厳冬期の旭岳を滑る!山スキーヤー&スノーボーダーの聖地、北海道・旭岳を滑ってきた
標高2,291m、北海道の最高峰である旭岳(あさひだけ)は、大雪山連峰の主峰であり、夏の観光名所でもありますが、冬はバックカントリーを愛する人々にとっての天国なのです。
一般のスキーヤー、スノーボーダーにはほとんど知られていない旭岳ですが、そこがどんなに素晴らしいところなのか。
2年ぶりに訪れてきましたので、ご紹介してみたいと思います。
もくじ
あくまで登山の延長、旭岳スキーコースの魅力とは?
冬の旭岳は一応スキー場のような体裁が整っていますが、正確な名称は「旭岳スキーコース」。
つまりスキー場というわけではなく、あくまで登山の延長でスキーやスノーボードも楽しめますというスタンスなんです。これがほかのスキー場と大きく違うところで、圧雪車一台分の幅で踏み固めたコースが一応あるものの、それ以外の斜面も自由に滑ることができ、むしろそれを楽しむために人々は集まってくるのです。
また普通のスキー場なら当たり前の保護ネットの設置や、パトロールの巡回といったものもここでは行われていません。すべては自己責任。あくまで登山の延長ということを忘れずに、自分自身での安全配慮義務を怠らず、そのかわり自由に山を楽しむ。しかもロープウェイで一気に森林限界点まで連れて行ってくれるというのが、冬の旭岳の素晴らしいところなんです。
パウダースノーの新雪を滑る
またここは北海道でも有数の豪雪地帯で、その年にもよりますがかなりの確立でパウダースノーの新雪を滑れるというのも魅力のひとつ。
もし降らなかったとしても、圧雪されたコース内ならスキー場と同じように滑ることができるので、普通の山スキーよりも天候リスクが低いこともメリットと言えるでしょう。ただ強風になることも多く、その場合はロープウェイが運休してしまいます。実際、今回のトリップでも2日間運休していたため、その日は旭川近郊のスキー場に行くことにしました。
旭岳を目指すなら、朝一の天候と運行状況のチェックは必須です。
海外も注目!日本の恵まれたスノーエリア
そんな旭岳、最近では海外からのお客さんが非常に増えており、特に平日は大半が外人さん。まるで日本じゃないかのようです。
同じことはニセコや白馬、野沢温泉といったスキー場にも言えることですが、四方を海に囲まれ豊富な積雪量と上質なパウダースノーに恵まれた日本のスノーエリアは、世界中のスキーヤー、スノーボーダーにとって本当に魅力的なんですね。日本ではスノースポーツ離れが進んでいると言われていますが、こんなに素晴らしい環境が身近にありながら楽しまないなんて、絶対もったいないと個人的には思います。
楽しみ方はいろいろ!
ロープウェイが運行している期間はかなりの人が滑っているので、どこかしらトレースがありますし、よほど天候が悪くない限り遭難はしにくい旭岳ではあります。しかし、慣れないうちはコース内を滑りながら少し脇にそれてみるとか、地形に詳しい人にガイドしてもらうのがオススメです。もちろん地元のガイドカンパニーもありますので、ツアーに参加するのも良いでしょう。
私もまだまだ地形が頭に入っているとは言えませんが、はじめての斜面に足を踏み入れても、何となく降りる方向がわかって、コース内に復帰できるのがここのいいところ。ただし、視界が悪いと道に迷う危険性もありますから、コンパスを携行して、旭岳駅(山麓駅)の方角がわかるようにしておくべきです。
姿見駅より上のゾーンは森林限界を越えていて、アイスバーンになっている部分も多いので、パウダーを楽しむというわけにはいきませんが、晴天時には少しハイクアップすれば素晴らしい景色を楽しめます。山頂まで登るためにはアイゼンやピッケルといった装備が必要になりますが、その少し下まではシールを装着したスキーやスノーシューで十分登れます。ただし下りはアイスバーンや岩に気をつけて慎重に滑りましょう。
あくまで自己責任、慎重に
バックカントリーの場合、ビーコン、ショベル、プローブといった装備は必須となるわけですが、それはここ旭岳でも例外ではありません。それほど雪崩が頻繁に起こる場所ではありませんが、過去には雪崩による死亡事故も何度か起きています。特に雪崩が起きやすい急斜面を滑るなら、それらの装備を携行しましょう。
ただコース内を滑るのを基本にして、その脇で少し新雪を楽しむというくらいであれば、そこまで神経質になる必要もないと個人的には思います。それでも立木に衝突したり、転倒したりという危険性は常にあるわけで、そのリスクは普通のスキー場に比べてはるかに高いと言えます。ですので、あくまで自己責任の上で、慎重に滑る必要があります。
自然の雪山ならではの素晴らしい景色を存分に味わう
滑走技術に自信がない、あるいは十分な装備がないという場合には、素直にコース内を滑るのが得策。それでも普通のスキー場と違って突然登りが現れたり、素晴らしい景色に出会えたりと、旭岳ならではの魅力を味わえるはずです。最小限の設備しかないコースだからこそ、自然のままの雪山を楽しめるんです。
ハズレなし!食堂で腹ごしらえ
さて、ひとしきり滑ってお腹が空いたら、旭岳駅の姿見食堂へ。山岳スキー、スノーボードを楽しみつつ、ちゃんとしたレストランで補給できるというのも旭岳の素晴らしいところ。しかもどれも美味しい!
メニューは決して多くはありませんが、一般的なスキー場のゲレ食と比べるとかなり高得点と言えるのではないでしょうか。
まとめ
今回は入山直前から降雪に恵まれ、最終日には晴れてくれたことでパウダーも景色も楽しめましたが、必ずしもそうはうまくいかないのが旭岳。
でもそれが「山」なんです。
海外からやってきて、一度もパウダーを楽しめないまま帰っていく人たちも大勢いますが、それでも旭岳の魅力に取り憑かれ、再び戻ってくる。そんな魅力に溢れた旭岳を、皆さんにも是非堪能して欲しいと思います。そこへ行けば、普通のスキー場ではあまり見かけない、山装備を身につけた仲間たちが大勢います。そして時にはギアの話で盛り上がったり…。そんなところも旭岳ならではの楽しみと言えるんじゃないでしょうか。
Born To Be Free.
アウトドア、スポーツ、ファッションを軸に、コンテンツ制作やプロダクトデザインなど、様々なプロジェクトに携わるクリエイティブディレクター。ギア類に精通し、キャンプをメインに一年中アウトドア活動を行う。