“サウナ師匠”こと秋山大輔さんに聞いた、テントサウナを楽しむためのアレコレ
昨今、驚異的な盛り上がりをみせるサウナ業界。
サウナといえばジムや温泉施設などに付設されているイメージが強いですが、アウトドアフィールドで輝くサウナもあります。それがテントサウナ。設置場所の自由度が高く、川や湖のすぐそばにも建てられるこのテントサウナは、「究極の自然の楽しみ方」とハマッしまうアウトドア好きも多いのだとか。
そこで今回は、日本サウナブームの立役者である“サウナ師匠”こと秋山大輔に、テントサウナにまつわる疑問をアレコレとぶつけてみました!
もくじ
今回話をうかがったのは、
“サウナ師匠”としても知られる秋山大輔さん
20代よりサウナに開眼し、国内外の様々なサウナを経験。サウナ専門ブランド「TTNE」「サウナシュラン」立ち上げ、「ととのえの日」記念日制定、「サウナフェスジャパン」プロデュースなど、数多のサウナ関連プロジェクトを手掛ける。
テントサウナは自然と遊ぶコンテンツ
── 昨今アウトドア界隈で注目を集めているテントサウナとは、一体なんなのでしょうか?
「サウナ本来の楽しみを、直感的に味わえる方法」です。
本来のサウナは、野外で楽しむものなんですね。湖のほとりにある山小屋のサウナに入って、熱くなってきたら湖に飛び込む、みたいな感じで。これ、サウナ発祥の地フィンランドだと普通に行われているスタイルなんですが、まさにその“アウトドア”なやり方こそ、古来から伝わるサウナ本来の姿なんです。ただ、いくらサウナ好きだからといって、みんながみんな山小屋を建てるのは現実的に難しいじゃないですか。
そこで、フィンランド人が受け継いできた伝統的なサウナの楽しみ方を、簡易的に体験できるようにしたコンテンツがテントサウナ。金額やサイズ感も手頃で、初心者であっても手を出しやすい要素がそろっています。たとえば15万円程度のモデルもあるので、仲間と買ってみんなでシェアするのもあり。収納時は軽自動車にも積めるくらいコンパクトになるので、持ち運びも簡単ですよ。
── なるほど。たしかに自然の中でサウナを楽しむのに、いちばん安価で効率的な方法ですね。
昔は「サウナを持ってる」なんて言ったら、すごいお金持ちだったわけじゃないですか。2000万円くらいかけて自宅に設置するような人とか。でも今は、個人がリーズナブルな価格でサウナを所持できる。いい時代ですよね。
── サウナとしての質はどうでしょうか?
テントサウナのほうが、質感はいいと思います。いわゆる一般的な温泉施設のサウナって、どうも「硬い」んですね。それは熱源がガスや電気だったりすることに由来すると思うんですが、やっぱり自然の石や薪を使うテントサウナのほうが「柔らかい」というか、自分の蒸され方にも違いが出てくるんですよ。
これって料理と似たようなもので、電気が熱源の場合は「バンッ」って感じで肌の表面に熱が伝わります。いっぽう、薪が熱源ですと柔らかく、直感的。かなりマニアックな感覚で伝わりにくいかもしれないですけど(笑)。
── 薪で沸かす五右衛門風呂のような感覚なんですかね。
たしかに、似ているかも。給湯器でポンと沸かすより、薪をくべて沸かす五右衛門風呂のほうがお湯は柔らかいですよね。それと感覚は近いと思います。もちろん、薪の香りや自分自身がその雰囲気に没入している、という理由はありますけどね。
それでもやはり、熱源が薪で、ストーブの上に置く石やかける水、テントサウナから外へ出た際の風など、自然の環境下のほうが質感に優れているのは間違いないと思います。
プライベートな空間を確保できる
── 温泉施設などの一般的なサウナと比べて、その他なにか違いはありますか?
テントサウナって、言わば「究極のプライベートサウナ」なんですよ。
自分で建てたテントなので、当然、ルールも好きなように決められる。たとえば普通のサウナは、喋っちゃいけないし、寝転んじゃいけないし、お酒を飲んではいけないですよね。でも、テントサウナは違います。見知らぬ人から文句を言われることはありません。本を持ち込んでもいいですし、音楽をかけるのもOK。テントを建てる場所も自由なので、窓から見える景観の位置を好きなところに設定できます。
── そう考えると自由度がかなり高いですね。
あとは、温度と湿度でしょうか。自分でロウリュをしていいので、さまざまな人の好みに対応できるんですね。上が熱くて下がぬるい、という環境も、ロウリュの具合で調整することが可能。さらに、男女グループでも一緒に入ることができたり、一般的なサウナで考えられるような制限はほとんどありません。誰でも楽しめる自由なサウナが、テントサウナなんです。
水辺で行うべし!
── テントサウナには、どんなキャンプ場が向いていますか?
いちばん気にするべきポイントは、「テントを水源のそばに設置できるか」です。
川や湖、滝や海など種類はさまざまありますが、温泉施設で言うところの水風呂にあたる「水源」から離れてしまうと、テントを出たあとすぐに飛び込むことができません。水へ入る前に、身体が冷えてしまいます。
それに付随して、テントから水源への動線も重要かと。昼間は明るいため問題ないのですが、夜のキャンプ場は暗いので足元が見えないと危険。暗くなっても水源へ一直線に向かっていけるような配置を意識するといいですね。テント、水源、外気浴を行う場所。この3つのトライアングルをなるべく小さくして、上手い具合にレイアウトするよう心がけましょう。
── ほかに注意すべき点があれば教えてください。
これはキャンプでも同じですが、やはり天候でしょうか。テントは風に対して強くないので、しっかりとペグダウンすること。サウナストーン選びも気をつけたいですね。石によっては、熱すると毒素が出る種類もあるので。
一酸化炭素中毒を防ぐために、テント内の濃度を測ってくれる警報機を設置することも忘れないでください。自分で薪をいじって温度や湿度を調整するので、どうしてもそのへんの危険は伴います。
あとは、水分補給ですかね。せっかく飲み物を持ち込んでもいい環境だから、ビール片手に入っちゃうのもいいでしょう。もちろん飲み過ぎはよくないですし、身体のことを考える必要はありますが、「サウナでビールが飲める」という多幸感を優先するのも、僕はいいと思います。
師匠おすすめ!テントサウナが楽しめるスポット3選
── テントサウナ向きのアウトドアスポットを教えてください。
まずひとつ目は、東京都心から車で1時間ほどでアクセスできる「DAICHI silent river(ダイチサイレントリバー)」。
ここは「足りないことを楽しむ」がモットーのキャンプ場です。たとえばキャンプ道具のレンタルを行っていないなど、ともすれば不便な点も。しかし、その不便をあえて楽しむことで、なにか新しい発見ができるキャンプ場でもあります。
そのほか建築家の谷尻誠さんがデザインした茶室のサウナ「サ室」など、ここでしか味わえない体験も。会員制ですが一般の方でも利用できるので、おすすめですよ。もちろんテントサウナもOKです。
予約はこちら:ダイチサイレントリバー公式ホームページ
続いて二つ目は、三重県にある「飛雪の滝キャンプ場」。
ここには、「サ滝」と呼ばれるめちゃくちゃデカい滝があって、とんでもない水圧の滝行を体感することができます。
普通こういうところって、危ないので滝の近くには立ち入らせてもらえないんですが、ここは自己責任でOK(笑)。テントサウナを持っていかなくても既に用意されているので、楽ちんですよ。滝つぼで泳ぐこともできます。
予約はこちら:飛雪の滝キャンプ場公式ホームページ
最後にみっつ目が、大分にある「稲積水中鍾乳洞」。
ここは名前からもわかる通り、水中鍾乳洞を水風呂にできるスポットなんです。
水温が年間を通し、16度と一定なのも魅力。ブルーの光で演出されているうえ、水質も綺麗なので、新しい体験を求めている方にはぜひ行ってみてほしいですね。もちろんテントサウナも施設内に完備しています。
予約はこちら:稲積水中鍾乳洞公式サイト
サウナの魅力 = 身体が気持ちいい方向に進むこと
── 師匠、テントサウナについていろいろと教えていただき、ありがとうございました。最後に、サウナの醍醐味「ととのう」について、改めて教えていただけますか。
「ととのう」っていうのは結局、スッキリした状態であればいいんだと思います。個人によって感覚は違うので、ゴールへ向かって、いい方向へ進んでいる感覚があれば、それは「ととのう」という状態ではないでしょうか。
ただ、医学的に「ととのう」について考えると、あれって言わば「事故っている」状態らしいんですね。あんなに熱い空間に入ることが、まずひとつ目の事故。そのあとにキンキンの水風呂に入るのも事故。で、そんなふうにふたつの大きな事故をかけあわせると、アドレナリンが出るんです。
その状態で外気浴をすると、「身体はリラックスしているのに、頭は冴えている」という状態が生まれます。3セットも繰り返せば、大きな事故が多発する外敵ストレスによって、自分本来のポテンシャルを引き出せるのだとか。
ぬるいサウナとぬるい水風呂の組み合わせだと、どうしても「事故」ではなく「かすり傷」くらいにしかならないんです。だからサウナを突き詰めていくと、僕が以前やったようにテントサウナに入ったあと、流氷の水風呂に飛び込みたくなるんですよね(笑)。
──ありがとうございます。では、テントサウナについてひと言あれば。
テントサウナは、「いちばん簡単に手に入る自由」です。さきほども言いましたが、ルールを自分で決められるので、サウナの楽しみ方の幅が広がりますよ。注意すべき点に気をつけて、テントサウナという遊びを楽しんでみてください。
.HYAKKEI編集部です。
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