• キャンプや登山に関わる人々へのインタビュー記事一覧です。自然に魅せられたアウトドアフリーカー、自然と共に生きるアスリート、熱い信念を持つオーナー等、その想いやヒストリー、展望など、写真と共に丁寧にお伝えします。今後の人生の選択肢のひとつとなるヒントが、見つかるかもしれません。
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みんなで共感し、好きを長く続けられる環境を作りたい。エイトロックオーナー下葛さん・中家さん

世の中には、ふたつのものがあります。

人為的なものか
そうでないものか

岐阜県飛騨市の神岡町にあるクライミングジム「エイトロック」は、都会のそれとは明らかに異質な空気が作られていました。それも、自然発生的に。

幼なじみではじめたクライミングジム

幼なじみと聞くと、いつになっても特別で心が温まる響きがするのはわたしだけでしょうか。なぜそうもグッとくるかを考えると、これから作ろうと思っても決して作れない、生まれてから人生かけて育むものだからなのかもしれません。

今回ご紹介する下葛祐司さん・中家佑介さんは小さい頃から社宅も一緒だった文字通り幼なじみの34歳。一度は学校と就職で神岡町を離れた下葛さんと、神岡町でずっと暮らしていた中家さんが、地元の仲間とともに作ったのがこのエイトロックでした。

(左)下葛祐司さん・(右)中家佑介さん
(左)下葛祐司さん・(右)中家佑介さん

下葛さん:「24歳の頃に富山県でクライミングをする機会がたまたまあったんです。それがおもしろくて佑介を誘いました」

中家さん:「はじめてやった時に、どハマりしちゃって。それから通うようになったんですよね」

二人がクライミングをはじめたと聞いて、神岡の仲間たちも徐々に一緒に楽しむようになっていったといいます。そうしてどんどん盛り上がっているうちに、神岡にジムを作ろうと決心。

中家さん:「僕らも含め、みんな普段は仕事していますから、仕事が終わったあとに夜なべで作業していたんです。このジムができるのに10ヶ月もかかりましたよ(笑)」

神岡だから出せる空気が、全国に広まった

下葛さん:「ゴールした時は、こうやって讃え合うんです」

編集部が取材したのは、11月の平日19:30。ちょうどジムがオープンした直後の時間ですが、仕事を終えたお客さんたちが続々とジムにやってきます。

目の前に立ちはだかる課題、それと向き合う自分自身。それを見守っているのか、はたまたお手並み拝見とうかがってる他のお客たち。少なからずクライミングジムに足を運んだことのある編集部が抱くそんなイメージを、エイトロックはいい意味で裏切ってくれました。

下葛さん:「周りの友人たちとはじめたジムなので、自然とアットホームな空気なのかもしれません。僕らがやらなくても皆んなが発信してくれたり、そういうのが広まって全国からお客さんが来るようになりました。クライミングをはじめたきっかけでもある富山県からも、お客さんが来てくれるんですよ」

前述のグータッチは、お客さんが新たに設置した課題に対してみんなでチャレンジした時の様子。一人一人トライする姿は他のジムと大きな違いはありませんが、注がれている視線は冷たいものではなく、心から応援していることが伝わるほどに温かい。

この温かさは、仲間同士ではじめたからというのはもちろん、神岡で暮らす人々の特性も表しているようです。

中家さん:「僕の仕事は大工なんですけど、優しい人が多くて働きやすいのが神岡の特長だと思うんです。仕事中に声をかけてくれる方がいたり、差し入れをしてくれる方がいるんですよ」

下葛さん:「東京のホテルで働いていたときは、1日がそれだけで終わるという日々が続いていたんですよね。それと比べると神岡には幅があるんですよ。幅があるから、人と接することができるし、時間のゆとりもある。そこから生まれる余裕や温かさが、この空気を作っているのかもしれないですね」

エイトロックのfacebookページなどを見ていても、ただクライミングをするためのジムではなく、ひとつのコミュニティとして機能しています。そこにもお二人が大事にしていることが意図せず反映されているそうです。

下葛さん:「クライミングはどうしても課題と自分、という1対1になりやすいんですよね。でも僕たちは、そうじゃなくてみんなで共感する楽しさっていうのを届けたいなと思っているんです」

中家さん:「お客さん同士が課題を作ってみんなでトライする。そんなセッションがたくさん生まれる場になったらいいなと思いますね」

好きなことだから、続けられるように

二人は平日の昼間は仕事をしながら、夜と休日にこのエイトロックを運営しています。このジムを本業にするということは考えていないのでしょうか?

下葛さん:「ちょっとそれは難しいかもしれないですね、食べていけないかなって思います(笑)。料金設定もかなり低くしているんですけど、それには理由があるんです。僕らはクライミングが好きでこのジムをやっていて、ビジネスでやっているつもりはないんですよね。岐阜って話をすると東京のクライマーからは羨ましがられるんですよ、岐阜はクライミングをするには素晴らしい環境なので。だから、1日でも長く”続けられる”環境を作るのが大切だと思っているんです」

中家さん:「岐阜はクライマーにとっては本当に素晴らしい地なんです。下呂や恵那、フクベなど、僕も仕事終わりの夜に自然の中で登ります。僕にとってはライフスタイルですし、自然を感じながら楽しめるのがクライミングの魅力だと思っているので、絶好の環境だと思います。岩での課題をクリアした時の達成感がたまらないですよ」

夜の下呂でのクライミングの様子(写真提供:中家さん)
夜の下呂でのクライミングの様子(写真提供:中家さん)

下葛さん:「達成感はもちろんですが、ひとりでもみんなでワイワイしながらでも課題をクリアしていく、そのプロセス自体がクライミング魅力だと思います」

幼なじみとその仲間たちが生んだ、他にはない居心地のいいクライミングジム。神岡だからこそできたこと、と語る二人の地元愛にどこか羨ましさを覚えました。

神岡には最高に美味しい焼肉屋もあるそうです、アウトドア好きはもちろん、クライミングが初めてで不安な方も是非足を運んでみてください。神岡の温かな空気が、不安を安心と楽しさに変えてくれるに違いありません。

エイトロック

【住所】
〒506-1121
岐阜県飛騨市神岡町殿字山越447-1

【営業時間】
平日19:00〜23:00(平日の祝日も同様)
日曜 11:00〜18:00

【定休日】
土曜

【公式サイト】
https://eightrock.jimdo.com

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(写真:藤原 慶

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