【自然ビト05】生態を知ることで、アウトドアはもっとおもしろくなる/.HYAKKEIライター三野クリコ(前編)
最近のアウトドアシーンは少し表面的な気がします。
入門として楽しむには良いかもしれませんが、季節のこと、自然のこと、基本をもっと知って理解を深めることも大切。そうすることで自分なりのアウトドアの楽しみ方は倍増するのだから。
今回インタビューをした.HYAKKEIライターの三野さんは、自身の経験に基づき、アウトドアに対する確かな情報と楽しみ方を届けてくれる貴重な存在です。
*三野クリコさんのプロフィール*
森林、山岳、企業CSRの環境分野を中心としたフリーライター。
キャンプ、山、サーフィンなど、自然の中で過ごす中で自分らしいライフスタイルを模索中。現在、第一種狩猟免許取得に向け勉強中。
もくじ
「となりのサイトと同じは嫌だ」
——(ご自宅でお話をうかがっています)家の中がすごくオシャレでびっくりしているのですが。
家の家具からキャンプ道具まで、ほとんどがDIYですよ。キャンプや山登りで田舎に遊びに行ったときに拾ってきた木材や、ホームセンターで端材を買った材料で作っています。家でもキャンプでも使えるものを作っていますね。ロゴを作って焼き印したりもしています(笑)。
——ロゴまで作るってすごいですね。どうしてそこまでするんでしょうか?
オリジナリティというか、自分の住む家をどう作るか。それがキャンプでも実際の住む家でものひとつの軸となる考え方だと思っています。同じ広さの部屋に住んでいてもレイアウトや家具は自分の居心地の良いように誰でも工夫をしています。
キャンプでも同じ考え方で、となりのサイトと同じ既製品の流行りものばかりだとなんとなく作られた感がしっくりこない。。だから極力他とは違ったものにしているんです。同じ既製品も塗ってかっこよくしたりエイジング加工したり。居心地のよい空間を自分の手で工夫して作り上げることは、普段住む家でもキャンプにも共通しているこだわりです。
「高い山だから」、「低い山でも」、ではない
——三野さんの記事はいつも反響があって凄いなと思っています。登山にもキャンプにもお詳しいですよね。
ルーツは山です。
父は火山や地震に関する防災の仕事をしていて、母も地図を書く専門の勉強をしていました。叔母は百名山を攻めるスポーツ登山の愛好家です。
小学生の頃は毎週のように父と山に登ったり、父親の調査について行ったりしていたんです。最近流行りのカッコいいスタイルの山登りというよりも、地形を見て、生態を知りながら登る山登りです。父と一緒にフィールドを歩きながら、山の在り方知っていきました。
——生態を知るとは?
今登っている山はどういう生い立ちの山なのか。たとえば、登っていて足を取られるなぁと思ったら石がガラガラしていた。その石を持ってみるとすごく軽い。だから足元が安定しない。このあたりは火山質の軽い石がたくさんあって転びやすい。火山ということは周りに木が少ないので、風の影響を直に受けやすい。
そんなことを教えてもらいながら登っていました。雨が降りやすいかどうかは地形を見れば分かるから、そういう時はどんな服装を選べばいい、とか。
ただ単に高い山だから重装備が必要、とか、低い山だから初心者向きだという理屈ではなく、なんでそうするかをちゃんと知る。
そういう教育を受けてきました。
必要最低限=現地調達=DIY
——表面的な楽しさ、ではなく、本質的なところから教えてもらったんですね。
現場での凌ぎ方も教えてもらっていたので、荷物は最小限でほとんどが現地調達です。食材でいえば必須で持っていくのはそうですね、味噌と塩くらい(笑)
——味噌、ですか。
生のお肉を味噌に漬けておくと、長時間持ち歩いても腐りにくいから縦走時に活用したり、溶けばお味噌汁にもなりますからね。薬味はミツバや山わさびを登山道を歩きながら収穫していくんです。
登山計画は母と地図を読んでマーカーを引きながら考えていました。
地図を読めるようになると、山登りがとても楽しいんです。一般的に上級者向けの山と紹介されていて、技術や体力的に難しいなあと感じても、ルートを自分で決めて距離を測ることにより難所を避けて山行計画を立てたりできる。父のように地図を眺めるだけで実際の山の地形が立体で頭に想像できるようになれば完璧ですけど、まだまだですね(笑)
——山登り、という経験自体をすごく楽しんでいらっしゃる印象ですね。
登山に関しては、ファッションよりも機能性重視で全然見た目を気にしていませんでした。父に教えてもらったネックウォーマーよりセルフエイドにも役立つ手ぬぐい、カッコいいグローブより建設業者向けのグリップ力のある軍手、ホッカイロではなく唐辛子を靴に入れるとか(笑)使わなかったら飲み物に入れれば体も温まるし。軽量で使いやすいものを追求していったらそうなっていました。
今は見た目もよい機能的なギアが簡単に手に入るので、オシャレな登山も楽しめますが、最先端のギアばかりを追うのではなく、登山ではリスクヘッジのためにも自分に合った、使い慣れたギアを見つけられるかということが重要だと思っています。
山に登るっていうこと自体はとてもシンプルなことですが、自分に合うものを選び、カスタマイズする。工夫することが身近だったんですよ。DIYにも繋がっているところです。
「小さい頃やっていたことはダサくないんだ」
——小学校から今までずっと登山は続けているんですか?
いいえ、交通事故で足を痛めてしまったので距離を置きました。でも自然自体は好きだったので、サーフィンをやっていました。
海外にサーフトリップで、ある自然系の学術誌のカメラマンと出会ったのが印象的でしたね。
「海やるんだったら山も良いよ。海も山もつながっているからね。スポーツとして楽しむだけでなく、自然を知ることが楽しんだよ」
と教えてくれたんです。
小さい頃の登山の印象っていうと父と一緒だったし中高年の方ばかりで、どこかで“ダサいもの”って思ってました。
でもそのカメラマンの言葉で、小さい頃にやっていたことはダサいことじゃないんだって分かったんです。それから20代くらいからは、サーフィンも行くし山も登るし、と広く自然を楽しむようになりました。
子供の頃に山との本質的な関わり方をしていた三野さん。「生態を知る」という登山の考え方に代表されるように、彼女のこだわりのある考え方はとても示唆に富んでいます。
では、サーフトリップを機に離れかけていた山との繋がりを見出すようなって以降、どのように自然を楽しむようになったのか?
後編へ続きます。
LIFE WITH NATURE!
コースタイムの1.5倍はかかる写真大好きハイカー。登山はカメラ3台、キャンプはミニマルに、自分らしい自由なアウトドアを楽しんでいます。フィルム登山部メンバー。.HYAKKEIファウンダー&初代編集長。