバークレーション、食感はふかふか柔らかだ。そこにサクサクとした食感が加わることで飽きを感じず食事を楽しむことができた。これは毎回色々なトッピングを試して、自分好みを発見する楽しみが生まれそうだ。4種類の味に何種類もあるトッピング候補。食べる楽しみ、作る楽しみは無限に広がっている。

軽さ以外にも、”固さ”がパッキングにも有効だった

ドミンゴさん本人も想定していなかったビバークレーションの魅力がある。それは「固いこと」。ゆえに「パッキングに活きる」のだ。これはユーザーからの声が寄せられたそうだが、お湯で戻す前は薄く固いため、パッキング時に活用することで全体が安定する。食事としてのみならず道具としても優秀なわけだ。

たとえばインスタントラーメンを袋のままパッキングしようものなら、開封時はボロボロに細くなっていたり、カップ系の即席ご飯もかさばってしまい思うようにパッキングできない、というハイカーの方も多いのではないだろうか。

ビバークレーションは4食パック(1,944円)での販売だ

ビバークレーションは4食パック(1,944円)での販売だ

山からやってきた日常食に、なり得るか

ドミンゴさんが見据えるのは山用食事としてだけにとどまらない。

「2年間もつから保存がきくんですね。だから、いそがしいときの朝ごはんや、遅く帰った時の夜食、ある意味ズボラ飯的な活用用途もあると思っています。毎日三食ご飯を食べたとして年間千百食、すべてに意図を持って食べるなんてほぼ無理です。会食や飲み会だってある。しっかり考えていないままとる食事はどうしても避けられないと思うんです。そうした中でも少しでも体のことを考えて食べるという対象として、頭の片隅にこのビバークレーションを置いてもらえたらなって思います。お酒にも合うからテント場での夜でも、深夜家に帰った時の晩酌のお供にもぴったりですから」

石井スポーツでポップアップショップを出すなど、ウルトラライト、トレイルランニングというこれまで展開していた領域からさらに拡大を目指すドミンゴさん。その皮切りとなるのが現在実施しているクラウドファンディングだ。山での食事はもちろん、日常食、保存食としても一度試してみてはどうだろうか。食べる楽しみと作る楽しみが味わえて、かつ体にもパッキングにもうれしい優れもの。ちなみに編集部はインターネット企業。ここぞ!という時や忙しい時の食事に、周りの社員にもぜひすすめてみたいと思う。


*ULTRA LUNCH
http://ultralunch.com/

*【未来は山からやってきた】お湯だけ2分で即うま本格リゾット!できました
https://camp-fire.jp/projects/view/61431

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