
BOA、アルペンスキー用デュアルダイヤルBOAフィットシステムの性能と優位性を解説
もくじ
アルペンスキー用デュアルダイヤルBOAフィットシステムとは
BOA® Technology Inc.は、今冬から市場投入されるアルペンスキーブーツ用デュアルダイヤル BOA®フィットシステムについて、そのフィット性とパフォーマンス上の優位性を改めて紹介している。
シングルダイヤル搭載モデルの登場からわずか2シーズン後、カフ(上部)とシェル(下部)の両方にBOAフィットシステムを搭載した構成を展開。
複数ゾーンをそれぞれ微調整できることで、従来のバックルでは得にくかった精密なフィットとユーザーエクスペリエンスをねらった設計とのことだ。

パフォーマンス検証:フィットと滑走性の数値的な変化
BOAパフォーマンスフィットラボでの測定結果
BOA本社(米コロラド州デンバー)のパフォーマンスフィットラボでは、デュアルダイヤル構成のアルペンスキーブーツについて、バックル仕様との比較検証が行われたという。結果として、次のような変化が確認されているとのこと。
- 足の甲のピーク圧力:最大13%軽減
- ふくらはぎ周りの包み込み・コネクション:最大19%向上
- パワー伝達効率:最大6%向上
- 安定性・コントロール性:最大10%向上
これにより、ブーツとの一体感を高めつつ、圧迫感や局所的な痛みを軽減し、滑走中のコントロール性向上に寄与する設計であると説明されている。
機能面のポイント
微調節可能なデュアルダイヤル構成
デュアルダイヤルBOAフィットシステムは、シェル(足部)とカフ(脛〜ふくらはぎ周り)をそれぞれ調整できる構造となっており、締め・緩めの両方向で微調節が可能とのこと。
- 足の甲:局所的な締めつけを抑え、圧の分散をねらう構成
- すね・ふくらはぎ:包み込みを高め、前後方向の一体感を強化
これにより、用途や滑走スタイル、コンディションに応じてゾーンごとのフィットを追い込める点が特徴とされている。
均一なフィットとヒールホールド
BOAによれば、ラップ構造とレース取り回しを組み合わせることで、足全体を均一に包み込み、かかとのホールド感と中足部の一体感を高める設計としている。
その結果、ターン時の荷重がスキー板へ効率的に伝わりやすくなり、少ない力で大きなパワーを引き出せることを狙っていると説明されている。
対応ブランドと展開シーズン
2025/26シーズンの採用ブランド
BOAフィットシステムは、すでに世界の主要スキーブーツブランドから採用が進んでおり、2025/26冬シーズンには以下10ブランドがシングル/デュアルダイヤル搭載モデルを展開する予定とのこと。
- Atomic
- K2
- Fischer
- Salomon
- Dalbello
- Head
- Lange
- Nordica
- Rossignol
- Tecnica
このうち、デュアルダイヤルソリューションを搭載する予定のブランドは以下6社とされている。
- Atomic
- K2
- Salomon
- Dalbello
- Head
- Nordica
これらの製品は、世界1,500以上のプレミアムスノースポーツ店で展開される見込みと案内されている。
アスリートのコメント
ベンジャミン・ライヒ氏の評価
オリンピック金メダル2回、世界選手権優勝3回を誇る元アルペンスキー選手のベンジャミン・ライヒ氏は、2016年の初期テスト時からBOAフィットシステムに注目していたとし、次のように述べているとのこと。
BOAはスキーブーツのフィット感と山での性能を根本から変えうると感じた。
デュアルダイヤルシステムはカフと下部シェル双方を包み込み、強いコネクションとスムーズでプログレッシブなフレックスを生む、とコメントしている。
サム・クッチ氏のコメント
フリースキー界で高く評価されるサム・クッチ氏も、ブーツを「スキー板とのもっとも重要な接点」と位置づけ、自身に合ったフィットの重要性を強調している。
BOAデュアルダイヤル搭載ブーツについては、体の延長のように感じられ、山のどこにいても自信を与える存在だと評価していると紹介されている。
BOAフィットシステムの主なコンポーネント
H+1ダイヤル
- ギア式のH+1ダイヤルを採用
- 締め・緩め両方向の微調節が可能で、滑走中でも短時間でフィット調整ができる構成とされている。
レース(ワイヤー)
- アルペンスキー用に設計されたレースは、100本以上のステンレススチールを組み合わせた構造
- 引張強度は約250kgとされ、軽量性と耐久性を両立した仕様とのこと。
レースガイド/リリースガイド/ターミネーター
- 精密配置されたレースガイドにより摩擦を抑え、足形に沿った均一な圧力分布を実現する設計としている。
- リリーサブルガイド(解放ガイド)は、カフの直感的なリリースと再締めを可能にし、足入れのスペース確保を助ける役割を持つとのこと。
- ターミネーターは、レース端部をブーツつま先部に固定し、打撃・凍結・水没など過酷な条件での耐久性検証をクリアしていると説明されている。
BOAによれば、これらすべてのコンポーネントが厳格な耐久性基準に基づいて設計・製造されており、スキー環境下での信頼性確保を重視した構成とのことだ。
企業としての位置づけと今後の方針
BOAのCEOショーン・ネヴィル氏は、スノースポーツ、アウトドア、アスレチック、サイクリング、ワーク分野などで、アスリートやブランド、小売事業者とともに人間のパフォーマンス向上に資するフィットソリューションを提供することをビジョンとして掲げていると説明している。
アルペンスキー領域への継続的な投資は、そのコミットメントを具現化した取り組みの一つであり、今後もトップブランドやトップアスリートと協働しながら、新たなソリューション開発を進める方針とのことだ。
考察:ブーツフィットが「競技性能そのもの」になる流れ
デュアルダイヤルBOAフィットシステムは、単に着脱を楽にする機構ではなく、「フィット=パフォーマンス」の関係を定量的に示した事例と言える。
足の甲のピーク圧軽減やヒールホールドの向上が、パワー伝達や安定性の数値的な改善につながるという検証結果は、今後のブーツ設計においてフィットシステムが“構造の一部”として扱われていく流れを強めそうだ。
また、複数ブランドが同じシステムを採用することで、トップレースから一般スキーヤーまで、フィット調整の考え方や操作感が共通化していく可能性もある。これにより、レンタルや買い替え時の比較もしやすくなり、アルペンスキーブーツ市場全体のユーザー体験の底上げにつながると考えられる。

.HYAKKEI編集部
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