2018年7月20日 にOPENしたばかりのキャンプ場。「PICA Fujiyama」
今回の旅のテーマは、このキャンプ場をベースに富士エリアの魅力を探ること。何度となく富士山には登ってきたけれど、そういえば登山以外の楽しみ方を知りません。
果たして富士エリアにはどんな魅力が詰まっているのか?
まずは勝手知ったる富士山のハイキングコースを歩き、探ることにしました。
富士吉田口五合目。
大きな売店の横、短い階段をあがるとそこは御中道の入り口。御中道は山頂を目指さず富士山の五合目付近を横に歩く道。起伏も少ない富士山の自然を満喫できるハイキングコースです。
3分も歩くとそこはコメツガやシラビソが広がる亜高山帯の森。自然の世界。人の気配も消えていきます。
少し歩を進め、森の中心がダケカンバに変わると、間に茂るのはシャグナゲ。満開の花々がそこかしこで涼しげなピンクに染まっていました。
御中道の魅力のひとつは、亜高山帯の森をゆったり静かに味わえること。もうひとつは、富士山の大きさを存分に感じられる雄大な景色が楽しめること。見晴らしの良い場所は数箇所あり、その一つまでさらに歩を進めます。
御中道から北西方面には雲が広がっていました。雲の下には本栖湖が広がっているはず。
本栖湖は、精進湖、西湖、河口湖、山中湖と並び称される富士五湖の一つ。富士山の火山活動によって形成された、富士山とは切っても切れない湖です。世界文化遺産「富士山」の構成要素としても全ての湖が登録されているそう。
大きな湖がこれだけあるということは、水のレジャーもあるだろう。最近流行りのSUP(スタンドアップパドル)をやってみたい。盛り上がった編集部は、早速予約。お店の方いわく、早朝が最も景色が綺麗ということで明日は早起きすることに。
御中道を歩くと、ほぼ全てのダケカンバが斜面に対して横に生えている森がありました。冬の積雪の影響でしょうか。彼らはこの状況をどう捉えて生きているのでしょう。
さらに歩いていくと、溶岩が流れるままに冷えて固まった跡がありました。ヒトを虫ケラのように圧倒的な力で押し流してしまう富士山の力の片鱗です。ここには土ができないため、木も根を張れません。この溶岩流の先には富士の樹海が広がっています。溶岩の上に苔が生え、草が生え、やっと土ができて、生まれた森だけを樹海と呼ぶのだそうです。
富士の樹海には、溶岩でできた多くの洞窟があるそうです。洞窟体験も編集部全員未経験。早速、洞窟探検を予約したのでした。
明日のアクティビティが決まった編集部、今回の旅のベース地 PICA Fujiyamaへ向かいます。
PICA Fujiyamaの受付は、日本を代表する建築家「隈研吾」が設計した建物の中。
本棚には富士山の圧倒的な自然を切り取った写真集、動物達の写真集、自然の中で生きるヒントが散りばめた本たちが、綺麗にレイアウトされていました。
笑顔で出てきたのはPICA Fujiyamaの支配人杉田さん。少し話をうかがいました。
――PICA Fujiyamaの魅力はなんでしょう?
杉田さん「おおきく2つです。1つ目が受け身でも感じられる、静的に楽しむ自然です。至近距離で昼も夜も見られる大きな富士山は魅力的ですね。そして、星。まわりも暗いし、標高も約900mありますので、街中で見るのとは比べものにならないくらい綺麗です。加えて、近くに森でヤマネや昆虫などの希少生物を観察するのもいいですね。」
杉田さん「もう一つはアクティブな部分ですね。富士エリアにはいろいろアクティビティがたくさんありますから、ここはその時のベースになるキャンプ場だと思います。」
――来る方に特に楽しんで欲しいことは何でしょうか?
杉田さん「特にお食事に力を入れています。普段、ご家庭ではなかなか作れないものを、アウトドアの経験が全くないような方でも、ある程度こちらで下ごしらえして召し上がれるようにしています。こんなものが食べられてよかった。アウトドアってこんなに楽しいんだ、と思ってもらえれば嬉しいです。」
――キャンプって初心者の間は、必死で準備して、必死でご飯作って、必死で火起こしして、でも、美味しいごはんが作れなかった、なんて時もありますものね。最初のキャンプがこういうところで過ごせたら幸せですね。
杉田さん「そうですね。お客様にはなるべく手間をかけなくても楽しめる。そんなアウトドア体験を提供したいと考えています。」
受付をすませ、今晩お世話になるドームテントに向かいました。目の前には富士山が森の木々の上にその雄大な姿をそびえたたせています。夏の間は黒々とシルエットのよう。夜には登山者のたくさんのヘッドランプと山小屋の明かりが登山道そのままに連なるそうです。
ドームテントもキャンプサイトも隣との距離が確保されているのが印象的。生え揃った芝生に誘われて、思わず裸足になってしまいそうです。この景色を前に、レジャーモードからリラックスモードへと気持ちのギアが入れ替わってしまいます。
ドームテントは約3分の1が透明の窓。ベッドの枕の部分が丁度、窓になっています。「星空を眺めながら眠る」、そんな夢のようなことが簡単に快適にできてしまいます。
床はフローリングに絨毯。やわらかいクッション、座りやすい椅子、ローテーブル。靴置き、冷蔵庫、エアコンも完備。
外は森のフィットンチッドと広い空。中は快適な住まい。ドームテントというよりは、オシャレ過ぎる貸し別荘。アウトドアキャンプというよりは、ライフ・イン・ザ・ネイチャーといった感じ。
ドームテントの晩ご飯の場所は、受付をした建物の近く。スタッフの方が晩ごはんの食材を持ってきてくださいました。
■晩ごはんのメニュー (※実際のメニューと異なる場合があります。)
・焼きトマトとモッツァレラプラータのカプレーゼ
・魚介のアヒージョ
・信玄どり 100g
・焼き野菜5種
・ホタテ 1個
・海老 1匹
・カジキマグロ 60g
・富士桜ポークのポットロースト 150g
・バケット
・フォンダンショコラ
雄大な自然の中で、こんなに豪華な食材が出てくるだなんて、なんと有り難いことでしょうか。
食事する場所には、アメリカのたいがいの家庭にはあると噂のバーベキュー用ガスコンロ「WEBER」が設置されています。ガスだから着火もすぐ、火の調節も簡単です。
近くのコンビニで買った富士山の伏流水でできた日本酒。火が通った至福の食材たち。テーブルに並べて乾杯。シアワセとはこういう瞬間の積み重ねを言うのでしょう。
日も傾いてきたので、お酒を片手にドームテントへ移動。
おだかやかな天気。外でお酒を愉しみ続けます。
夜の帳が降りてくると、木のシルエットの向こうには、淡い闇。星が少しづつ浮かび上がります。ずぅーっと闇の向こうを見つめていると、どんどんと増えていく星たち。星はずっとそこにあったのに、気づけていなかったのは僕たちの方でした。
やわらかい日の光と賑やかな小鳥たちがうたう声。それがこの日の朝の目覚まし。まだ夜の冷たさが少し残る中、昨日予約をしたSUP体験を目指し山中湖へ向いました。車の窓は開けっ放し、エアコンをつけるにはもったいないほどに澄んだ空気です。
SUPの基本を教えてくれたのは、真っ黒に日焼けした長髪茶髪の程よい筋肉がたくましい、生粋のアウトドアマンでした。
砂浜でSUPの基本を学んだら、いよいよ本番です。
雄大な富士山の姿を望みながら楽しめること。これも富士五湖でのSUPの魅力。着いた時には、姿を隠していた富士山。いよいよ湖に入ろうというその時、応援するかのように姿を表してくれました。
最初は水の上に浮くこと自体に慣れませんでしたが、なんとか立てるまでになりました。
水の上に浮いて立つ。この浮遊感が気持ちいい。都会の日常では決してあじわえない感覚です。
湖だから波がいつもはありません。とはいえ風が吹くと波はたちます。波が立つと流されて落ちることもあります。
でも、山中湖の水深は富士五湖の中でも最も浅い。落ちても安心。
波が少ないこと、水深が浅いこと。
SUP初心者には山中湖は格好のフィールドではないでしょうか。
今回SUPでお世話になったお店、ウォータークラブの共同代表岩下さん。山中湖畔で生まれ育った生粋の富士っ子。MTBガイドやスキーの講師としても活躍していたそうです。お話をうかがったところ、富士山周辺でできないアウトドアレジャーはほぼない!とのこと。
岩下さん「水だったら、湖で、カヌーカヤック、SUPを手始めに釣り、フライボード、ウェイクボード、バナナボート、ホバーボード、ジェットスキーがありますね。静岡県側にいけばラフティングもできます。陸だったら、MTB、ハイキング、バギー、ケイビング、エコツアー。キャンプ場だってたくさんある。もちろん登山もありますね。空だったらパラグライダー。冬はスキーも、スケートも。カーリングもできますよ。」
それほどまでに自然と遊ぶ方法があったということが、まず驚きです。そして、その遊びがほとんど富士山周辺でできてしまうことも。富士山は実は一大アウトドア・レジャー天国だったのですね。
続いて編集部は次なる“遊び富士”、洞窟体験へ。
鉄板のように熱せられたアスファルト。痛いほどの日差しが一つ一つの毛穴に刺さります。待ち合わせ場所の駐車場は灼熱の世界でした。
現れたのは10人乗りのハイエース。運転していたのは小さな女の子。本日のガイド“シッチー”。
駐車場でアツいアツいとぼやきながら、用意してくださった長袖長ズボンのツナギを着ます。ヘルメットと手袋もそれぞれに配布されました。
駐車場から15分程移動。車から降りて樹海の入口へ。もう涼しい。森とはなんとやさしい存在なのでしょうか。
樹海の入り口で、シッチーが富士山の成り立ちや青木ヶ原の樹海について説明をしてくれました。いま見ているこの木は、ヒトの感じられる時間をはるかに超えた、悠久の時の流れの末にあるんだとか。壮大な時の流れと、今、この森と出会えた奇跡を感じることができました。
森の木々を解説しながら歩いてくれたシッチー。樹海の土について解説している時、倒木から剥がれ落ちた樹皮を拾い上げました。
しっちー「こういう倒木が段々と腐って、土になっていくんです。だから、保水力もある。ちょっと見ていてくださいね。」
しっちーは拾い上げた倒木の樹皮を握りしめます。
水が一滴また一滴と出てきました。次の世代へと命をつなぐため、死してなお、水を蓄え、土となる大木。我々はこの大木のように生きられているでしょうか。
さらに森の中を進むと生えている木の種類や太さ、大きさが明らかに変る場所がありました。木漏れ日の入り方も明らかに違います。
その場所で森の成り立ちについて、しっちーが教えてくれました。森が最終的な姿になるための時間、700年。一方で樹海はできてからもう1200年。富士山から流れ出た溶岩の上に生まれた樹海は、まだ森の最初の姿なのだそうです。
道を少し外れると、突如、大きく陥没したかのような空間が現れました。巨大冷蔵庫を開けた時に感じるような、冷たい風が吹き上がってきます。
ヘルメットと手袋を装着してから、陥没した穴の中へと進みます。まるで透明な布でも張ってあるかのように、温度が急に変わる場所がありました。
洞窟の入り口。ぽっかりと黒い闇が口を開いているかのようです。ヘッドランプがついたのを確認して、用心深くハシゴを降ります。
ヘッドランプに照らされた部分だけが明るくあとは真っ暗。温度もどんどんと下がっていきます。
少し奥には蚕を保存したり、氷を切り出した時の古い看板と柵が腐ったまま落ちていました。電気製品がなかった頃は、自然を利用し生活していたのですね。自然と共に生きるのが当たり前の世界だったのでしょう。
洞窟の一番奥は広い空間。下はスケートリンク。このリンクの水深は15mあるのだそうです。
スケートリンクの床からは、タケノコのような氷筍(ひょうじゅん)が生えていました。上から落ちてきた水のしずくがそのまま凍って固まってタケノコのようなカタチになるのだそうです。
最深部まで歩いたのは20分ぐらいでしょうか。それだけの時間で、もう指先まですっかり冷え切ってしまいました。この少し上の地面は30度を超えているだなんてとても信じられません。
20分も真の暗闇にいると光が恋しくなってきました。洞窟を出て、光に包まれると、ほっと生き返る心地。甦ったような気がします。
洞窟の奥で出会った世界は、これまで僕らが出会ったことのない暗闇の冷たい世界。SUPで出会った世界は湖面に立つ浮遊の世界。
富士山といったら登山でしょ。そうとしか考えられてなかった自分達の世界がいかに狭いものの見方だったのか。
キャンプでゆったりと“眺め富士”を楽しむもよし、富士山が生んだ自然の神秘の中で“遊び富士”を楽しむもよし。
もっと自由に遊んでいいんだよ。大きな富士山が教えてくれた2日間となりました。
是非、みなさんも富士山の自然を遊びつくしてくださいね!
(写真:茂田羽生)
●お料理も施設も最高!アウトド初心者大歓迎。
キャンプ場: PICA Fujiyama
HP: https://www.pica-resort.jp/fujiyama/
利用料金: https://www.pica-resort.jp/fujiyama/plan/charge/
アクセス: https://www.pica-resort.jp/fujiyama/access/
住所: 〒401 -0301 山梨県南都留郡富士河口湖町船津 6662 -10
●PICA Fujiyamaをはじめ 富士山エリアにも複数のアウトドアリゾートを展開
PICAリゾート
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