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緑の迷宮を抜けて、宮沢賢治が夜空を見上げた種山ヶ原へ|『文系登山』をはじめよう! #02

5月の太陽の強い陽射しを遮ってくれる木々のおかげで、窓を開けて走らせる車内はとても涼しかったことを覚えています。やがて現れる、だだっ広い高原に「種山高原 星座の森」なるキャンプ場。そこは、物見山ハイクと星空観測で知られる種山ヶ原(たねやまがはら)。宮沢賢治が星を眺めに通った山として知られ、大きな空と風の又三郎の像がぼくらを出迎えてくれます。

星座の森に泊まってのんびり山歩き&星空観賞

種山高原は、岩手県の住田町・遠野市・奥州市にまたがる、標高600m~800mの広大な高原地帯。最高峰は「物見山」で870mほどの低山ですが、平原のような山肌の延長には、北に岩手山・早池峰(いずれも日本百名山)、西に栗駒山・焼石岳など、360度の山々を眺められる大展望です。遠くまで見渡せる眺めは本当にすばらしく、花のよい5月ごろは、山頂周辺がお花畑のように賑やかになります。

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緑の迷宮から、花の異世界へ!

星座の森からは、最高峰の物見山まで往復1~2時間ほどの複数のハイキングコースがあります。なかなかお目にかかれない、緑に包まれた迷宮のような森を歩き、水辺の小径を歩き、樹林帯を歩きます。迷宮とはいいましたが、道はしっかりできているのでご安心を。散策コースは「種山ヶ原森林公園 散策ガイドマップ」に詳しいので、ぜひ星座の森で入手しておきましょう。

樹林帯を抜け、高低差を感じないくらいの高度になってくると、一気に視界が開けてきます。そう、まもなく物見山の山頂。そこまでの道のりはまさに花の楽園で、広大すぎる東北の山々の景観に圧倒されること間違いなし。これだけの“異世界”を歩けば、きっとテンションがあがります。宮沢賢治も、きっとこの雄大な景色を目に焼き付けて、その後の作品の創作に役立てたんでしょうね。
ちなみに、5月下旬からおよそ半月は、山頂付近が真っ赤なレンゲツツジの群生に包まれます。

モナドノック(残丘)から伝承の地を見渡す

山頂に至る道の途中、突如として現れる大きな岩。天に反り返るようなその岩に象徴される一帯(あるいはこの岩そのもの)を「モナドノック(残丘)」といいます。断層運動や浸食活動によって取り残されたように残る丘のことで、まさに物見山は残丘。岩手県内の早池峰や、茨城にある筑波山も、モナドノックの仲間です。

宮沢賢治は、この岩の下で夜露を凌ぎながら星空を観察していたのでしょうか。ここ種山ヶ原が作品に登場したり、「銀河鉄道の夜」をはじめ少なくない影響を与えたといわれる物語がいくつかあります。文学好きのハイカーなら、いつか目指したい種山ヶ原なのです。

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