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  • 登山好きが贈る、登山の体験レポートです。日本、そして世界の山々にはたくさんの魅力にあふれています。春夏秋冬、その時々で異なる顔を見せてくれる素敵な山がたくさんあります。まさに百景。.HYAKKEIでは、そんな山に実際に登り、五感で楽しんだ自然体験記をお届けします。きっと山に登りたくなりますよ!

山バカ、『エベレスト街道』をゆく #最終回

皆様こんにちは。
早いもので当連載も第7回目。
今回でついに最終回。エベレストベースキャンプに到着です!

カラ・パタール

前回は高山病に苦しみながらもゴラクシェプ(5150m)まで辿り着きました。

本来ならば薬を飲んで安静にしなければいけないところですが、この日中に見たい景色があったので今回の山行で最大のエベレストビューポイント、カラ・パタール登山を敢行する事に。

頂上が黒くなっている小山がカラ・パタール(現地の言葉で『黒い岩』の意)
頂上が黒くなっている小山がカラ・パタール(現地の言葉で『黒い岩』の意)

奥に標高7161mのプモリがあるせいで遠近感がおかしくなりますが、カラ・パタールは標高5643mで麓の町からは400mも標高差があるそこそこ大きな山です。

ロッジに荷物を預けてお昼過ぎに登山を開始します。

空気が薄いので息切れしないように慎重にゆっくりゆっくり。

写真中央、エベレストにかかる傘雲
写真中央、エベレストにかかる傘雲

登りながらふと横を見るとエベレストがとても近くに見えました。

念願の景色だったはずなのに、この時は高山病で頭がボーっとしていたのと頂上を目指すのに必死だったせいで心は限りなく 無 でした。もったいない。

山頂の向こう側に聳え立つプモリ
山頂の向こう側に聳え立つプモリ

山頂が見える頃にはすでに16時。かなり太陽が傾いてきました。

プモリを眺めながらどんどん登ります。

頂上直下では西から雲が流れてきて少し虹も出ています。

あと本当にどうでもいいのですが、物理法則を無視したような独特なケルンもありました。なにこれ。

カラ・パタール頂上
カラ・パタール頂上

今回の旅での最高地点、標高5643mカラ・パタール頂上に到達です!

この時点ですでに夕方になっており、エベレストは

金色!

赤色!

天気予報では翌日午後から天気が悪化するようだったので、これを見るためにはどうしてもこの日のうちに登る必要がありました。

運が悪いと1週間くらい滞在しないと見られない事もあるそう。

多少無理してでも登ってよかったと思えた瞬間です。

とか何とか言って夢中で眺めているうちに月が出てきて我に返ります。

我に返ってロッジに帰っている途中に星が出てきたので少し撮影してから就寝。

翌日は最終目的地のベースキャンプに行って帰国するのですが、ベースキャンプからエベレストは見えないのでこれがエベレストの見納めとなりました。

翌日は天気が悪くなる予報でしたが、ここまで来たら雨が降ろうが槍が降ろうが意地でもベースキャンプまで行きます。

エベレストベースキャンプ

翌朝。

いや快晴やないかーい!

こんな事ならば無理して前日にカラ・パタールに登る必要もなかったのでは。という思いを押し殺して、いざ最終目的地エベレストベースキャンプへ。

ガレ場が続くので足元に気を付けながら進みます。

日本では見られない壮大な氷河。

そんな氷河の横をずっと歩いていると、

すぐに着きました。ベースキャンプ。

思ったよりも殺風景だし、1時間くらいで着きましたね。

なんかもっとこう、ドラマチックな展開を期待していたので少し肩透かしを食らった感は否めませんが、長い旅の末にやっと辿り着いて物凄い達成感。

そして世界中の国旗が並んでいるのを見て、エベレスト登山の歴史を感じます。

最後は僕も日の丸を背負って記念撮影!と思ったのですが、

アメリカ。

どれだけ探しても日本国旗がありませんでした。

記念撮影をお願いした現地の方も怪訝な顔をしていましたね。

テントを持っていればここで1泊してみたいところですが、荷物の軽量化のためにテントもシュラフも持っていなかったのでそのまま岐路に着きます。

かくして僕のエベレストトレッキングは幕を閉じるのでした。

終わりに

なんとも締まりのない結末を迎えましたが、帰国して思うのは『本当に行って良かった』

まず、日本とは違う気候・標高の山で見た景色は一生忘れることのない素晴らしい思い出になったこと。

そして、海外登山のハードルが下がったこと。

今まで海外の山となると怖かったり難しいというイメージが先行していたのですが、実際に行ってみれば何てことはなく少しのお金と思い切りがあれば大丈夫なのだと知りました。

きっとこれから様々な海外の山に赴くこととなるでしょう。

それだけ今回のエベレストトレッキングは僕の人生に大きな影響を与えてくれました。

蛇足ですが最後に。

帰国して1年、僕の登山観にも変化が現れました。

帰国後ももちろん国内の色々な山に登っているのですが、登るたびに感じる『日本の山って楽しい!』

ヒマラヤでは1日2日歩いただけではなかなか景色が変わらないのですが、日本の山だと1時間登るごとに植生や気温の変化を感じます。この多様性は島国特有なのでしょう。

日本での登山が退屈に感じてネパールに行ったはずが、日本の山の魅力を再発見することになるとは思ってもみませんでした。

ありがとう!エベレスト!!

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