松本駅から歩いて10分ちょっと。
松本城のそばに、“常念通り”という名前の小さな通りがあります。

読んで字のごとく、この通りからは松本市のシンボルである常念岳を見上げることができます。山好きにはたまらないそんな通りの一角に、居心地のいいゲストハウスがありました。『tabi-shiro(タビシロ)』です。

わたしがここにはじめて宿泊したのは、2018年春のこと。松本に出張する予定があったので、せっかくだから1泊して遊んで帰ろうと思い、インターネットで雰囲気のいい宿を探していました。そのとき、たまたま目に入ったのがこのゲストハウスだったのです。

宿のいたるところに、山のあしらい

tabi-shiroという屋号から、きっと旅好きの人がやっているんだろうなと思っていましたが、玄関を入って、「あ、ここの人は山も好きなんだな」、そうすぐに感じました。

バーラウンジの壁一面に描かれた、大きな表銀座の山脈。ガラス窓や柱にも山が描かれていたり、並べられたウイスキーボトルの隙間に雷鳥がちょこんと座っていたり。

宿のいたるところに、山のあしらい|「また必ず帰ってきたくなる場所。アウトドア好きオーナーのいるゲストハウス「tabi-shiro」/長野県松本市」の2枚目の画像

もちろん、各部屋の名前も北アルプスの名だたる名峰。カウンターにいた男性に声をかけてみると、わたしの予想は大当たり! tabi-shiroを営む小澤清和さんと智子さんご夫妻は、山に、キャンプに、スノーボードにスキューバダイビング、そして旅好きという、大のアウトドア好き。こりゃじっくり話を聞かねば!ということで、再びtabi-shiroを訪ねることにしました。

旅に出て、山の偉大さ、松本の魅力を知った

2016年春にtabi-shiroをオープンする前は、清和さんは旅行代理店に勤務、智子さんは看護師として働き、仕事の休みを使って登山や旅に出ていたという小澤さんご夫妻。

しかし、「もっと自分の好きな旅を案内したい」という想いに駆られた清和さんは、智子さんと「いつかやろうね」と思い描いていたゲストハウスを形にしました。

「わたしたちの好きな“旅”と、ここを訪れた人たちのこれからの人生の“伸びしろ”に繋がればいいなという願いを込めて、『tabi-shiro』にしました」と、智子さん。もっと多くの人に旅をしてほしい、旅から得る気づきや楽しさを感じてほしい、という想いが屋号に込められているといいます。

学生時代にバックパッカーで世界を旅していたという清和さんは、あることがきっかけで山に魅了されたそう。

「ネパールに行ったとき、向こうのアンナプルナやエベレストを見て、山めっちゃきれいじゃん!!って思ったんです。それで松本に帰ってきたら、すぐそこに山があって。それまで山に気が付かなかったんですよ(笑)。そこから松本から見える山を全部制覇したいと思って、山に登りはじめました」

“灯台下暗し”とは、まさにこのこと。県外の筆者からすると、北アルプスの玄関口が地元だなんてかなり羨ましい環境ですが、近くにあるがゆえ興味が薄れてしまうという感覚は、分からなくもありません。

「僕の好きな山(の場所)は“ジャンダルム”。でも、まだ制覇していないんです。3年くらい前に奥穂高まで行ったんですけど、高所恐怖症なんで、結局ちびって引き返してきました(笑)。槍の山頂もへばりついて登ったくらい。だからジャンダルムは永遠の憧れですね」

海外に出たことで、地元のよさに気が付いた清和さん同様、智子さんも日本や世界の各地を旅するなかで、「360度山に囲まれている松本の景色はあまりない」と、松本の魅力を再発見。長らく就いていた仕事を辞めてゲストハウスをスタートしてから、松本の見え方が変わっていったといいます。

「友達の家に行くような気分で来てほしい」

松本市内の空き物件を20軒以上まわって出会ったというこの古民家は、もとは旅館だった場所。長い間空き家になっていたそうですが、半年かけて猛スピードで大改築。できるところは自分たちで補修し、新しい命を吹き込んでいったそう。

「友達の家に行くような気分で来てほしい」|「また必ず帰ってきたくなる場所。アウトドア好きオーナーのいるゲストハウス「tabi-shiro」/長野県松本市」の4枚目の画像

ゲストハウスとして歩みはじめて、今春で3年目。
当初は「いつもと違うわたしに出会う場所」というコンセプトで、ひとり旅をしたことのない方でも訪れやすいように考えていたそうですが、実際にはハイカーやファミリー、海外の方など、幅広い人たちが利用してくれているそうで、「友達の家に行くような感じで、気軽に来られる場所」というのが今のテーマなんだとか。

「自分たちが旅をしているときに感じたことは、地元の人たちが普段行く店に行ったり、何気なく遊んだりする1日をなぞることが、旅をしてきた人には特別な一日になるということ。地元のことを知っている人、おすすめの場所を紹介できる人がいるだけで、旅の満足度がすごく変わると思ったんです。だから、ここもそういう場所でありたい。気軽に来て、気軽に話せる場にしたいなって最近思っています。tabi-shiroのスタッフみんなで、松本の街を伝授したい」

確かにtabi-shiroへ行くと、お手製の散策マップを渡してくれたり、おいしいごはんやさんを詳しく教えてくれたり、とにかく親身。実際わたしも、土地勘のない知らない街に来たはずなのに、地元の人が知っているディープな情報を教えてくれるので、観光地だけじゃない、たくさんの松本の魅力を知るキッカケになりました。地元の情報は、地元の人に聞くのがイチバンです。

「友達の家に行くような気分で来てほしい」|「また必ず帰ってきたくなる場所。アウトドア好きオーナーのいるゲストハウス「tabi-shiro」/長野県松本市」の8枚目の画像

「山が好きな人は、ひと夏の間に何度も来てくださることもあります。ある日、あれ、個人のお客さんがまた3人揃っているなって思ったら、じつは“前に泊まったときに仲良くなって一緒に登りに来たんです”というお客さんで。ここをきっかけに繋がって、また来てくれるのが本当に嬉しい」と清和さんは話します。

智子さんは、「知らないお客さん同士が仲良くなっていっしょに飲みに行く姿を見ているだけで、あ~やってよかったなって思います」と、tabi-shiroを通して人と人とが繋がっている姿を目にするたび、やりがいを感じているそう。

なかには、こんな驚きのエピソードも。

「今度、tabi-shiroで出会って結婚することになったカップルの三次会をここでやることになったんです。ふたりから報告を受けて、しあわせな気持ちになりました」

「友達の家に行くような気分で来てほしい」|「また必ず帰ってきたくなる場所。アウトドア好きオーナーのいるゲストハウス「tabi-shiro」/長野県松本市」の13枚目の画像

人と人を繋ぐ場所。旅人と松本を結ぶ場所。

旅が好きで、旅人も好きで、仕事を辞めて、大好きな松本の街に自分のゲストハウスを作りあげた小澤さん夫妻。近いうちに「tabi-shiro登山部を作りたい」とも話しており、もしそれが実現したら、もっともっと交流が生まれて、ゲストにとっても小澤さん夫妻にとっても、楽しくなることは間違いありません。

山や旅の入り口として、またはふらっと息抜きする場所として。温かく、心地いい。tabi-shiroはそんな場所でした。

***

もうすぐグリーンシーズン。冬のあいだ眠っていた緑が一斉に芽吹き、小鳥たちがあちこちで賑やかに歌いはじめ、山歩きがきもちよくなる季節の到来です。

松本は、北アルプスの玄関口。ゴールデンウィークはまだまだ雪の残る登山になりますが、7月にもなれば雪解けが進み、多くのハイカーや観光客を迎え入れてくれます。北アルプスへ行く際は、ぜひ松本の街歩きとセットで計画を組んでみてはいかがでしょう。tabi-shiroを拠点にすれば、数十倍楽しい旅になるはずですよ。

人と人を繋ぐ場所。旅人と松本を結ぶ場所。|「また必ず帰ってきたくなる場所。アウトドア好きオーナーのいるゲストハウス「tabi-shiro」/長野県松本市」の4枚目の画像
松本ゲストハウス『tabi-shiro』

<住所>長野県松本市城西1-3-6
<アクセス>JR北松本駅から徒歩5分、JR松本駅から徒歩11分
<時間> CHECK-IN 16:30~22:00 / CHECK-OUT ~10:00
<ウェブサイト> https://tabi-shiro.com/
<Facebook> https://www.facebook.com/tabishiro2016/
山畑 理絵

春夏秋冬、日本の美しい山を求めて歩きまわっています。

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この記事を書いた人

山畑 理絵

音楽プロダクションの制作、アウトドアショップの販売員を経てライターになる。のんびり日帰りハイクからガッツリテント泊縦走、トレイルランニング、ボルダリング、スキーと四季を通してフィールド三昧。アウトドア媒体をメインにライター活動をする傍ら、アロマテラピーインストラクターとして「山とアロマ」をテーマに、神出鬼没なワークショップを展開中。

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