アウトドアとモノづくりを愛する夫婦の「好き」が詰め込まれた、唯一無二のショップ” DECEMBER”
北は北海道、南は佐賀からお客さんが訪れる、アウトドア好きにはたまらないショップ
“DECEMBER”。
蔵王山や月山を始めとする6つの百名山や、日本三大急流である最上川を有する、自然豊かな山形県にお店を構えています。菊地さんご夫妻の経験に裏打ちされた商品のセレクトに、「あれも、これも欲しい!」と目移りしてしまいます。
そんなお店やこの地での暮らしについて、お話をうかがいました。
もくじ
「好き」という原点に立ち返る
ーー遠方からもお客さんが来られるんですね。
(大二郎さん)他とは変わったことをしているので、目立つからでしょうか。
ーー他とは変わっていることというと?
(大二郎さん)オリジナル商品を作っていることと、レトロな商品をアウトドアショップで扱っているのは、おそらく僕のお店ぐらいかと。
ーー開店されたのはいつ頃ですか?
(大二郎さん)2009年で、僕が32歳の時に始めました。学生時代は山形にいて卒業して東京に行き、現代アートの活動をしながら美術家をめざしていました。
そもそもアウトドアは子どもの頃から今に至るまでずっと好きで。当時は渓流釣りが一番好きでしたね。僕はボーイスカウトで活動していたので、小学生の時にはもう子どもだけでキャンプに行っていました。
ただ東京でアート活動をしていた時はアートに夢中になっていましたし、アウトドアの扉は封印していたように思います。
ーーいつかは東京を出ようと考えておられたのですか?
(大二郎さん)35歳までには地方に拠点を置きたいと最初から決めていました。ところが30歳前後の時、少し生活に余裕が出てきて車で釣りなどに行き始めたら、アウトドアの楽しさを思い出してしまって。「35歳」が待ちきれなくなって「よし、今戻ろう」と思って30歳で山形に戻りました。
ーーそして山形に戻ってすぐアウトドアショップをスタートさせたと。
(大二郎さん)それが違って、僕は飲食店でのアルバイトの経験が多かったので、まずは飲食店を営んでみたくて居酒屋を始めました。ただ、物作りが本業だと思っていたので、2年位を目途に誰かに店を譲ろうと決めて、2年後、後任に店を引き継いで本業に取り掛かりました。
当初はアウトドアショップと、併設した喫茶店(現在は工房になっています)とを同時にスタートさせる予定だったのですが、喫茶店を先に始めて、その1年後にやっとオープンしたんです。
(大二郎さん)最初は自分の好きなアウトドア用品を置いていました。そしてレトロな商品も自分の趣味で置いていたら、だんだんと人気が出て売れるようになり、力を入れ出したら商品が増えて、お店を形作っていったんです。
(大二郎さん)レトロな商品は主に国内メーカー産が中心で、アウトドアとは全く関係ないものもあります。ホーローのバットとか、昔、実家にあったような懐かしい商品が多いですね。
(大二郎さん)見つけてくる基準も「自分の好きなもの」です。ですから、仕入れたばかりの商品は売りたくなくて(笑)。1年位置いておくと自分も見慣れきて、気持ちも落ち着いてくるので、そろそろ商品を旅に出してもいいかなと思って、やっと売ります(笑)。
アウトドア好き夫婦の二人三脚で
ーー恵理さんとはアウトドアがきっかけで出会われたのですか?
(大二郎さん)出会いはそのへんで、でしょうか(笑)。妻は洋服屋で働いていて、話してみたらアウトドアも好きで縫製もできるようだったので、「こんな商品作られる?」とか聞いたりして。きっかけはそんなところからです。
(恵理さん)そもそも私が生まれ育ったところが山奥でしたので、幼い頃から川遊びは日常でしたし、キャンプも家族で行っていました。大人になってからも自分でテントを買って、友達をキャンプに連れて行ったりするほど、アウトドアはずっと好きですね。
(恵理さん)そんな中、このショップを雑誌で見て、雰囲気が良さそうだったので行ってみたいなと思ったんです。でも、日中来る度に全然開いていなくて。営業時間も書いていないから、いつ開いているのだろうと(笑)。当時は夕方からの営業だったんですよね。
ーー店内にある布製の商品は全部恵理さんの手作りですか?
(恵理さん)基本的に主人がデザインをして、それを私が形にするという流れで作っています。特にカバンは細部までこだわって作るので、出来上がるまでに時間がかかって結構大変ですね。でも、もうちょっとラインアップを増やしたいと思っています。
(恵理さん)本当はシンプルなロールアップタイプの帆布製のザックも常時置きたいのですが、作ると売れてしまって、商品開発に生産が追い付いていないのが現状です。ビーチテントなども作りたいんですが、もう夏になってしまいましたね(笑)
「オリジナル」にこだわる
ーー今人気の商品は何ですか?
(大二郎さん)タープの注文が多いですね。色の種類が5~6色、生地も厚手と薄手があり、タープにしてはバリエーションが多いのが人気の理由でしょうか。
最近では、色を指定して染めてもらい、柄の幅も指定して作ってもらった完全オリジナルの生地(ストライプ柄)も作りました。過去にストライプ柄のプリント生地があったのですが、このストライプ柄を復活させたくて。
(大二郎さん)僕も妻もかねてから作りたかった生地だったので、「紺・黄・赤」の色の出し方にもこだわって、何回か色も作り直してもらいました。でも、実際に織ってみないとイメージ通りになっているかどうかわからないですし、仕上がりが本当に楽しみで。構想から半年かけてやっと出来上がったので、完成した時は「やったー!」と二人して喜びました。
ですから、この生地には思い入れがかなりあります。
ーー思い入れのある商品は他にもありますか?
(大二郎さん)テーブルですね。これが最初に作ったオリジナル商品です。「野外用の木製の小さいテーブルが欲しい」と思っていたので作りました。
(大二郎さん)野外へ持ち出すものなので組み立てた状態のままでは、かさばって持っていけないですよね。そこで、シンプルで折り畳めるテーブルがどのようにすれば作られるのかということを家具屋さんと一緒に考えたんです。そのうち、磁石を使えば簡単に折り畳めてコンパクトにできることに気づき、商品化に漕ぎ着けました。
(大二郎さん)今とは素材が違いますが、「サコッシュ」がオリジナル商品第2弾です。当時はいろんな生地を使って作っていましたし、タグも素材の一つとして考えていたので、ビニール・革などを使うなど、かなりこだわっていましたね。
(大二郎さん)次に作ったのは折り畳み椅子です。布を新しく張り替えて作りました。最初は全然売れなかったんです。特にオンラインショップでは。でも、お店に来られる方が直接椅子に触れて気に入ってもらってから、だんだんと売れ始めるようになりました。本当、試行錯誤の日々でしたね。
ーーちなみに、「CUCUCHI(ククチ)」や「DAIS(ダイス)」というブランドネームには、何かの意味が込められているのですか?
(大二郎さん)僕の「菊地(キクチ)」という苗字は、その昔九州では「ククチ」と読まれていたそうなんです。それをローマ字にしてみたら、英字の並びもいいし、音感もいいのでそのまま「CUCUCHI(ククチ)」として使いました。
(大二郎さん) 「DAIS(ダイス)」は、僕の名前である「大二郎」の「ダイ」からです。ロゴマークは漢字の「大」の字をモチーフにして作りました。もともとグラフィックデザインにも携わっていたので、自分でロゴやブランド名を考えるのは楽しいですね。
ーーでは“DECEMBER”というお店の名前も大二郎さん由来ですか?(笑)
(大二郎さん)はい。自分の生まれ月が12月であることと、僕自身冬が好きなので。アウトドアショップですし、季節の月の名前がいいかなと思って。北国生まれなので雪が大好きですし、僕にとって一番大切な季節は冬ですね。
自然と、生活と、仕事
ーーお二人のライフスタイルはどんな感じですか?
(大二郎さん)日々ここに暮らし(お店の2階が住居)、仕事をして、休みの日は川・湖・海に行ったり、キャンプ行ったりしています。
お店では体験ツアーも開催していますよ。夏は最上川でカヌー、冬は蔵王でスノートレッキングなど。人気なのは夏の沢遊びツアーですね。滝つぼに入ったり、橋にブランコをかけて川の水の上でブランコをしたり。アウトドア遊びのアイデアは尽きませんね。
ーー生活に仕事が溶け込んでいますよね。
(恵理さん)アウトドアは主人と出会う前から好きでしたし、仕事としても生活にもすっとなじみました。二人の好きなことを仕事や生活の一部としてできているので、毎日を楽しんで暮らしていますね。
ーーこれからのお二人の暮らしに対して「もっとこうしたい」という希望はありますか?
(大二郎さん)今後一番したいことは、さらに山の方に住みたいです。「日常」を自然の中に持ち込みたい。できれば「お店ごと山の方に行きたい」と考えたりしています。
素朴で、自然に真っ直ぐなスタンス。生活に「自然」と「仕事」が溶け込んだライフスタイル。自身の今後の生活を考える際のお手本にしたいと思った菊地さんご夫妻でした。
“DECEMBER”は、皆さんに何かのきっかけを作ってくれるお店かもしれませんよ。
店舗情報
*所在地
〒990-2332
山形県山形市飯田2-2-2
*TEL/FAX
023-623-9671
*公式サイト
http://december.shop-pro.jp/
*公式Facebookページ
https://www.facebook.com/OUTDOOR-SHOP-DECEMBER-226055437444948/
山と海と旅と音楽が生きがいです
.HYAKKEIアンバサダー。ライター。世界で死ぬまでに行きたい場所を訪ねる旅、日本百名山の踏破を継続中。道の駅で地場の野菜と地ビールを見かけたら猛ダッシュ。そんな三十路半ばを生きています。