焚き火好きが作った、焚き火好きのためのブランド「IRON CRAFT」
アウトドア界に革新をもたらし可能性を広げる、ガレージメーカー特集第8弾は、instagramをきっかけに火がついた、焚き火を愛する人のブランド「IRON CRAFT」。焚き火のシーンを考え尽くした唯一無二のギアを作る同ブランドの背景、そしてこだわりをうかがってきました。
もくじ
焚き火料理を存分に楽しむために生まれたギア『IRON CRAFT(アイアンクラフト)』の『ITADAKI』
キャンプの一番の醍醐味として、焚き火をあげる人は多いのではないでしょうか。
その焚き火をメインとしたサイト作りのために、そして、焚き火料理を存分に楽しむために生まれたギアが、instagramによってたちまち広まり、焚き火フリークたちの人気を集めています。
『ITADAKI』
鉄製の圧倒的な存在感を放つこのギアを生み出したのは、新進気鋭のガレージブランド『IRON CRAFT(アイアンクラフト)』。
今回、静岡県・菊川市に工房を備えるIRON CRAFTの店舗にお邪魔し、そのギアへのこだわりをうかがってきました。
焚き火料理が好き。味がぜんぜん違うんです
店舗に入った瞬間から、「あ、ここ好きだ」と感じざるを得ないのではないでしょうか。店内はビンテージランタンやこだわりのギアが飾られ、その中で黒く、強く佇むIRON CRAFTのギアたち。キャンプ好きには、これを見ているだけでたまらない空間でしょう。
——実物を見たのは初めてなのですが、もう既に欲しくなりました。
ありがとうございます(笑)。おかげさまでどのギアも好評で、ITADAKIは1週間に10台ほど作っています。きっかけはinstagramのキャンパーたちの間で一気に広がったんです。
instagramはすごいですよ。キャンプの最新ネタが日々飛び交っていますし、彼らの聖地であるふもとっぱらに通って、よく一緒にキャンプをしています。
——編集部もinstagramを見ていてITADAKIを知りました。でも山内さん自身は元々というか、今もサラリーマンだとうかがいました。
そうなんですよ。でもキャンプは昔から好きで、入り口は釣りでした。初めて釣ったのがイカだったんですけど、それが本当においしくて。
——釣りからキャンプが好きになって、そこから自身でギアを作るって相当だと思っているんですが、どういった経緯があったんですか?
キャンプで使えるラックを探していたんですけど、良いサイズのものが見つからなかったんですよね。焚き火のブランコも欲しかったですし、知り合いから既存のギアと同じものを作ってくれって言われたりもして。
でも調べていたら、やっぱり権利の問題でそっくり作るのはNGで。だったらオリジナルで作ろうと思って作ったのがITADAKIです。
——作ってみようと思っても、誰でも作れるわけではないと思いますが、何かものづくりについて以前から携わっていたんでしょうか?
仕事でやっていたわけではないですが、昔から手先が比較的器用だったというのはあります。学生時代も図工や美術が得意でしたし、キャンプに限らず自分で何か作ることは昔からやっていて。
そのルーツはと言えば、地元が富士の山奥で、小さい頃からナタで木材を切っていたり薪風呂に入っていたりしたんですよね。親の仕事がプラモデル関連の仕事だったんですが、余ったのを持ち帰ってきてもらって作っていたりもしました。でも同じ種類のものばかりで飽きちゃうから、自分でカスタマイズしたり。
——小さい頃から、自分で火を焚いたり、何か作り出すことが生活の一部になっていたんですね。
そうですね、でも専門的に学んでいたわけではないので設計図とかは書かないんです。頭でイメージしているものをそのまま作りはじめちゃいます。
——それ、逆にすごいですね……
作った物をサンプルとしてパートナーの黒田さんと話し合いながら設計図に落としていきます。
パートナーの黒田さんは、建築会社を経営していまして、その道のプロなんです。自分のアイデアを黒田さんが設計図に落としてくれて、量産を可能にしているのが今って感じですね。
——作っているギアも、焚き火に特化していると思うんですが、そこへの思いは何かあるんですか?
冒頭にもお伝えした通り、焚き火で作る料理が本当においしいんですよ。熱伝導とか火力とか、ガスとは比べものにならないですよね。
——焚き火料理がしたくてキャンプに行く、というイメージでしょうか?
そうですね。火を見に行っていぶされるのが好きです(笑)。あと、わたしは冬でも薪ストーブは使いません。テントの中でインするスタイルが流行っていますが、わたしは外の空間をすごく大事にしていて、極力キャンプでも外にいるようにしているんです。
——ずっと外にいようと思うと、なおさら焚き火が大事になってくるわけですね。ということはテントはあくまで寝床であり、内装は気にしないのですか?
そうですね、中に置きがちなものも、寝具以外は基本的には外に設置しています。自身のキャンプスタイルから、IRON CRAFTのギアが生まれてきているんです。
現場と、ものを大事にするこだわりが、ギアに反映される
——ここからは具体的なギアへのこだわりをうかがいたいと思います。焚き火や焚き火料理への想いをお話いただきましたが、具体的なギアに落とし込むときに大事にされていることはありますか?
まず第一には「鉄製」ということですね。焚き火のためのギアなので、火に強い、というのはもちろん、水に濡れても錆びるだけですから。木製のギアも風合いは良いですが、水に弱いというのが難点ですね。
それと大事にしているのが「設営時間は短く、でも派手に!」ということですね。
サイトは30分で設営できるようにと考えていて、軽自動車1台で積載するようにしています。それも受けて、IRON CRAFTのギアも収納時はかなりコンパクトになるよう設計しているんです。
——見た目の存在感がすごいですが、意外と手間はかからないんですね。そして何よりも丈夫そうに思います。
はい、その「丈夫さ、強度」ということもこだわりの一つですね。
見ていただくとわかるんですが、実はネジを一つも使っていなんです。ネジ自体が壊れたり、穴が開いてくることでガタガタになって全体が壊れやすくなってしまうんです。キャンプで壊れたギアを見てみると、ネジを使っている、ということが多いんですよ。
キャンプの現場で壊れて使えなくなったら、その日のキャンプが台無しですよね。わたしが作っているのは焚き火周りのギアなのでなおさらです。鉄の加工はパートナーの建築会社の方々がお手のものですから、こだわり持って作れています。今まで修理の問い合わせを受けたことは一度もありません。
——現場目線の山内さんがアイディアを考えて、それを緻密に再現してもらう。素晴らしいタッグですね。ちなみに、先ほど適したサイズのラックを探していた、というITADAKIの話をされていましたが、なぜラックを?
地べたにものを置きたくないんですよ、物持ちが悪くなるので。道具はできるだけ長く使いたいんです。
それと、ITADAKIはラックが調理台として機能するんです。例えば男女で焚き火料理をする時、女性が立って材料を切るのにちょうどいい高さだったりします。切った材料を男性に手渡して、焚べながら調理する。そんな役割分担をしながらの使い方ができるんです。
——ITADAKIは調理器具を吊るせるので、調理時の使い勝手はもちろん、見せる収納としても一役買いますよね。このS字フックも作られているんですか?
はい、こんなに太いS字フックは市場に出回っていないですからね。ショップで売っている細いS字フックでも代用は可能ですが、見た目が一気に貧相になります。この太い鉄を綺麗に曲げる技術も、他にはなかなかできないところですね。
焚き火好き、キャンプ好き目線で今後もものづくりを
——現行品でもかなり好評だとは思いますが、これから考えている新作などはあるんでしょうか?
それがいっぱいあるんです(笑)。先ほどお見せしたストーブカバーもそうですし、キャンパーのための洋服って世の中にないじゃないですか。instagramのおしゃれキャンパーの方々とご一緒しても、皆さんアウトドアブランドの服を着ているんですよね。そうではなく、キャンパー目線のキャンプのための洋服を作ろうと思っています。
自身が大のキャンプ好き・焚き火好きでもあり、日々instagramのキャンパーたちとのキャンプを通してアイディアを膨らませる山内さん。
現場発の焚き火ギアを生み出すIRON CRAFTの今後に要注目ですよ。
〒439-0037
静岡県菊川市西方5380-1
ウェブサイト:
http://ironcraft.web.fc2.com/
ブランドinstagramアカウント:
https://www.instagram.com/ironcraft_factory/
山内さんinstagramアカウント:
https://www.instagram.com/yamauuchan/
LIFE WITH NATURE!
コースタイムの1.5倍はかかる写真大好きハイカー。登山はカメラ3台、キャンプはミニマルに、自分らしい自由なアウトドアを楽しんでいます。フィルム登山部メンバー。.HYAKKEIファウンダー&初代編集長。