これぞジャパン・クオリティ!ガス器具のプロとしての徹底した安全管理、SOTOの工場潜入レポート
アウトドアに欠かせないのが「炎」。
山頂でとっておきのコーヒーを淹れる、山めしを作る。冷えた体を温めてくれるスープ。キャンプで極上のキャンプめしをお披露目する。それができるのは「炎」があるから。それでも、一歩間違えると大惨事になってしまう側面も持つのが「炎」。
そんな「炎」を会社をあげて扱い、徹底的なプロフェッショナル精神でものづくりに向き合うところがある。アウトドア好きであればおなじみ、新富士バーナーのアウトドアブランド、SOTOだ。
もくじ
私たちは日本のアウトドアブランドだ
工場のある本社に着いてまず目に入ったのは、古いSOTOのロゴ。私たちが見慣れた現在のロゴは9年前にリニューアルされたものだそうだ。これを見ただけで歴史を感じ、こみ上げてくるものがある。
24年の歴史を持つSOTO。そもそもブランド名の由来は何なのだろう?
当時、アウトドアといえば海外製のものしかなく、アメリカ大陸からやってくるのが大半だった。アウトドアという概念自体も海外からの輸入ものだ。
けれども自分たちは”日本”のアウトドアブランド。そのことを表現するために、日本で言うところのアウトドア、「ソト」をブランド名に据えた。日本のブランドであるということの誇りと主張の象徴だ。
ユーザーの声から生まれたブランド、SOTO
さて、そんなSOTOであるが、もともと新富士バーナー内にあったブランドではない。新富士バーナーのそれまでのメイン事業は家庭用・業務用のガス器具の製造だ。そんなまったくの異業種である会社からアウトドアブランドSOTO誕生のきっかけとなったのが、このポケトーチ。
使い捨てライターが1300℃の強力耐風バーナーになることで人気のこの商品が、アウトドアでも使い勝手が良い、というユーザーのフィードバックを受けた。それを機に新富士バーナーとしてアウトドアブランドを作る検討に入ったそうだ。
カセット式レギュレーターストーブの開発に成功
ポケトーチのアウトドア使いを機に、アウトドア用製品の開発を進めている中で、重要な位置付けだったのがカセットガス式の燃焼器具。
ガス器具メーカーとして、カセットガスはお手の物であるわけだが、それをアウトドアという気温や風などの影響を受けやすい中でも使えるようにする。それがガス器具メーカーを母体とするSOTOの至上命題だった。そして2008年、カセットガス式のレギュレーターストーブの開発の成功を以って、キャンプシーンにSOTOの存在を知らしめるようになる。
山のプロではない、だから声を聞く
まずは冬のキャンプシーンに足を踏み入れたSOTO。その後2009年のマイクロレギュレーターストーブの発表を皮切りに、登山シーンにもその存在感を示すようになる。
これまではカセットガス式の製品を作っていたが、そこから登山シーンを意識したOD缶タイプのガスストーブの開発に着手。マイクロレギュレーターストーブによって、これまでの「寒さに弱い」というガスストーブのイメージを覆すことに成功し、SOTOのアウトドアでの活躍の場が一気に広がった。
とはいえ、母体はガス器具メーカー。アウトドアや山を登ることに特化した社員は一人もいないため、SOTOが大事にしているのがユーザーの声、そして登山隊のアドバイスだ。
ポケトーチのエピソードにもあるように、SOTOは積極的にユーザーの声を製品に反映することで支持を得てきた。つまり、誤解を恐れずに言うならば、自分たちのアウトドアにおける変なエゴは無い。あるのはガス器具メーカーとしての炎やガスに対する技術であり、安全面・機能面におけるプロ意識だ。
ガス器具メーカーとしてのプロ意識
長い間、炎やガスと向き合ってきたSOTO。時に私たちを癒し、時に脅威となる2面性を十分に理解し、徹底した安全面での品質向上にこだわっているのが彼らの工場だ。
燃焼器具は安全面での観点から自社工場で組み付けているという。こういった細かなパーツパーツを一つずつ作り上げていく。
少しの誤差が事故の引き金になることから、出来上がったパーツをミリ単位以下で設計通り作られているかチェック。これも一つ一つ、人の目を通して行われるというから驚きだ。
設計通り作られた部品はこうして職人の手で結合されていく。こうしたプロセスを見ると、製品を手にした時のぬくもりを感じずにはいられない。
圧巻はガス漏れのチェックの徹底ぶり。まずは水没検査。水中に入れて微かな漏れも目視で確認する。小さな気泡が漏れの合図だ。
梱包前の最後に検知炎検査。燃焼器具に小さな炎を当て、少しのガス漏れも見逃さないよう全数を検知する。設計通り作られたものを前提にしながらも、安全面の追求を怠らない。
プロのこだわりから生まれる、アウトドアの楽しさ
ガス器具は最終的には公的な検査が入り、そこで安全面でのチェックがなされるという。つまり、何も自分たちでここまでしなくても市場に出る前にフィルタはかかるのだ。
それでも、ガス器具メーカーとして安全面は確かな品質で製造する。それがSOTOのプロ意識。地道な作業であり、細かな工程を要するため大量生産能力は持てないが、安全面にこだわった工場の体制がそこにはあった。
私たちがアウトドアでボタンを押せば、当たり前のように炎が出る。調理ができて、暖をとることができる。
その当たり前の背後には、こうしたメーカーの緻密な製造過程があり、飽くなき探究心がある。私たちのアウトドアでの楽しみにはたくさんの努力が詰まっている。
炎が当たり前のように使えることに感謝し、週末もアウトドアに出かけよう。
LIFE WITH NATURE!
コースタイムの1.5倍はかかる写真大好きハイカー。登山はカメラ3台、キャンプはミニマルに、自分らしい自由なアウトドアを楽しんでいます。フィルム登山部メンバー。.HYAKKEIファウンダー&初代編集長。