日本三大名泉の地で、ブナ林の頂に待つ大展望『簗谷山』
下呂市といえば日本三名泉に数えられる温泉地「下呂温泉」の印象が強いですよね。そもそも日本三名泉とは、徳川家康から四代に渡って江戸の将軍に仕えた林羅山(はやし・らざん)という儒学者によって数えられた温泉のこと。ほかのふたつは、兵庫県の有馬温泉、群馬県の草津温泉です。
しかし、温泉地には“山”がつきもの。やはり下呂にもありました、素晴らしい名低山が。その名も簗谷山(やなたにやま)。木曽御嶽の雄姿が眩しい大展望の頂まで、片道2時間ほどの登山です。
飛騨金山の森キャンプ場の奥から、簗谷林道の突き当りまで進むと、車6~7台のスペースと簡易トイレが備わる駐車場があります。ここからは「南尾根ルート」と「ブナの木ルート」に分かれます。ぼくは、登りを「南尾根ルート」で、下りを「ブナの木ルート」で歩きました。
南尾根ルートは、最初の登りはちょっと頑張る道。ここで高度を稼ぐ分、後半は気持ちのよい尾根歩き。踏み固められた道はわかりやすく、落葉が進んだ明るいブナの道をぐんぐん登ります。
途中、「小鹿の涙」と呼ばれる小さな滝に出合います。静かに流れる水の音が心地よく、すぐ傍らには、日本の山の神・大山祇神が祀られています。
鹿の多いこの山中で、猟師が犬を連れてここに鹿を追いこんで仕留めたのだそう。親を失った子鹿がここで涙を流したことから、そう呼ばれているようです。
やがて、標高1213mの簗谷山に到達。山頂はススキに囲まれながらも、大きな展望があります。地元のハイカーも歓声を上げるほどの素晴らしい眺め。
しかし、それ以上の絶景が待っているのが「岳美岩」。その名のごとく、周囲の山々を従えるかのように聳える木曽御嶽があまりに美しい。切れ落ちた絶壁の下に目を向けると、果てしない山並みが続いていいて、まるで海原のよう。しばらくは言葉もなく、ただただ眺めるばかり。
下山は「ブナの木ルート」へ。しばらくは明るいブナ林を歩きます。
やがて、陽射しの届かない谷道となり、沢伝いに下りていきます。道が不明瞭なところもありますが、慌てずに踏み跡とテープを目印に進みましょう。
紅葉が賑やかな山中は、歩くだけで抜群の気持ちよさ。木曽御嶽の美しさ、彩り鮮やかなブナの山道が、下山後もしばらく瞼に焼き付いています。
温泉だけではない、自然景観の宝庫、下呂市。低山歩きも楽しい地域です。
所在地:
岐阜県下呂市金山町弓掛
駐車場:
簗谷林道の駐車場
施設設備:
簗谷林道の駐車場に簡易トイレ
WEBサイト
http://www2.city.gero.lg.jp/HP/mori/kairou/10yanatani.pdf
http://www.gero-navi.jp/spot_244.html
低山トラベラーです。山旅は知的な大冒険!
物語の残る低山里山、ただならぬ気配を感じる山岳霊峰を歩き、日本のローカルの面白さを探究。文筆と写真と小話でその魅力を伝えている。NHKラジオ深夜便「旅の達人~低い山を目指せ!」レギュラー、著書に『低山トラベル』『とっておき!低山トラベル』(二見書房)がある。自由大学「東京・日帰り登山ライフ」教授、.HYAKKEIオフィシャルパートナー。