【徹底ガイド】3時間で歩く、初心者向け熊野古道おすすめコース
「歩くと、人生が変わるよ」
そんな声をたびたび聞いては、一度は歩いてみたかった熊野古道。
でも、熊野古道って実はよくわからない。準備はどの程度必要? おすすめのコースは?そんな疑問を徹底解明しつつ、初心者向けルートをご紹介します。
もくじ
これだけは知っておきたいこと
熊野古道って何?
熊野古道とは、「熊野三山」を詣でるために開かれた道のこと。「熊野三山」とは、熊野本宮大社、熊野那智大社、熊野速玉大社の三社のことを指します。“三山”といっても、山ではなく、神社のこと。つまり、これらの神社をお参りするためにできた、お祈りの道なのです。
院政期以降には上皇や貴族がこぞって参拝し、「熊野へ行くと不思議な力を授かる」として庶民の間にも「熊野詣(くまのもうで)」が広がっていきました。江戸時代になると、さらに多くの民衆が詰めかけたことから、その景観は「蟻の熊野詣」とも言われたほどです。
ルートはいくつある?
三重、奈良、大阪、和歌山と、あらゆる地から熊野へつながる道があります。ほとんど舗装路になっている場所もありますが、一口に「熊野古道」といっても、実は複数あるのです。
1、熊野田辺から本宮を目指す「中辺路(なかへち)」
2、伊勢から続く「伊勢路(いせじ)」
3、高野山から続く「小辺路(こへち)」
4、吉野から続く「大峯奥駈道(おおみねおくがけみち)」(※1)
5、川の参詣道「熊野川」
6、大阪〜熊野田辺を結ぶ「紀伊路(きいじ)」
7、熊野田辺から海岸線沿いをつたい、那智まで続く「大辺路(おおへち)」
熊野古道は、伊勢の神道、吉野の修験道、高野山の密教など、あらゆる宗教と熊野を結びます。また、神仏を信じる者に限らず、清らかな者、そうでない者も区別せず受け入れる熊野は「蘇りの地」とも呼ばれてきました。これらのほとんどは2004年に世界文化遺産となった「紀伊山地の霊場と参詣道」にも登録されています。
おすすめルート
一番メジャーなのは「中辺路」
上皇や法王の熊野御幸にも使われた「中辺路」は、熊野神域の玄関口である田辺から、熊野本宮大社へ続く最もメジャーなルート。滝尻王子から約40キロ、最短1泊2日(ゆとりをもって歩くなら2泊3日)のコースが一般的です。
「発心門王子(ほっしんもんおうじ)」からスタート
今回は熊野古道をしっかり味わえて、比較的気軽に歩ける「発心門王子」からの6.9キロ、約3時間の行程をご紹介します。
発心門王子バス停を下車し、神社でお参りを。振り返ると、ほとんどの人が誤って猪鼻王子方面へ歩いて行くのが見えたので、慌てて呼び止め、地図を広げてコースの説明をすることに。発心門王子は道を間違える人が多いらしいのですが、まずは舗装された道を下っていくのが正解です。
ちなみに発心門とは、「仏の道に帰依する心を発する道(悟りの心を開く入り口)」という意味。
のどかな山村風景。聞こえてくるのは、風の音と、鳥の声、向こうでおじさんが草刈りをする音だけ。目の前にいた欧米人は、日本の田舎風景に大感激して、しきりに撮影をしていました。
水呑王子は、かつて弘法大師が杖をたたくと水が湧きでたことからそう呼ばれている、とのこと。休憩所やトイレもあります。
山村を歩いていると、無人販売所がちらほら。つい覗いてしまう…。地元産のうめぼしをおみやげにゲット。
山村に出ては、森に入る…の繰り返し。このコース、ほとんど上り坂ナシ! 地元では「お姫様コース」とも呼ばれているそう。すれ違う欧米人のなかにはサンダルで歩いている強者?も。熊野古道や本宮大社は、「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン」で3つ星評価であるためか、世界文化遺産のためか、欧米人観光客が非常に多いのです。(京都などに比べ、アジア人観光客はあまり見かけません)。
「熊野古道といえば、ひたすら杉木立と石畳を歩く」というイメージがありますが、こんな休憩処も! 伏拝王子近くの「伏拝茶屋」では、地元の有志のおばちゃんたちが元気に働いていました。
無農薬で栽培した地元のしそで作る「しそジュース(200円)」。天然の甘さが口に広がり、喉の渇きがすっきりと癒され、疲れが一気に吹き飛びました。(このジュースを飲むために訪れる価値があるくらい美味しい!)
ちなみに「伏拝王子」の「伏拝」とは、念願の熊野本宮大社を初めて目にして、感激とありがたさのあまりに拝み伏したことからその名前がついたそう。ゴールまでもう少しです。
「ちょっとより道展望台」と印された方面へ登っていくと、眼下の向こうに、「大斎原(おおゆのはら)」の大鳥居が見えます。いよいよラストスパート。
熊野本宮大社へ到着。祭神は、古事記でもおなじみの家津美御子大神(けつみこのおおかみ:スサノオノミコト)です。
巨大な鳥居に圧倒されつつ、大斎原(おおゆのはら)へ。今の本宮は、明治22年にこの地を襲った大洪水によって、移築されたもので、もともとは川の中洲にある大斎原に鎮座していました。ここは熊野の神である「熊野坐神(くまのにますかみ)」が舞い降りた地。中は撮影禁止となっており、非常に濃厚なご神気で満ちています。
古人は、どれほどありがたい想いで、気の遠くなるような旅をしてきたのでしょうか。今回は最も短いコースを歩きましたが、より難易度の高い道をしっかり歩いてみたい気持ちになりました。次回はまた別のルートもご紹介したいと思います。
麓の神社で参拝してから、山頂を目指すのが好きです☆
ライター。アウトドア誌、評論誌等で執筆。北アルプスの山小屋に勤務、のち3ヶ月かけて屋久島中のトレイルを練り歩く。最近は島登山にハマっています。