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星野道夫に憧れて〜アラスカ、デナリ国立公園の旅(前編)〜

グリズリー、ムース、カリブー、オーロラ、ブルーベリー、北米最高峰デナリ。何千年と変わらない美しい自然が残されている。松本紀夫、星野道夫にインスパイアされた私のように、ぜひアラスカの大地を踏みしてもらいたいと思います。

はじめに

都会で「自然」を感じることは難しい昨今、自然に身を置く時間を作る必要があると思う。自然欠乏障害という概念が存在するほど自体は深刻だ。今回は夏休みを利用して以前より行きたかったアラスカへと向かった。

そもそもなぜアラスカだったのか

2014年春、写真家「松本紀夫」にテレビのドキュメンタリーを通じて出会った。「一度きりの人生を悔いのないように生きたいだけ」と彼はアラスカの大地で語った。特別な言葉ではないが、20年間アラスカに通った彼の言葉は、私の胸に深く響いた。その瞬間、アラスカに行こうと決めた。

あれから2年半、いつものスカイスカキャナーで航空券を調べ、112,090-の購入ボタンをクリックした。

予習と準備

若いときは事前知識なしに旅をしてきたけど、予習は大切だと今は思う。

星野道夫の「旅をする木」「風のような物語」、雑誌の「星野道夫特集」、新田次郎「アラスカ物語」、野田知佑「ユーコン漂流」、「地球の歩き方」を読み、「into the wild」を観て、イメージを膨らませた。実際に行った人たちにも話を聞き、松本紀夫さんの「写真展」に出掛けた。松本さんはテレビと同じフリースを着て、気さくに話をしてくれた。

彼のように生きたいと思いながら。

計画は北米最高峰のデナリ(6190m)が見えるデナリ国立公園でバックカントリーパーミッションを取得し、キャンプすること。トレイル歩きのように軽さを追及するのではなく、テント生活を楽しむための装備を揃える。

アラスカ最大の町アンカレッジ

2016年8月26日、ポートランド経由でアンカレッジへ渡る。アウトドアショップで料理用のガス、着火剤を、スーパーマーケットで5日間分の食料を買い込む。それにしても現地調達は楽しいが、保険として無洗米4合を日本から忍ばせてきた。いつものアルファ米ではなく、ご飯だけは炊くと決めていた。

バックカントリーパーミッション

翌日、バスで揺られること6時間、「デナリ国立公園」のエントランスまでやってきた。ここでの目的はバックカントリーインフォメーションセンターで許可書を取ること。バックカントリーというとスキー、スノーボートを思い浮かべる人も多いが、概念は同じで、人の手が管理していないエリアのこと。ルールを守れば、どこを歩いても、どこで寝てもかまわない。もちろん責任は伴うが、アメリカの広大な自然だからできるシステムだ。

例えばルールの1つに、食料や匂いのする歯磨き粉などはベアキャニスターに入れて保管し、寝るときはテントから100ヤード(約91m)離さなければいけない。クマに襲われないための工夫、自然が再生できる範囲のダメージに抑えるためのルールだ。アメリカの国立公園ごとに規則が違うので、その都度確認が必要となる。

バックカントリーのエリアは全部で約50箇所。レンジャーから情報を聞き出し、そのなかの1つを選び、講習を受けて許可書を取得した。

バックカントリー

初日のライリークリークキャンプ場、二日目のワンダーレイクキャンプ場で北米最高峰デナリを堪能した。

そして今回のハイライト、バックカントリーへ向かった。

地図を見て、川沿いにキャンプしようと計画したのだが、実際に来るとイメージと違うなと思いながら進んでいく。どうしようかと地図を眺め、小さな湖に狙いを定める。西の丘を越えたとこに湖があるので、地図を信じていくことにする。無かったらまた戻ることになる。

獣道を進み、冷たい川を渡渉し、ツンドラの大地はスポンジのように柔らかく体が20cmほど沈み込む。予想外の沼地にイライラしながらもまずは丘に到着した。双眼鏡を取り出し、地図通り3つの湖を発見した。その中で一番大きな湖に的を絞り、地面がフラットなことを祈りつつ目指した。日本だとキャンプサイトが決められているからそんな心配はしないが、最高のキャンプを探すのはなかなか大変であるが、楽しい。

低木のうっすらした獣道を下り、湖へ辿り着いた。秘密基地を見つけたように、最高の隠れ家を発見した。360℃見渡す限り誰もいない、私だけの空間。時計で標高を確認すると、標高790mだった。名もない湖で3泊。のんびりしようと決めていた。ここで私はオーロラに出会い、動物たちの息づかいを感じたのだ。

星野道夫

私のキャンプでの楽しみは、夜テントの中で本を読むこと。静謐な空間で、星野道夫の「旅をする木」のページをめくる。2年前に読んだときは、カッコよすぎて私には照れくさかった記憶がある。でもアラスカで読んだ星野道夫の文章はとても現実的だと思い、すっかりファンになった。そもそも私のアラスカのきっかけを作った写真家松本紀夫さんも実は星野道夫に憧れた一人。繋がりを感じる。ちょうど没後20年、星野道夫の写真展が開催されている。今度行きたいと思っている。

星野道夫の言葉を伝えたい。

「東京であわただしく働いている時、その同じ瞬間、もしかするとアラスカの海でクジラが飛び上がっているかもしれない、それを知ったこと」 ー旅をする木 もうひとつの時間ー

星野道夫に憧れずにはいられない。

そしてアラスカ旅は後編に続く。

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