
ありがとう。あなたのおかげです。 パタゴニア / メンズ・ナノエア・ウルトラライト・フルジップ・フーディ|町田直哉のGEAR REVIEW Vol.005
ハイカーの町田が山道具を使ってレポートする連載。その機能やフィールドでの使用感を確認し、その特徴を余すことなくレポートします。今回はパタゴニアの「メンズ・ナノエア・ウルトラライト・フルジップ・フーディ」を紹介します。
もくじ
はじめての100㎞
私、実は2024年の4月からトレランの大会に出ています。
とある取材でトレイルランナーの方のところにお邪魔したのですが、累計で出た大会のゼッケンが束でまとめられているのをみて「かっこいい!」と思ったからです。その日のうちに地元の大会をエントリーして翌月に初出走しました。
それから6大会を走り、ついに2025年2月。100㎞の大台を超える大会に出ます。
「大文字100」
京都の山科からスタートして大文字山のエリアを周回で走る大会です。
1つの目標として100マイル完走があるので、年始早いうちに100㎞以上の大会でリザルトを残しておきたかったのと、制限時間に余裕のある大会で走ってみたかったのでこの大会を選びました。
しかし当日思ってもみない懸念がありました。
それは大寒波です。
当日の天気ですが雪。気温は日の出前で-5℃ほど。
もちろんオールナイトのレースになるので寒さ対策は必須。
年末の大会も同じようなコンディションで、レイヤリングとしてはベースレイヤーにウールのフーディ。その上からレインで挑みましたが、少し心細いレイヤリングとなりました。
今回の大会は年末よりコンディションが悪く、流石に一番外がレインだけだとなぁ。
耐久性の高いアクティブ・インサレーションでいいのはないものか。。。
そんなときに頼れるウェアがあったのを思い出したんです。
メンズ・ナノエア・ウルトラライト・フルジップ・フーディ

「君に決めた!」
メンズ・ナノエア・ウルトラライト・フルジップ・フーディとは?
初代ナノエアの登場は2014年にさかのぼります。
当時の開発コンセプトは「行動中もずっと着続けられるウェア」。
想定していた利用シーンも、着替えやレイヤリング変更の難しい高所クライミングや山岳スキーに向けて作られたそう。昨今よく耳にする「アクティブ・インサレーション」の先駆けであります。
当時の革新的技術として「フルレンジ・インサレーション」と呼ばれる独自の素材を採用。
中綿もシェル素材も通気性を持っているため、運動強度が上がっても熱と湿気がしっかり抜ける。
それが市場に評価されて、ナノエアは浸透していきました。
その後も進化は止まらず、2016年にはクライミング特化の「ナノエア・ライト・フーディ」、
2017年には「ナノエア・ライト・ハイブリッド」シリーズが登場。
一時期販売が止まってしまったこともありましたが、2023年にはレギュレーターフリースを組み合わせて再登場。より運動強度の高いシーンにも対応できるようになりました。
そして2025年。「もっと薄くて熱ヌケのよいものを」。ファストハイキングや春夏の山行にも使いたいという要望に応える形で「ナノエア・ウルトラライト」シリーズがリリースされたわけです。

その名の通り、「究極の軽さと薄さ」を追求したアクティブ・インサレーション。
中綿となるフルレンジ・インサレーションはシリーズ最薄となる20g/㎡のもの。参考までにナノエアの60g/㎡、ナノエア・ライトの40g/㎡です。

組み合わせるシェルはナノエア・ライトの1.6オンスの30Dリサイクル・ポリエステルを採用。通気性、透湿性ともに高く、汗を素早くウェア表面へと運んで蒸発させる。また中綿同様にストレッチする素材で動きを妨げない。

そして製品をもって気づくのは「肌ざわり」のよさ。裏地も表地と同様のシェルを使用していますが、このシェルが柔らかで心地よいんです。
そうしてメンズ・ナノエア・ウルトラライト・フルジップ・フーディを実践投入することにしました。
いざ100㎞!
11時50分スタートの制限時間26時間。遅くとも翌日の13時50分には9周走り終える必要がある。
ひとまず目標は完走なので、細かいタイムなどは決めずに、「焦らずできる限り走る」
個人的に精神的に余裕がないと焦って余計疲れてしまうので「とにかく焦らず今この瞬間進み続けるという」心持ちが自分に合っている気がしています。
前半戦_1~3周(~36㎞)
焦らず進むとはいえ、調子がいいとスピードを出してしまう。
スピードを出すといっても初心者のソレなのでそんなにスピードもないのですが、1週目が想定より速いタイムで終了。「これはいい調子なのでは?」と思ったのもつかの間。
2週目でガクッとタイムを落としてしまいました。
調子に乗るのはよくない。2週目以降はとにかく一定のペースで走ることだけに集中しました。
この時のレイヤリングは、ベースレイヤーにウールのフーディ。パーテックスのレイン。日が出てるうちは全く問題がないので、日暮れ前にナノエアを投入する予定です。

ちなみに日中からかなり雪がちらついており稜線に出ると寒さを感じます。
中盤戦_4~6周(~72㎞)
3周走り終わったタイミングでレインを脱ぎ、ナノエア・ウルトラライト・フルジップ・フーディを投入。それと同時に日も暮はじめヘッドライトの明かりを頼りに歩みを進めます。
この時くらいからおそらく気温は氷点下になっており、稜線の道が凍結でスリッピーな状態になっていました。

私もこの後、8週目までで少なくとも20回は転倒しています。笑
後から聞いた話だと、転倒して軽い捻挫や心が折れてリタイアした人も多かったと聞きます。
幸い私はけがもなく、リタイアする言い訳つぶし策が功を奏して無事走り続けられました。
※私がリタイヤする言い訳は「足が痛い」「寒すぎる」「靴ズレがいたい」「時間切れ」などです。
この夜を超えられたのは、本当にナノエアのおかげです。ありがとう。
こんな気温でも1周で750mⅬほどドリンクを飲んでおり、汗もハイクアップ中心にかなりかいていました。
ベースレイヤーのドライナミックの嵩高のおかげで汗冷えを感じずらかったのと、ナノエア・ウルトラライト・フルジップ・フーディが風をシャットアウトし保温してくれたおかげで走り続けられました。
走っている間も蒸れている感覚は全くなく、夜の間は不快感を感じることはなかったです。
終盤戦_7~9周(~109㎞)
7周目の後半から夜が明けはじめ、精神的にも負担が軽くなりました。
8周目からタイムは変わらなかったのですが、一気に体が重くなった感覚がありかなり厳しい表情をしていたと思います。
8週目から少し気温が上がることを見越して、ウールのフーディを脱ぎました。
汗をかなり吸っていたのと重たかったので、ナノエア・ウルトラライト・フルジップ・フーディではなくこちらを脱ぎました。

その後昼前になると気温も5℃くらいまで上がったのですが、ナノエア・ウルトラライト・フルジップ・フーディは引き続き蒸れ知らず。
昨今のギアは本当に怖いものです。
そして9週目。この登り、尾根道も最後か、、ありがとう!という気持ちをかみしめながら歩を進めていた気がします。(覚えていない)
余裕だろうと思っていた制限時間も、最終的にはぎりぎりに。長い距離のレースはどれくらいタイムが落ちるのか大変参考になりました。
そして、最後の川沿いの道3㎞をゆっくり走りゴールラインへ。

大会を開催してくれた主催の皆さん。
夜通しエイドワークをしてくれたボランティアの皆さん。
家族のみんな。本当にありがとうございました!
ナノエアは本物です。
正直、20g/㎡という薄さが初体験で、大丈夫かなと思う気持ちもあったのですが、実戦で使ってみてその懸念は払しょくされたと思います。アクティブに使うシーンで着たままでもある程度の体温調整ができてしまうのは本当に心強いなと思います。
ハイパルスアクティビティであるトレランでそれが実証できたのも、ウェアの信頼になりました。
今後も、ガシガシ使っていこうと思います!
今回の記事で使用したアイテム

メンズ・ナノエア・ウルトラライト・フルジップ・フーディ
https://www.patagonia.jp/shop/mens/jackets-vests/insulated/active

.HYAKKEIを運営する会社の代表
.HYAKKEIではディレクター兼フロントを担当。仕事中心の生活で、煮詰まった時に行くソロ登山が趣味。
ストレス度合いに応じて登るコースの難易度が変化し、日帰りの丹沢ハイクから、厳冬期のエベレスト街道まで経験。