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パタゴニア「R1エア・フルジップ」徹底レビュー:フルジップになった“定番フリース”の使用感

R1 エアとは? 過去作から継承された独自構造と機能性の核心

パタゴニアのR1 シリーズは、テクニカルフリースというジャンルにおいて長年にわたりその地位を確立してきた名作です。その中でも「R1 エア」は、従来のフリースが持つ「保温性は高いが、行動中に熱がこもりすぎる」という課題を根本から解決するために生み出されました。

R1シリーズのトレードマーク

その名前が示す通り、「空気(エア)」のような高い通気性と軽量性を追求し、行動着としてのフリースに革新をもたらした製品と言えるでしょう。

R1 エアの機能性の核心は、その独特なグリッド構造。「スイカ模様」とも形容される編み込まれたメッシュ構造にあります。この構造を詳しく観察すると、生地の凹凸が非常に明確であり、凹の部分は太陽にかざすと光が透けるほど薄く、ほぼ完全にメッシュ状なのです。

太陽にかざすと透けるほど。

この極めて薄いメッシュ部分こそが、驚異的な通気性を生み出す源となっています。一方で、凸の部分は肌に触れ、適度な保温性を維持する役割を担っています。

この構造が協働することで、R1 エアは一般的なフリースとは一線を画す性能を発揮。運動中に体が発する熱や湿気は、この広いメッシュ部分から瞬時に外へ排出されます。これにより、激しいアクティビティ中でも体温が急激にヒートアップするのを効果的に防ぐことが可能になります。

衣服内をドライで快適な状態に保つ。それがR1 エアの設計思想です。

素材には軽量なリサイクル・ポリエステルが採用されており、その極薄な生地は高いストレッチ性を持ち、身体の動きを一切妨げません。R1 エアは保温性重視の従来のフリースとは異なり、「常に体温を適切に調整するミッドレイヤー」としての機能に特化している、そう理解しておくべきでしょう。

実際に体感した通気性。最適な使用環境とは。

今回は、秋も深まりつつある11月の長野県、横谷渓谷にて、このR1 エア・フルジップを着用してみました。使用時の気温は約10℃で、風速もほとんどなく、比較的穏やかな気候条件下での活動でした。

横谷渓谷は地形上、強い風が吹き込むことが少ないため、終日このフリースを行動着として着用することができましたが、これがまさにR1 エアの真価が発揮される環境だったと言えます。昼間の活動で気温が比較的高い時間帯であっても、その卓越した通気性のおかげで、一度も熱がこもる不快な感覚に襲われることはありませんでした。

体が発する蒸気や熱をメッシュが素早く外へ逃がしてくれるため、汗冷えやオーバーヒートのリスクを最小限に抑えつつ、快適に活動を続けることができました。

しかし、同日に場所を移して行った霧ヶ峰では、少し異なる状況を経験しています。ここでは風速3mほどの風が断続的に吹き付けており、その風がR1 エアの薄いメッシュ部分を容赦なく通過していきました。その結果、行動中であっても通気性の良さが裏目に出てしまい、風を受けると寒さを感じる瞬間もありました。R1 エアはあくまで「積極的に動く際のミッドレイヤー」。風がある環境や休憩時には、その通気性を活かすためにも、すぐにウィンドシェルやハードシェルといった防風性の高いアウターと組み合わせて使用することが必須でしょう。

この製品の真価は、あくまでも「行動着」として、特に運動量の変化が大きい環境で最も発揮されるもの。ヒートアップを抑えることで体力を温存し、集中力を維持する上で、この独自の通気性は欠かせない機能です。

待望のフルジップ化がもたらした利便性と細部に宿る進化

今回のR1 エアのアップデートにおいて、ファンが最も注目し、そして待ち望んでいたのが、このフルジップモデルの登場です。従来のプルオーバータイプは軽量性を追求する上で優れていましたが、フルジップ化されたことによって、この製品の使用できる季節やシーンの幅は格段に広がりました。

フルジップの最大のメリットは、着脱の容易さに尽きるでしょう。山行中、気温や運動強度の変化に応じて頻繁に衣服を調整する必要がある場合、フルジップであればザックを下ろさずとも一瞬で開閉・着脱が可能です。これにより、寒暖差の激しい早朝や夕方、稜線歩きや樹林帯の出入りなど、体温管理が難しい場面で、より機動的な体温調節が可能となります。

また、デザイン面でも細部にわたる進化が見て取れます。袖口や裾など、フリース素材で摩耗が早い箇所には、しっかりとパイピングによる補強が施されています。この補強は、岩場での擦れやザックとの摩擦による経年劣化を防ぐ上で非常に有効であり、このギアを長く使い続けたいユーザーにとってありがたい配慮だと思います。

パイピングによる補強(袖)

パイピングによる補強(裾)

さらに、脇下から肩回りにかけては、人体が動く際の立体的な構造を想定したパターンで設計されています。これにより、腕を上げたり身体をひねったりする激しい動きにも、生地が突っ張ることなく滑らかに追従し、着用時にストレスや疎外感を覚えることはありません。

脇下はパターンがパネル形状になっておりボディに沿う

襟の高さが適切に設計されているのも嬉しい点で、ジッパーを上まで閉めれば首元からの冷気の侵入をしっかりと遮断し、保温性を高めてくれる、そんな安心感のある設計です。

アクティブな山行を実現する多機能ミッドレイヤー

パタゴニアの「R1 エア・フルジップ」は、独自のグリッドメッシュ構造による画期的な通気性をそのままに、フルジップ化という大きな利便性を手に入れたことで、その完成度を格段に高めました。

この製品が目指すのは、単に「暖かい」フリースではなく、「常に快適な体温を保ち続ける」ための緻密に設計されたテクニカルウェアです。トレイルランニング、スピードハイク、そして汗をかくことが前提となる一般登山まで、このR1 エアはアクティブな山行を実現するための最良のミッドレイヤーの一つとなるだろう、という評価ができます。特に、従来のフリースで「いつも暑くなりすぎてしまう」と感じていたアクティブなハイカーにとって、この驚異的な通気性は、快適な行動の質を大きく向上させてくれるはずです。

このフリースを手に取ることは、あなたの山での体温管理を次のレベルへと引き上げる一歩となるでしょう。

今回使用した商品

メンズ・R1 エア・ジャケット

https://www.patagonia.jp/product/mens-r1-air-fleece-midlayer-jacket/40275.html?dwvar_40275_color=DVL

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