無印良品といえば、“感じ良い”暮らしを提案し続け、今では日本のみならず海外でも愛され続けているブランド。

そんな無印良品が、20年も前からキャンプ場を運営しているのをご存知だろうか?

一見アウトドアのイメージが湧かない無印良品がなぜキャンプ場の運営を始めたのか?そして20年経った今もなお運営しているのはなぜなのか?

キャンプの魅力、人間本来の原点、キャンプにかける思いなど、無印良品のキャンプ事業の責任者である石川雅人さんにお話をうかがった。

余暇は人が生活する上で必要なもの

無印良品が運営するキャンプ場は、現在全国に3カ所ある。1995年に無印良品として初のキャンプ場となった新潟県・津南キャンプ場、その翌年1996年にオープンした岐阜県・南乗鞍キャンプ場、そして2004年にオープンした群馬県・カンパーニャ嬬恋キャンプ場だ。

「きっかけはお客様還元サービスの一つとして行っていた、サマーキャンプでした」

余暇は人が生活する上で必要なもの|「無印良品は、なぜ20年も前からキャンプ場を運営しているのか?  」の2枚目の画像

この「無印良品サマーキャンプ」の規模が例年拡大。その規模に耐えうる場所を探していくうちに現津南キャンプ場の場所が空き地になると聞き、93年・94年のサマーキャンプの拠点として選んだのがキャンプ場運営のきっかけなのだそうだ。

「当時の担当者がキャンプ好きだったんですよね(笑)でもそれだけではないです。当時はまだ第一次オートキャンプブームの前だったのですが、アメリカンカルチャーがどんどん日本に入ってきた時代でした。

無印良品は、人が生活する上で必要なものを提供していくブランドです。それは衣食住に関わるもので足りるのか?それだけではなく、余暇や遊びの部分が人には必要なのではないだろうか?という考えがありました。

その時にキャンプというキーワードが出てきたんです。」

明確なビジョンのもと、地元の方々と作っていく

3つ目のキャンプ場である嬬恋は、ユーザーからのメールがきっかけで生まれた。津南キャンプ場、南乗鞍キャンプ場を知っているユーザーから「無印良品っぽい場所が嬬恋にあるんです」と連絡が来たのだという。

当時はバブルもはじけて、リゾート開発したものの撤退を余儀なくしたという地方自治体が多く、嬬恋村もその例に違わずキャンプ場開発には懐疑的だった。

「私たちの想いというものを当時の土地所有組合の組合長にお話したんです。キャンプというのは自然を楽しむもの。だからこの場を工事して作り直すのではなく、今ある草原に寝っ転がって寝てもらう、そんなキャンプ場を作りたい、と。そういうことであれば良いのではないか、と組合長がGOサインを出してくれました」

明確なビジョンのもと、地元の方々と作っていく|「無印良品は、なぜ20年も前からキャンプ場を運営しているのか?  」の4枚目の画像

その後の各方面への交渉時も、ビジョンを中心に話をした。造成をするわけではないので図面もないのだ。自然を大事にする考え方自体が共感を生んだ。

設置するトイレについても議論が割れたが、最終的には無印良品が提案した汲み取り式が採用された。「自然に対してローインパクトである」ということが決め手だった。

地元の方を巻き込んだ取り組みは、オープン後も続く。

無印良品キャンプ場の特徴の一つに、年間70〜80タイトルものアウトドア教室がある。この講師の先生たちのほとんどが地元の方なのだ。参加者は都市部からやってくるが、そういった方々に、そこに住んでいる人が自分の体験を含めて伝えてもらった方が身になるだろうという考えだ。

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「先生というけれど、普段は普通のおじさん・おばさんですから、最初は不慣れな部分もいっぱいあります。何を話しているか分からないという声もありました(笑)でも、それをひっくるめて体験として楽しんでもらいたかったんです」

人は心が通じた時にコミュニケーションの深みが増す。人というのは、人を通じてその世界を知ることになるのだ。きっと先生たちを通して、アウトドア教室参加者が、そのエリアのことをより深く知ることができるのだろう。

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「実際に行動して、”行ってみる”ことが大事ですよね。それが良かったかどうかはその後に分かるものなんです。今の世の中は、行く前・体験する前から他人の評判を聞いて判断してしまう傾向があります。それは自分の体験ではないはずなのに、です。」

自然を豊かにするには地元の人たちと繋がり、地元の人たちとこの自然を守るという事を一緒に考えて取り組んでいくことが絶対的に必要だ、と石川さんは話す。

「キャンプ場の商品は“自然”だけなんです、それを劣化させる行為なんてありえない話です。いかに自然を良い状態でキープするか、今が悪いならどうやって改善をするか、を考えています。ニューヨークのスイートルームに泊まるような人がキャンプ場に来て、いいキャンプ場だね、と言ってもらえるようにするには、これしかない。
やるからには本気でやる、私たちは企業として20年間しっかりとそこにある自然と向き合って、地元の方々と連携してやってきています」

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人間の特権を原始的に楽しめるのがキャンプ

石川さん自身もアウトドアやキャンプを愛する一人。キャンプの魅力というのはどのように捉えているのだろうか?

「最近思うのは、“焚き火”というものがキャンプの一番の魅力であり、キャンプそのものなのではないか、ということです。火を囲むという行為が、文化人類学的にコミュニティの始まりであり、そこで共にご飯を食べるというのが第2ステージなんです。キャンプをするなら焚き火をしてほしいですね、焚き火は人との距離を近づけてくれます。

人間の特権を原始的に楽しめるのがキャンプ|「無印良品は、なぜ20年も前からキャンプ場を運営しているのか?  」の2枚目の画像

動物は火を起こせません。人間の特権なんです。それを楽しまないのは勿体無いですよね。食べられなかったものが食べられるようになる、見えなかったものが見えるようになる、寒かったものが暖かくなる。そういったものは火で事足りますから。それを原始的に楽しめるのがキャンプだと思っています」

いつもじゃない場所に火を焚いて、仲間で楽しむ。共に話して、コミュニケーションをしながらご飯を食べる。仲間や家族と共に火を囲んだそんな特別な時間がキャンプの醍醐味であり、人間ならではの楽しみなのだ。無印良品のキャンプ場は豊かな自然に触れながら、本当に大切なことを気づかせてくれる場所なのだ。

人間の特権を原始的に楽しめるのがキャンプ|「無印良品は、なぜ20年も前からキャンプ場を運営しているのか?  」の4枚目の画像

立ち返り、シンプルに

人間らしい楽しみ方ができるキャンプであるが、一方で今の社会に対して警笛を鳴らす。

「ものや情報などは進歩しているのに、人としては退化してきているように思うんです。予約のキャンセルの対応などもそう。自分の論理で考えるようになってしまっていることを残念に思うことがあります」

立ち返り、シンプルに|「無印良品は、なぜ20年も前からキャンプ場を運営しているのか?  」の2枚目の画像

成熟社会になってくると性善説だけでなく性悪説も出てくるものだが、自然を楽しむことにおいては性善説でありたいと語る石川さん。

「せめてキャンプ場の中では人としてシンプルに過ごせるようにできたらいいですよね。」

スマホがここまで普及し必需品になっている現代において、どこともアクセスしていない時間というものがなくなってきている。例えばソロキャンプをして、何もやることがなくなって焚き火をじーっと見ている、そんな時間が貴重だ。

立ち返り、シンプルに|「無印良品は、なぜ20年も前からキャンプ場を運営しているのか?  」の4枚目の画像

「幸いにも人も社会も自然に優しい方へとは変わってきています。人は変わることができるんです。一方で、自然の状態を変えないように変えないようにと努めてはいますが、自然というのも思いのほか早く変わっていくんです。それはキャンプ場を運営していて体感できます。情報社会になっていますが、もっと原点に立ち返っていく必要があると思いますね。」

開業20周年のタイミングで無印良品が発表した「自然とともに、一歩一歩。」というメッセージ。そこには20年の間に起きた自然の変化と、人の意識の変化、そして豊かな未来について語られています。

「我々の仕事は3次産業のように見えて1次産業なんですよね。台風が来ればそれまでの整備はパーになってしまうし、その年の売り上げにだって大きく響いてきます。20年やってきていてまだまだ気づかされることがありますし、こうして自然を守りながら、キャンプ場運営を行っていくのはなかなか難しいんです。だからこそ、我々のような企業がビジョンを持ってしっかりやっていくことに意味があると思っています。」

立ち返り、シンプルに|「無印良品は、なぜ20年も前からキャンプ場を運営しているのか?  」の6枚目の画像

20年も前からキャンプ場を運営し、自然を守りながら地元の方と連携し取り組んできた無印良品。往年のバスツアーのような形ではない、地域や観光を盛り上げるヒントもたくさん隠されているように思う。無印良品の商品と同様、脈々と受け継がれてきたものがそこにはある。

2017年のキャンプ場予約が1/11からスタートする。
ぜひ明確なビジョンのもと運営された稀有なキャンプ場で人間らしい時間を過ごしてみてはいかがだろうか?


・無印良品キャンプ場のウェブサイト
http://www.muji.net/camp/

・「自然とともに、一歩一歩。」
http://www.muji.net/camp/about/message/

この記事を書いた人

.HYAKKEI編集長 羽田裕明

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