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八ヶ岳の美しい自然とその実情を探る。『山の日サミット』に向けて実際に登ってきた!

先日.HYAKKEIでも告知した『山の日サミット』。
今の山の問題点に向き合い、未来の改善に向けてみんなで考えるこのイベントは、いよいよ今週末に開催されます。

それに先立ち八ヶ岳の実情をお届けすべく、当日の登壇者である浦野さんご協力のもと、実際に八ヶ岳に登ってきました。

浦野さんのご紹介

山の日サミット当日は八ヶ岳の環境問題をテーマにパネルディスカッションが開催されます。その中のご登壇者のお一人が、硫黄岳山荘グループ代表の浦野岳考さんです。

実際に浦野さんにガイドをして頂きながら、八ヶ岳を歩きました。

溢れる美しさゆえに愛され続ける八ヶ岳

八ヶ岳は長野県と山梨県に位置する連峰です。

どこの景色を切り取っても、隈なく自然が溢れていて、その美しさについつい見惚れてしまう程。

山頂からの景色ももちろん魅力的ですが、山道に差す木漏れ日や、亜高山帯針葉樹、小さなコケも登山者から長年愛される素晴らしき八ヶ岳を構成する要素です。

年々根深さを増す、シカによる木々の食害

そんな美しい八ヶ岳を登っていると、表皮が剥がれている木がチラホラ。

浦野さん:もちろん天然で枯れてしまう木もありますが、ここ数年はシカによる食害が増加しています。木は樹皮によって養分や水分を上に吸い上げますので、それが食べられてしまうと立ち枯れになり、折れてしまいます。

立ち枯れによる樹木の弱体化は、健全な森林状態ではなくなってしまうのと同時に、土砂崩れの害も被ります。

弱った木々の土砂が崩れることによって、山腹が崩壊することに繋がるのです。そうなると山という資産自体がなくなってしまいます。

シカによる食害は、高山地帯の貴重な植物にも及ぶ

これは「コマクサ」という八ヶ岳を代表する貴重な高山植物です。

毎年夏に開催される「硫黄岳山荘コマクサ祭」には150名以上登山者が集まり、その美しき植物の存続と山の環境保全を願います。

そんな尊きコマクサにも実はシカによる食害被害が及んでいるそうです。

浦野さん:シカは山へ山へと追いやられ、食べるものを求めて上へ上へと登ってきました。

私がシカの食害対策に危機感を感じたのも、山荘の裏にある高山植物が急に咲かなくなってしまったことに始まります。

八ヶ岳の高山植物は起源をたどると氷河期にまで遡ります。北極圏からやってきた植物がそのまま高山で育ち、高山植物として今も残っているのです。

そう考えると1万年も生き長らえている貴重な植物ですが、それがほんの4~5年でなくなりかけてしまったのです。

まずは自分たちにできることから。食害対策用のネットを張る

浦野さん:他人事ではないことではないことに気付かされた私は、「まず自分たちにできることは何なのか」と考えました。

そして第一歩として、硫黄岳山荘周辺のコマクサをはじめとする高山植物を守るためのネットを張りました。

このネットは約1km、山道に沿って高山植物を守っていますが、まだまだ足りません。

場所ごとに優先順位を付けて少しずつ手作業で守備範囲を広げています。

最前線で山の環境保全に取り組む硫黄岳山荘グループをご紹介

硫黄岳山荘グループでは上述のようなシカの食害対策だけでなく、八ヶ岳の環境保全として様々な問題に取り組んでいます。

ここで実際の現場の様子を山荘の魅力とともにお届けします。まずは硫黄岳山荘。

こちらは硫黄岳山荘自慢の水洗トイレ。山小屋とは思えない綺麗さです。

シカの食害が大きな問題になる前は、し尿処理も山の環境問題として上がっており、そこにもいち早く着手したそうです。

小屋の裏には浄化槽があります。

凍結にも強く、軽いスチール製の浄化槽を用いることでヘリコプターでの運送負担を軽減しているそうです。

水洗トイレだけでなく、なんとシャワーまで。この標高でシャワーを浴びれるなんて、なんとも嬉しい設備です。

こちらは同じく硫黄岳山荘グループの山小屋、夏沢鉱泉。なんとこちらの山小屋では温泉に入れるのです。

桜平登山口から約30分の夏沢鉱泉。
こちらに泊まって翌朝山頂を目指すのがおすすめです。

もちろん硫黄岳から下山した後に、この夏沢鉱泉でひとっ風呂も浴びるのも堪りません。

また、食事もとても充実しています。この日頂いたのは、猪鍋や地元の野菜を使った漬物など。

山荘直営で畑も運営していて、そこで採れた野菜を食すことができるのです。

もちろん夏沢鉱泉でも山の環境保全への取り組みは行われています。

こちらは水力発電機。夏沢鉱泉の横を流れる川の水力で、山荘の電力をまかなっています。

環境への取り組みだけでなく、登山者へとてつもない満足感と心地よさを提供してくれるどちらも素晴らしい山小屋です。

山の環境、自然に対して改めてできることを考える

シカの食害対策と、硫黄岳山荘グループとしての環境への取り組み、そして山荘の素晴らしさ。

最後に山の日に向けて、浦野さんからコメントを頂きました。

浦野さん:山の日サミットを通じて、多くの方に山の現状を知って頂きたいです。

元々関心がある方には違った視点を、まだ関心がない方には興味を持つキッカケを、与えたいと考えています。

山小屋だからこそ緊急度高く意識して、山の環境保全に取り組んでいます。

そういった実状を知った上で、様々な視点や興味を持つキッカケを多くの方々に持って頂けたら嬉しいです。

この美しい山をいつまでも、永遠に。

今年から制定された山の日を機に、いつもと違った角度から環境について考えてみてはいかがでしょうか。

24日、日曜日に迫った山の日サミット。
「僕らにできること」を一緒に考えましょう!

そしてその一歩として、八ヶ岳森林調査隊への参加者&サポーター募集しています。

美しい自然を守るための1つの方法として、こちらも是非チェックしてみて下さい。

*山の日サミット
http://www.yama-summit.com/

*八ヶ岳森林調査隊への参加者&サポーター募集
https://www.makuake.com/project/yamanohi/

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