• キャンプや登山に関わる人々へのインタビュー記事一覧です。自然に魅せられたアウトドアフリーカー、自然と共に生きるアスリート、熱い信念を持つオーナー等、その想いやヒストリー、展望など、写真と共に丁寧にお伝えします。今後の人生の選択肢のひとつとなるヒントが、見つかるかもしれません。

真面目に遊ぶ大人が作る山のお店 谷ノ木舎-大阪-

ULトレッキング文化の拠点を大阪に

アメリカから渡ってきたULハイクの文化が、じわじわと熱を帯びています。

国内のUL系ガレージブランドも少しずつ増えてきており、取り扱うお店も多くなりました。谷ノ木舎は大阪の谷町7丁目にあるULアイテムを中心とした山道具のお店。

ワンフロアの店内には厳選された山道具が並ぶ
山と道(※1)ザックはほぼフルラインナップがそろう
シューズはトレランシューズとサンダルが中心のラインアップ

週末にはハイカーたちがこぞってお店に遊びに来る様子がSNSから伝わってきます。そんなぬくもり感じる谷ノ木舎オーナーの中川さんにお話を伺いました。

物心ついたときから触れ合ってきた世界の多様性

父親の仕事の都合で、幼少期から世界各地を転々と過ごしてこられた中川さん。ご自身のそういったバックグラウンドと向き合われたのは、高校時代にバイト代を貯めて購入したフィルムカメラを通じてだといいます。

谷ノ木舎オーナー 中川さん

「高校時代にタイとマレーシアに一人で遊びにいったんですよ。そしたらものすごくカルチャーショックを受けて。それから海外にフラっと行っては写真を撮るのがルーチンになりました」

山とのきっかけは世界を巡った旅で出会ったダイナミックな自然

その後就職し、5年間勤めたアパレル会社を退職。フィルムカメラを片手に1年を越える旅をしたそうです。バックパックに大量のフィルムを詰め込み、今では考えられない程、UH(ウルトラヘビー)な装いだったといいます。

旅先で撮影した僧侶の子どもたちとの写真

「印象的だったのが、チベット密教など信仰心の強いエリアの人達。チベット、ラダック、カラコルムといった山に近いエリアを中心に回っていました」

「そのときは山のカルチャーにはまった訳ではないんですけど、彼らの素朴な生活や、周りにあるダイナミックな自然にはまっていきました」

独立、そしてULやサステナビリティの文化に傾倒していく

帰国後は写真作家として活動。のちにご自身の海外経験が生かせるエスニック衣料の会社で働き始めます。そこで担当していたOEMの事業が成長し、スピンオフする形で独立。

OEM事業で取り扱う、エスニック衣料も店内に並ぶ

「その頃にはアパレルへの興味が薄れていて、どうせやるんやったら山のギアとか作りたいなと思っていました。ただ、友人たちが手がけるブランドがどれくらい時間をかけて製品を作りこんでいるか知っていたので、そう簡単にはいかんなと。そこで、知り合いが務めているパタゴニアで週に数回働きながら、勉強させてもらうことになりました」

HLCでのハイキングの様子

ご自身の会社とパタゴニアでの勤務。パタゴニアではウエアの知識はもちろん、環境問題についての学びも大きかったそうです。そんな生活が3年ほど続き、山と道(※1)のHLC(※2)アンバサダーとして取り組みをするなかで、大阪に拠点を構えようということで、谷ノ木舎が生まれました。

作り上げるのは情報交換のカルチャー

お店のぶらしたくないコンセプトはありますか?という質問に対して中川さんからこう回答がありました。

「情報交換のカルチャーを育む一つの空間になってほしいという想いはあります」

谷ノ木舎では定期的にワークショップのイベントを開催。

アルミ缶からストーブを作ったり、ゲストを招いて対談イベントを実施しています。

ワークショップで作るアルミストーブ

「道具をたくさん揃えることより、フィールドにでることの方が重要やと思っています。自分には遊び方を提案する方が向いているから、ストーブを売っている横でアルミストーブを作るワークショップもやる」

大人が楽しむ姿をみせること

中川さんは近所の家族向けに『子どもハイキングサークル』も実施していました。知り合いの家族と一緒に月に1回山へでかけるというものです。
自然の中で遊ばせたいけど、個人で山に入ることに抵抗のある家族も多く、希望者も多かったよう。

子どもハイキングサークルの様子

親同士の会話で、どんな習い事をさせているかという話があったとき、山なり音楽なり料理なり、自分たちが注力して楽しんできたことから経験させればいいんじゃないかと思い始めたそうです。

「大人が馬鹿になって楽しんでる姿をみせて、大人ってオモロくてかっこええなぁて思わせなあかん」

そう語る中川さんからは、子ども世代への強い愛情が感じ取れます。

提供する価値に実直に向き合うお店 それが谷ノ木舎

ここまでの取材の中で驚きだったのは商売の話が一度もでなかったこと。あくまで、お店を通じて提供する価値に実直に向き合うことこそ谷ノ木舎というお店を表現しているように感じます。

中川さんのお子さんは、父のしきたりに囚われることなく、自分の感性に対して素直に真剣に向き合って行動する姿から何を感じるのか。

在りし日の中川さんが、父の背中に感じた“それ”と似たものを感じるのかもしれません。

谷ノ木舎
ULハイキング・ファストパッキングをコンセプトにした山道具を扱う大阪・谷町にあるお店。オリジナルブランドcraftrailsでは、日本や世界の手仕事にスポットをあてた、温かみある製品を提案している。

ショップ取扱いブランド
山と道、ALTRA、RIDGE MOUNTAIN GEAR、RawLow Mountain Works、XEROSHOES、craftrailsなど

概要
住所:〒542-0021大阪市中央区谷町7丁目1-25
営業時間:月〜金12:00-20:00、土日祝12:00-18:00(不定休)
TEL:06-4305-7600
e-mail:na.taninoki@gmail.com
HP:https://craftrails.thebase.in/

※1 山と道:2011年に夏目夫妻が始めた、国内のULハイキング文化の先駆け的ブランド
※2 山と道HLC:「HIKE」「LIFE」「COMMUNITY」をつなげて考えるために山と道がローカルのアンバサダーとともに行っている活動。

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