おいしくて、心もはずむ。山好きが仕掛ける“山小屋バル”

西荻窪駅を降りてすぐ目の前、呑み屋横丁の一角に、ずっと行きたかった“ヒュッテ”があります。横丁に軒を連ねるたくさんの呑み屋なかで、ひときわおしゃれな雰囲気を放つ外観。その名は『西荻ヒュッテ』。

おいしくて、心もはずむ。山好きが仕掛ける“山小屋バル”|「横丁の“山小屋”でグイっと乾杯しましょ。山好きオーナーのいるお店『西荻ヒュッテ』」の2枚目の画像

西荻ヒュッテは、とにかくアウトドアが大好きな人たちの集合体。店長をつとめる幕田美里さんも、そのおひとり。パートナーに誘われて行った景信山がきっかけで、山歩きの楽しさに気が付いたそう。

「わたしはもともとアウトドア派じゃなかったんですけど、誘われて行ってみたらすごくおもしろかったんです。手ぬぐい欲しさに、お店の常連さんと金峰山小屋へ行ったこともありました。ごはんとワインがおいしいって聞いていたので、それもすごく楽しみで。そういったワクワクがあるとやっぱり山に行きたくなりますね」

「今ではキャンプも好きです。道の駅で野菜を調達したり、市場で魚や海産物を手に入れたり。現地の食材でキャンプごはんを考えるのがとにかく楽しくって」

現在の西荻ヒュッテには、もうひとり店長さんがいます。真﨑まりあさんは、畑をやりたくて西荻窪から裏高尾にお引っ越ししたそう。

「山のそばの暮らしは最高ですね。家が川のそばなので、水の音だったり、鳥のさえずりだったり、すべてが気持ちいいんです」

真﨑さんは毎朝、高尾産の豆腐や食材などを調達して西荻ヒュッテに出勤し、アウトドアで食べたくなるような料理を考えています。釣りが好きで、カワハギを狙いによく海へ出かけているんだとか。

西荻ヒュッテが誕生したのは、2016年のこと。西荻ヒュッテの発起人であるグラフィックデザイナーの長内研二さんが大の山好きで、「街の中、横丁の中に、山小屋のようなホッとできる空間があったらいいな」との想いでお店をプロデュースしました。

「はじめての登山は丹沢の塔ノ岳だったんですが、真夏だったこと、山小屋までの距離が長かったこともあって、途中で脱水症状になってしまって……。なんとか宿泊地の花立山荘までたどり着くことができたのですが、山小屋ってありがたい存在だなぁと、そのとき実感したんです」

その日の天気はガスっていたそうですが、ときおり晴れ間が出て景色を楽しむことができ、運よく下界での花火大会を見下ろすこともできたんだとか。

辛いだけの記憶になってしまったかもしれない人生初の登山も、山小屋のおかげで素敵な想い出に。不便さのなかにある面白さに気が付いた長内さんは、それからたびたび山小屋泊や日帰りで山に出かけるようになったといいます。

厨房は幕田さんと真﨑さんに任せ、コンセプトや内装は長内さんが考案。1階の立ち吞みスタイルのカウンターテーブルや、黒板、2階の家具などは長内さんのDIYによるものだそう。

テーマに山小屋、さらにアウトドア好きのメンバーで構成されているだけあって、調理道具にスキレットやホットサンドイッチメーカーを使用したり、山の箸置きがあったり、手ぬぐいを売っていたりと、随所にアウトドア要素がちらほら。山に行けない日はここでグイっと乾杯! なんていうのもいいですよね。

実際、ここへ来るお客さんもアウトドア好きの方が多く、お客さん同士が仲良くなって一緒にキャンプを楽しんでいるんだとか。

「お客さん同士もあるし、わたしたちが一緒に行くこともありますよ。来週もうちのスタッフと常連さんがキャンプに行くみたいで、昨日はここでミーティングしていましたね。何持ってく? って」(幕田さん)

長内さんもプライベートで常連さんとトレイルランニングのレースに出たり、登山未経験のお客さんを連れて山へ出かけたりすることもあるそう。西荻ヒュッテは、人と人を結ぶ交流の場でもあるのです。

季節をていねいに感じる、やさしい手料理

幕田さんはフレンチレストランのパティシエや個人経営の居酒屋を経て、真﨑さんはもつ焼き居酒屋やホテルのセントラルキッチンなどで料理人としての経験を積み、西荻ヒュッテへ。飲食業経験の長いおふたりが厨房に立っているだけあって、とにかく料理も絶品なのです!

「メニューはふたりで考えてます。明日なに作る~? あ、それいいね、じゃあわたしこれ作る~、みたいな感じで(笑)」(真﨑さん)

「八百屋さんに並ぶ食材は毎日変わるので、それを見て、これ作ろっか~って話をしています」(幕田さん)

季節をていねいに感じる、やさしい手料理|「横丁の“山小屋”でグイっと乾杯しましょ。山好きオーナーのいるお店『西荻ヒュッテ』」の4枚目の画像

定番メニューに加え、日替わり週替わりで登場する一皿も多く、黒板にはその日のお品書きが書き出されています。毎日レシピを考えるのって大変な気がしますが、真﨑さんは「それが楽しい」とニッコリ。

筆者はここの存在を知ってから、いつもおいしそうなゴハンだな~と生唾を飲みながら西荻ヒュッテのSNSをチェックしていたのですが、おふたりのお話を聞いて、納得。季節を感じることのできる料理が食べられるのは、おふたりの腕前とセンスの賜物です。

季節をていねいに感じる、やさしい手料理|「横丁の“山小屋”でグイっと乾杯しましょ。山好きオーナーのいるお店『西荻ヒュッテ』」の9枚目の画像

ときにはお客さんが「近くの市場でこんなおもしろい野菜あったよ」と持ってきてくれたり、沢釣り好きの常連さんが市場にはあまり出回っていないおいしい日本酒を教えてくれたりもするんだとか。

お客さんとそういった関係性が築けるのは、この場所がアットホームな空間かつ携わる人たちの人柄あってこそ。お店側とお客さんの距離感が近いところも、西荻ヒュッテが賑わっている理由なのかも。

西荻ヒュッテは、2階席の注文方法がじつユニークです。オーダー用紙に注文したいメニューを書き込み、ガチャガチャのボールに入れたら煙突の中にポン。するとあっという間に1階へ! お客さんは声を張り上げることなく、スタッフも階段を上り下りすることなくスムーズに注文を受けることができる画期的なシステムになっています。

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「お客さんが楽しめて、さらにすばやく料理をサーブできるように階段の傾斜を活かした仕組みにしました」と長内さん。これには目からウロコ!

ちなみに、少し前まではランチ営業もしていた西荻ヒュッテ。現在は人員不足の関係でお休み中ですが、ランチ限定のホットサンドも絶品とウワサなんです。

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「ホットサンドはつねに3種類を週替わりで考えていたので、毎週来てくださる方もいらっしゃいました。なかには、お子さんが生まれて山に行けなくなってしまったので、せめて山小屋の雰囲気だけでも、とお子さんを連れて食べに来てくださる方も。そういった常連さんからの要望もあるので、また再開できたらと考えています」(幕田さん)

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これまで200種類以上のホットサンドレシピを考案してきたという幕田さん。ときには「何を入れたらおいしい?」と教わりにくる方もいるんだとか。ランチ再開が待ち遠しい……!

ひとりでも、山帰りでも。気軽に寄って

オープンして5年目を迎えた2020年1月、メニューを大幅にリニューアルして再スタートを切った西荻ヒュッテ。

幕田さんは、「吞んで、食べて、楽しく会話して過ごしてもらえたら嬉しいですね。仕事帰りや山帰りに、気軽に来ていただけば」と話します。

ひとりでも、山帰りでも。気軽に寄って|「横丁の“山小屋”でグイっと乾杯しましょ。山好きオーナーのいるお店『西荻ヒュッテ』」の2枚目の画像

常連さんの多いお店、さらに立ち吞みともなると、「女性ひとりだとちょっと入りにくいかも……」と思ってしまう方もいらっしゃるでしょう。正直、わたしもここへ来るまではそう思っていました。でも、幕田さんと真﨑さんはじめ、明るくアットホームなスタッフさんが暖かく迎え入れてくれるので、そんな心配は必要なかったな、そう思いました。

ひとりでも、山帰りでも。気軽に寄って|「横丁の“山小屋”でグイっと乾杯しましょ。山好きオーナーのいるお店『西荻ヒュッテ』」の4枚目の画像

「お客さんはみんな優しい方ばかり。すぐに仲良くなれますよ」と、真﨑さんが話すように、山好き、キャンプ好き、おいしいゴハン好き、お酒好きの人ならきっとすぐに馴染めるはず。だってここには、自然とそういった人たちが集まっているんですから。

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山小屋バル『西荻ヒュッテ』
<Address> 東京都杉並区西荻南3-11-7
<Access> JR西荻窪駅南口徒歩すぐ
<Website>http://www.osanaidesign.com/nishiogihutte/
<Facebook> https://www.facebook.com/nishiogihutte/
<Instaguram>https://www.instagram.com/nishiogi_hutte/
*営業日、営業時間についてはオフィシャルサイトをご確認ください


(写真・Hao Moda

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山畑 理絵

春夏秋冬、日本の美しい山を求めて歩きまわっています。

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この記事を書いた人

山畑 理絵

音楽プロダクションの制作、アウトドアショップの販売員を経てライターになる。のんびり日帰りハイクからガッツリテント泊縦走、トレイルランニング、ボルダリング、スキーと四季を通してフィールド三昧。アウトドア媒体をメインにライター活動をする傍ら、アロマテラピーインストラクターとして「山とアロマ」をテーマに、神出鬼没なワークショップを展開中。

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