• キャンプや登山に関わる人々へのインタビュー記事一覧です。自然に魅せられたアウトドアフリーカー、自然と共に生きるアスリート、熱い信念を持つオーナー等、その想いやヒストリー、展望など、写真と共に丁寧にお伝えします。今後の人生の選択肢のひとつとなるヒントが、見つかるかもしれません。
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【TRIPATH PRODUCTS】“タノシメタル”信頼と遊び心で広がり続ける世界観

金属加工技術をベースとした、メタル製品ブランド

TRIPATH PRODUCTS(以下、トリパスプロダクツ)は、2019年に北海道で生まれたメタルキャンプギアのブランド。定番となった焚き火台「GURU GURU FIRE(以下グルグルファイヤ)」から始まり、ギアハンガーやテーブルなど幅広く商品展開を行っている。

製造責任者中山さん(左) ディレクター片山さん(右)

主に国内のキャンプショップへの展開となっているが、「BEAMS」「UNBY」「GOOUT」と大型のコラボもおこなっている。また直近だとアジア圏からの問い合わせもあるそう。

トリパスプロダクツの特徴は、そのデザイン。画一的なプロダクトが多いキャンプギアの世界だが、トリパスプロダクツのプロダクトは鹿の角や骨のような形状の商品が多い。それが人気となっているわけだが、そんな商品がキレイにハンディサイズまで収まってしまう。

単純な金属の切削や溶接の技術だけだと、到底実現しえないその商品力の源はどこにあるのか。

今回、北海道の石狩工場に訪問してきました。

母体は北海道発、製造×テクノロジーの金属製品製造企業

トリパスプロダクツの製造販売を手掛ける、株式会社トリパスは1946年創業の老舗企業。技術力と生産体制で消防車や除雪車、大型漁業用冷蔵庫などの特殊板金で業績を上げてきた企業である。

年間300社のべ7万パーツの切削・溶接・塗装・組立に至るまで、たった80名の社員ですべてを請け負う。人・機械のキャパシティを24時間体制で無駄なく稼働させる独自の生産体制と技術があるからこそ成しえることなのだが、トリパスプロダクツの根底には約80年の歴史で培ってきた盤石の基盤がある。

そんな技術力の「堅い」会社が、アウトドアブランドの中では異色なプロダクトブランドを始めることになったのか?ブランド運営の裏側や歴史を紐解いていきます。

キーワードは「タノシメタル」金属加工の技術で楽しい未来を創る

今回、インタビューさせてもらったのはディレクターの片山さんと、製造責任者の中山さん。トリパスは金属加工事業と兼業で行っており、片山さんは営業部長で中山さんはそちらでも製造責任者を務めている。

製造責任者中山さん(左) ディレクター片山さん(右)

-印象的なデザインが特徴のトリパスプロダクツ製品ですが、どの工程まで自社で生産を行っているのでしょうか

「切削機から溶接工、塗装工まで自社で完結させています」

-そうなのですね

「ですので製品開発においても、朝にサンプル見てちょっと違うなと思ったら、修正して夕方には上がってくる。頭のもやもやを確かめるために、すぐ制作できるのは強みかもしれないです。実質タダに近いコストでスピード感をもって作れています。」

-イチから製品を作ろうと思うと、どれくらいの期間で仕上げるのでしょうか

「設計図があればサンプルは早いと2時間で上がります。設計図からとなると長いプロダクトでも数か月くらいですかね。」

-なるほど。製品を作るときの基準についておしえてください

「結局、コンセプトにもある“タノシメタル”なんですよ。金属加工で楽しんでもらえる唯一無二のもの。その軸から外れるものはやらない。こういう、世界観はずっと持ちながらやっています。金属って堅いものなんで、生き物みたいにしたいなと有機的な形にしたりとか個体差が出るような形は意識して作っています。」

「大手さんだと、ワンタッチですぐ組み立てられる。我々は真逆。キャンプなんてせかせかやっても仕方ないじゃないですか。ゆっくり組み立てることも片づけることも楽しんでほしいと思っています。我々世代でいうと、ゾイド。男のそういうの好きじゃないですか!トランスフォームしていくもの。」

-そうですね!グルグルファイヤで特にこだわられた部分はどこですか

「ここの片持ち梁(かたもちはり)のところで重量を支えられるのは相当こだわってる。耐荷重のテストも歪みの試験も行っています。薄くて軽くてベコベコになるくらいなら重量を持たせた方がいいなと。」

方内張りというのは、焚火台のタテの支柱部分。

「縦形薪置きにしたのも、シースルーで炎を見るっていうのが一つのこだわりでした。また風が強い日でも焚き火したいっていうので、風防をオプションで造りました。また芝生のダメージを防ぐために距離を取ったり、炭を簡単に捨てられるように炭受けをつけたりとか。蓋も部品をつけると薪置台になったりだとか。」

-グルグルファイヤは製品化するのどれくらいかかったのですか

「これはゆっくりしていました。納得いくまで、実際途中に止まったりとかも含めて、半年以上ですかね。」

会議室にはグルグルファイヤの試作品が並ぶ

既存のプロダクトについては随時修正を行っていっている形ですか

「いえ、サイズ展開を増やすくらいです。あとはユーザーさんと会う機会もあるのですが、皆さんから拡張性の高さの評価をうけます。なのでユーザーさんからのお声をいただきながらオプションパーツを作っていくことも多いです。」

-新規のプロダクトについてはどのように生まれるのでしょうか

「それぞれですね。ツノスタンドについては、MTGをしていたスクラップ置き場の端材から生まれた商品です。笑」

ツノスタンド

「普通のモノは作っちゃいけない感じになってきています。笑 最近出したドリップアンドファイヤは、ドリッパー兼ゴトクになります。」

ドリップアンドファイヤ

-商品化にGOを出すときは皆で納得いくまで議論して進めるのでしょうか

「基本的にはそうしてます。お相手がいるコラボなどの場合は、納期などはありますが、お相手がいない場合は自分たちの都合でつくれるのでゆっくりやってます。」

まずはできることからやってみる。自然発生的に生まれたブランド

-トリパスプロダクツはどんなきっかけで生まれたのですか

「自然発生的に生まれました。もちろん、製造業ならではの後継者不足や人手の問題などもあるのですが、100%下請けの会社って常に安定しているとは限らない。そこで見てた活路がトリパスプロダクツでした。」

-はじめから、今のラインナップは計画されていたのですか

「作ろうとしたものでいうと、70~80候補ありました。産業系の展示会で公開すると決めたけど、何の商品を出すか決めてなかった。そこで架空のアウトドアブランドを立ち上げたらどうなるだろうとおもったんです。で、実際出展してみたら、まだ価格も発売もしていないブランドに一番人が群がった。ロゴとかもスマホで作って出したんですけどね。笑 世の中が、こういうのを求めてるとわかったのがこの時でした」

展示会当時の写真(トリパスプロダクツご提供)

-その時に展示された商品で今も発売しているものはありますか

「この時から商品化に至ったのはグルグルファイヤの原形のモノと一部のモノだけです。」

-そうなのですね、そもそもなぜキャンプギアだったのですか

「みんな若いころから北海道の自然に触れているので、抵抗はなかったんです。あとは近くにあるアウトドアショップに焚き火台など見に行ったけど当時、そんなに種類もなかった。だから先入観なく試作をつくれたと思います。グルグルファイヤはみんなでパーツ1つとっても吟味して作りました。」

-そのあとはリリース迄どのように進めたのですか

「サンプルを作っては、お店に置かせてもらって、反響を聞いて。それを繰り返していけるなと思ったタイミングでブランドをリリースしました。」

コンセプトとプロダクトはしっかり尖っている。ただ人気の秘訣はそれだけではない。盤石の生産やリリースまでのニーズ検証など、高い守備力がその成長を下支えしているのだと思った。

「タノシメタル」の精神を様々な分野へ

今後の展開を伺ったところ、予想外の答えが返ってきた。

「タノシメタルの世界観を拡大していきたいと思っています。ですが、このビジネスで10億100億のビジネスにしていくつもりはないです。ものづくりにクリエイティブをしっかり融合するために、R&D棟を建設しています。今後は、遊具や遊園地も作りたい。すべてがタノシメタルかが判断基準になっています。」

建設中のR&D棟

市場をどう攻めるか?ではなく、あくまで自分たちの技術が中心の発想。その技術が役に立つのであれば「タノシメタル」の精神はどこまでも広がっていくのだろう。取材を通じてそう感じた。

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