• インタビュー
  • キャンプや登山に関わる人々へのインタビュー記事一覧です。自然に魅せられたアウトドアフリーカー、自然と共に生きるアスリート、熱い信念を持つオーナー等、その想いやヒストリー、展望など、写真と共に丁寧にお伝えします。今後の人生の選択肢のひとつとなるヒントが、見つかるかもしれません。
  • HOME
  • 記事一覧
  • インタビュー
  • ひとりのために、丹精を込めてひとつの製品をつくり上げる。アトリエブルーボトルがめざす、モノづくりとは―。

ひとりのために、丹精を込めてひとつの製品をつくり上げる。アトリエブルーボトルがめざす、モノづくりとは―。

東京都杉並区の閑静な住宅街に、そのアトリエはあった。
トビラには「アトリエブルーボトル」の文字。

2013年、辻岡慶さんが奥さまの里奈さんと立ち上げたアトリエブルーボトルは、企画、デザイン、縫製、製品テスト、ユーザーへの発送業務、すべての作業をふたりが分担して行っている。

軽量で使い勝手のいいバックパックをはじめとし、そのバックパックとデザインを統一させたサコッシュ、ウォレット、それにヤクウールの靴下。
自分たちが“本当に使いたいと思うもの”、“デザイン性と高機能性が両立しているもの”をモットーに、自らデザイン・縫製を行い展開しているブランドだ。

今年4月に完成したばかりというアトリエは設計から携わり、ふたりのこだわりが詰まる

今年4月に完成したばかりというアトリエは設計から携わり、ふたりのこだわりが詰まる

凝ったデザインを具現化するのはとても難しい。でも、僕はそれを実現したい

アトリエブルーボトル主宰の辻岡慶さん

アトリエブルーボトル主宰の辻岡慶さん

――おふたりは元々、かばんデザイナーとして活躍されていたと聞きました。

辻岡:はい。僕は婦人用かばんのデザイナーとして、彼女は紳士用かばんをメインに活動していました。ファッション業界のかばんというのは、循環がとても早いんです。毎年新しいデザインを生み出してはサンプルを作って展示会をし、製品化する。世の中で売れるものを作っていかなくてはならない。だから、同じデザインのかばんというのは、1年で消えていってしまうんです。そういったサイクルの早い仕事をしていく中で、「長く愛用してもらえるかばんを作りたい」という思いが自分の中で芽生えていきました。

左が自分用に作ったモデルで、右が現在製品化している「PAC-03」。デザインと素材の仕様変更は多少あるが、当初から完成度の高いデザインということが見て取れる

左が自分用に作ったモデルで、右が現在製品化している「PAC-03」。デザインと素材の仕様変更は多少あるが、当初から完成度の高いデザインということが見て取れる

それで4年前の2012年、仕事の合間を縫って、コツコツと自分の登山用バックパックを作ってみたんです。もともと僕たちは山登りが好きだったんですが、自分が欲しいなと思うバックパックになかなか出会えなくて。

で、そのときに作ったモデルが「アトリエブルーボトル」立ち上げのキッカケになりました。

――辻岡さんには縫製の技術も?

辻岡:デザイン専門の学校に通っていたときに授業で縫製もやっていたので、ふたりともある程度の知識はありましたね。でも、デザイナー時代は革をメインに扱っていたので、今製品に使っているようなナイロン生地に関してはまったく知識がなくて。そこは独学で学びつつ、立体的に加工していった感じです。

製品のメインマテリアルとなるX-PACなどは、アメリカから独自で輸入している

製品のメインマテリアルとなるX-PACなどは、アメリカから独自で輸入している

――デザインするにあたり、こだわっている点・苦労した点はありますか?

辻岡:「デザイン性」と「使いやすさ」の両立はマストだと思っているので、それを追求しました。

でも、その両面をデザインに落とし込むのってとても大変で……。カッコいいけど、いざ使ってみると使いにくい。今まではつくりやすさを優先してファッションかばんをデザインすることも多かったので、僕たちアトリエブルーボトルの製品は、使いやすさを極めつつ、高いデザイン性を維持することをモットーとしています。

登山歴12年の辻岡さん自らがテスターとなり、積極的に山で使い勝手を検証する。実際に歩いているときや下山後に「こういうのがあったらいいなぁ」とアイデアが浮かぶのだとか。写真=辻岡さん提供

登山歴12年の辻岡さん自らがテスターとなり、積極的に山で使い勝手を検証する。実際に歩いているときや下山後に「こういうのがあったらいいなぁ」とアイデアが浮かぶのだとか。写真=辻岡さん提供

たとえ非効率でも、“その人のための1本”をつくる

――そのほか、こだわりの点はありますか?

辻岡:とても非効率なことは分かっているんですが、僕たちのやり方は、オーダーが入ったら、その1点だけを0から完成するまで集中して作ります。

たとえば、10人分(10個分)のオーダーがあったとしたら、1の工程を10回こなし、2の工程をまた10回こなす方が効率はいいんです。生地によってミシンの設定も変えていますから、その手間も省けますし。

でも僕らは、効率よく数だけをこなす作り方をしていません。●●さんのためだけに、その1本をつくりあげる。完成したら、次の▲▲さんのためだけに、またつくりあげていく。

――それはどうしてですか?

辻岡:“この1点は、あなたのためだけに作りました”という、作り手側の想いを込めたい。それに、イマドキそういう非効率な作り方をしているところって、全然ないじゃないですか。もちろん、ビジネスとして効率のよさを優先させることは大切なことです。でも、僕たちはデザイン含め、ほかがやっていないようなことをやっていきたい。そう思っています。

おもにバックパックは辻岡さん、サコッシュは里奈さんが担当。製品によっては丈夫さを保つために2~3回縫うこともある。手にしたユーザーが心地よく使えるよう、作業の丁寧さもぬかりない

おもにバックパックは辻岡さん、サコッシュは里奈さんが担当。製品によっては丈夫さを保つために2~3回縫うこともある。手にしたユーザーが心地よく使えるよう、作業の丁寧さもぬかりない

ほかとは違う“アトリエブルーボトルらしさ”を大切に

――秋に向けて、新製品のリリース予定はありますか?

里奈:「ハイカーズ サコッシュ」のミニ版が出ます! 日々使っていくなかで、女性には少し大きい気がしたので、現行品よりも少し小さいサイズにしました。あと、サコッシュに入れるものが少ない人にもおすすめです。

真ん中にあるのが今秋リリース予定の「ハイカースサコッシュ ライト」。女性が提げても大きすぎない、小ぶりなサイズ感に仕上げている

真ん中にあるのが今秋リリース予定の「ハイカースサコッシュ ライト」。女性が提げても大きすぎない、小ぶりなサイズ感に仕上げている

そのほか、ヤクウールを採用し、足袋をもとにデザインした「ハイカーズソックス」のロング丈バージョンを10月にリリース予定。辻岡さんが度々足を運んでいる八ヶ岳連峰の刺繍が入っている

そのほか、ヤクウールを採用し、足袋をもとにデザインした「ハイカーズソックス」のロング丈バージョンを10月にリリース予定。辻岡さんが度々足を運んでいる八ヶ岳連峰の刺繍が入っている

――最後に、今後の展望を教えてください。

辻岡:立ち上げから早3年。これからも外注には頼らず、高いクオリティーと、自分たちらしいデザインを大切にやっていきたいと思っています。

今日もこのアトリエから、またひとつ、ひとつと、
アトリエブルーボトルの製品は、ふたりの手によって大切に命を吹き込まれている――。


【今後の出展予定イベント】
・2016/9/24-25 「ごてんばアートクラフト」@御殿場中央公園
・2016/10/16 .HYAKKEI主催「世田谷ものづくり’山’学校」@IID 世田谷ものづくり学校 2F Studio
・2016/12/2~4「展示受注会」@目黒マルセB1ギャラリー

*アトリエブルーボトル
http://www.atelierbluebottle.com/index.html

関連記事一覧