• キャンプや登山に関わる人々へのインタビュー記事一覧です。自然に魅せられたアウトドアフリーカー、自然と共に生きるアスリート、熱い信念を持つオーナー等、その想いやヒストリー、展望など、写真と共に丁寧にお伝えします。今後の人生の選択肢のひとつとなるヒントが、見つかるかもしれません。
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【自然ビト #08】量産型女子になりたくない。山へと突き動かす、できることが広がる喜び

Instagramで山好きのユーザーの投稿を見ていて、とても気になる存在がいた。

いのみん(@lalatxm)さん。
プロフィールを見ると20代の女性でナースだという。なんとなくイメージしていた登山好きの属性とは異なるタイプだ。しかも、アルプスや八ヶ岳、雪山など、アクティブに山を楽しんでいる様子。

これは話を聞きたい、と彼女が住む名古屋へと足を運んだ。

お話を聞いた、いのみん(@lalatxm)さん

お話を聞いた、いのみん(@lalatxm)さん

きっかけは、バックパッカーに憧れて

——すごく山に登られてるなぁという印象ですが、アウトドアをはじめたきっかけをまずは教えて下さい。

わたし今年で26歳なんですけど、山は去年の25歳からでまだ1年くらいです。山をはじめる前には、バックパッカーに憧れていました。

23歳のときに、マラソンが好きで石垣島のマラソン大会に出るために現地のゲストハウスに泊まったんです。そのときに、ケニアの医療ボランティアをしている方の話を聞いて、海外でそういうことしたいってすごく憧れたんですね。それができないにしても、自分の世界を広げたくて、ひとりで知らない海外へ旅したいなって。けど1人旅なんてしたことなかったから、まずは弾丸で国内の屋久島に行きました。

その時に白谷雲水峡〜太鼓岩と登ったんですけど、すごく感動してしまって。海外にわざわざ行かなくても、日本にこんな綺麗な自然があるんだ、まだまだ知らない世界がたくさんあるんだなって感じたんです。そこからバックパッカーになるのはやめて、日本の山を登るようになりました。

——まず山をはじめて1年というのに驚きです。雪山も登っているので、もう何年もやっているのかと。

ハマるとずっとハマるタイプなので(笑)。すごく深くまで追求したくなっちゃうんです。

——一緒に登る仲間はもともといたんですか?周りに登山好きな友達がいたとか。

いえ。山仲間は誰もいなかったんですけど、屋久島で一人旅ツアーの人たちがいて宿が一緒だったのでそこの人と仲良くなって、愛知に戻ったあとにそこで知り合った子と一緒に燕岳に登りました。あとはフェス仲間と木曽駒ケ岳や赤岳に行ったくらい。もとからの友達よりかは、山に登りはじめてから現地やインスタで仲間が増えていきましたね。

フェス仲間で木曽駒ケ岳へ

フェス仲間で木曽駒ケ岳へ

できないと思っていたことが、できるようになるのが嬉しい

——屋久島からは立て続けに山に登って行ったんですね。その延長で雪山にも?

もともと危険なことはしたくないって思っていたので、夏山しか登らないつもりだったんです。けど、山にハマったのが7月で、高い山はすぐ雪になるじゃないですか。ハマったのにすぐ登れなくなっちゃうのは嫌だなぁって思って雪山講習を受けたんです。そこで宝剣岳に登ったんですけど、それが本当にすごく良かったんですよね。そこから雪山も魅力的に感じるようになりました。

——確かにすぐブランクが空いちゃうと熱も冷めちゃいそうですよね。登山だけでなく、クライミングもハマっている様子ですが。

その雪山講習で一緒だった人たちが、みんなクライマーさんばっかりで。「いのみん雪山やるならクライミングだよ」って言われたんです。だからボルダリングやらなきゃって思ってて、そのことをインスタで投稿してたら同じ名古屋のサキさん(@chsix)が声をかけてくれて、彼女がオススメのジムに連れて行ってくれたんです。

——登山にクライミングに、短期間でかなりアクティブですね。もともと体を動かすのがお好きだったんですか?

そんなことはないんです。学校ではずっと文化部で、足も遅いし運動音痴で体力なくて。山なんてわたしには絶対登れないって思っていて、でも自然は好きだからやってみたいとは思っていたところで屋久島に行ったら意外といけたんですよね。できないと思ってたことができることがすごく嬉しいんです。クライミングも同じ理由で、ジムには仕事終わりで週2〜3くらいは通っています。

インスタで繋がったサキさんと表銀座へ

インスタで繋がったサキさんと表銀座へ

山のことは、わたしのことを知っている人の意見を大切に

——山をはじめて1年でいろいろな経験をされているように思いますが、山選びの情報収集はいつもどうされていますか?

人の話が多いですね。仕事が看護師なんですけど、高齢者の方って昔登山していた人が多いので患者さんとオススメの山の話をしたり。まさか患者さんもナースと山の話ができるとは思ってないみたいで、「たくましいやつおるなぁ」って言われました(笑)。

——人との話で情報を集めるってすごく興味があります。詳しく教えていただけますか?

安全か、自分のレベルでも登れるか、をすごく大事にしているんです。私のことをよく知っている友達が「ミカちゃんならいけるよ」って教えてくれることが多いのでそれを頼りにもしますね。道具やブランドにもこだわりがないんですけど、地元のお店にいつも聞いてくれる店員さんがいるので、道具を買う場合は自分に合っているか相談したいからそこに行きます。

——冬山の時のお話にもありましたが、身の安全性っていうのは意識されているんですね。確かに、メディアの情報はいくらオススメって言われてもそれは自分に対してではないし、自分のレベルを知った上でオススメって言ってくれているわけではないですからね。

そうですね、メディアからの情報は憧れに近いかもしれないです。行ってみたいなとは思うけど行っていないことが多いです。

量産型女子になりたくない、か弱いって思われたくない

——屋久島で山の魅力を知ったとのことでしたが、そのあと続けていく中で感じた魅力は何かありますか?

クライミングは全然できなかったことができた時の快感がたまらないです。ジムで友達から「みかちゃんは無理じゃない?」って言われてもがんばります(笑)。登山の楽しみは、都会の喧騒から逃れられること、見たことない景色が見れること、雪山はこんなところいけないだろっていう場所にアイゼンとかピッケルを使うと安全に行けるところとか。

あとは、写真を撮るのが好きで夏フェスとかで撮っていたんですけど、屋久島や自然を撮っていたら「自然撮るとこんなに綺麗なんだ」って感動して、それも魅力のひとつですね。

カメラはGoProとテープでしっかり補強した一眼レフを愛用

カメラはGoProとテープでしっかり補強した一眼レフを愛用

——ピークハントにこだわったり、眺望重視とかそういうところはありますか?

ピークハントは気にしないですね。天気が悪くて登頂を断念した槍ヶ岳もすごく楽しかったですし。眺望がどうっていうよりかは標高が低すぎると逆に遭難しそうで怖くて、低山は避けるようにしてはいます。一番好きな山は、最近行った山が一番好きになるタイプなんですけど、雪の唐松岳は天気がすごく良くて印象深いです。

——山の魅力は確かにおっしゃる通りだと思いますが、それを抜きにしてもバイタリティがあるように思うんですよね、いのみんさんは。

ただの負けず嫌いなんだと思います(笑)。女性ってか弱いと危ないじゃないですか、でも私はか弱い女子って思われたくないんです。だから昔はキックボクシングもやっていました。なんだか昔から人と一緒なのが嫌なんですよね、量産型女子にはなりたくないんですよね。見た目や雰囲気でおとなしそう、ふわふわしてそうって思われたりしていたので、ひとりだと何もできないって思われたくないんですよ。

——そこは行動を生む根本になっていそうですね。

バックパッカーをしたかったのも、「この場所まで来てね」って言われた時に一人でたどり着けないことが多くて。そういうことをなくしたかったという理由もあるんです。

——お話を聞いていると、この数年ですごくたくましくなった感がありますね。旧友と久しぶりに会うと驚かれるんじゃないですか?

友達に2年ぶりに会ったりすると「前とぜんぜん違う」って言われます。2年前は夏フェスばっかり行ってましたしね。

でも、今がすごく楽しいから2年後とかもやっていることは変わらないと思います。バックパッカーには引き続き興味はありますけど、何事もそれが必要なタイミングとか岐路ってあるじゃないですか。それを考えると、今の自分には必要ないですね。


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たくましくなりたい、という想いと深く追求する志向が見事に山に結びついたいのみんさん。まだ山をはじめて1年間とは思えないほどの経験を積んでいる姿に、不可能なことなんてない、と思い知らされる。いつも楽しそうな山の写真をアップするいのみんさんを見て、自分も登りたいなぁと思う若い人も多いのではないだろうか。

*いのみんさんのinstagramアカウント(@lalatxm

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