等身大を大切に。実体験から築いていく優しい山のお店『山道具とごはん 麓』京都

2019年。京都の修学院という場所に、山のお店が誕生しました。

それが『山道具とごはんの店 麓』。“毎日食べられる”をテーマに地元修学院の食材を中心に使用して作る定食や手作りのトレイルバーを提供。また、厳選された山道具の販売と、京都の登山シーンを語るには早くも欠かせない存在になってきています。

ポリシーはシンプル。自分たちが使って「良い」と思ったものだけを提供

スプーンからテントまで厳選された商品が並ぶ

お店に入ってまず目についたのは山道具。

商品数は決して多くはありませんが、ご友人が作られたという帽子等の小物類から、海外ガレージブランドの登山ギアなど、セレクトの幅は広い。

「山道具は京都の里山で使えるものをセレクトしていて、基本的には自分も普段使っています。」

山道具とごはん 麓 のオーナー 荘村 健太郎さん

「UL(ウルトラライト)は念頭に置きつつ、使っていて愛着が持てるかどうかも重要だと思っています。」

そう語る健太郎さん自身、大阪出身の登山者。もともとは自転車が好きでしたが、関西の山を自転車で巡るうちに、登山にはまっていったといいます。

-なぜ、ご自身で使ったものだけを扱われるのでしょうか?

「アパレルで働いてた時期がありましたが、着たことのない服もあるし、“何か分かりませんが、これいいですよ”みたいな感じで売らないといけないのは、結構ストレスだったんですよね。」

1畳ほどの山道具の区画。商品がぎっしり。

「使ったことなくても売れるんでしょうけど、自分のお店で扱うからには、“自分で1回使ってみないとな”と考えています。」

そうやって、自分で使ってみて良いと思ったものだけをセレクトしているそう。物腰し柔らかく語る健太郎さんの語り口からは、人さまからお金をいただいて価値を提供する“商人(あきんど)”としての強い責任感が垣間見えます。

すべては登山者のためのサービス設計

営業時間や食事にも、登山帰りのお客さんを想ったこだわりがありました。

お店に入る曲がり角に置いてある手書きの看板が目印

「登山口にあるお店なので、14〜15時くらいに下山した人たちがお腹を空かせて来ることが多いです。登山経験者の僕からすると、下山後にはスイーツより、どんな時間帯でも美味しく食べられるご飯、味噌汁におかずなのかな、と。僕らはランチも11時〜18時(土日祝は~19時)まで提供しています。」

ある日のランチプレート

麓のランチは、至ってシンプル。

味噌汁、雑穀米のご飯、ワンプレートのおかずで構成された定食です。地元京都の有機食材を中心に使用しており、味付けも素朴。

フランチャイズのカフェ経営時代に感じた違和感

地元食材へのこだわりは、健太郎さんが昔経営されていたフランチャイズ形式のスイーツカフェでの経験にあるそうです。

「そのときの店も食材にこだわっており、全国の食材を厳選して使っていました。最初はいいなと思っても、過剰でしっかりした包装はゴミも増えるし、輸送コストもかかる。残ってもスイーツばかり毎日食べられないし、お客さんが少ない、来ない日は殆どロスみたいなこともありました。」

そんな中で、目を向けたのは京都の食材でした。

「京都の周辺を見たら、おいしい食材がいっぱいあるのに、わざわざ全国から取り寄せてやるのは違うなあって。やっぱり、地元の食材を使うのが一番いいんじゃないかなと思うようになりました。」

提供する料理は地元京都でとれた新鮮な野菜を使用

また、営業時間外の仕込みなど長い労働時間が影響して体調を崩すときもあったといいます。

「自分たちで食べてしまえるものを提供する店だったらロスも減るし、そもそも毎日自分が食べて健康でいられる料理を提供するのは、一番責任がとれるやり方じゃないですか。」

〈お客様〉〈生産者〉〈環境〉、また〈自分たちの健康〉への責務が、定食の食材一つ一つから感じられます。

「地図を作り上げていく感覚」京都の裏山ハイクで気づいた新たな登山の楽しみ方

健太郎さんは、店外でも山に関する取り組みをされています。

健太郎さんは、同じ京都をフィールドとして活躍されているMINIMALIGHTの羽地慎吾さん(https://hyakkei.me/articles-1033/)、山食音の電気さん(東さん)と共に、京都の裏山を案内するイベント「kyoto urayama hiking」(以下:kuh)を運営されています。

kuhでは京都の裏山、エリアでいうと五山の送り火で有名な大文字山の北斜面側に広がる山深いトレイルを参加者と共に歩きます。簡単な地図読みをしながら地図に載っていないルートを自由に歩く山歩きを提案し続けています。

近いコミュニティに深い感動を。麓が描く二つの展望

健太郎さんが考えているこれからの展望はなんでしょうか?

健太郎さんは二つ教えてくれました。

「一つは野菜農家さんとの繋がりを持ったハイキングのイベント。農家さんの畑近くのローカルな山を歩いて、地元の食材を使った料理を収穫して食べてみたいなことを考えています。自分の住んでる京都の山っていうのが、より地元を身近に考え、感じるんじゃないかなと。」

「もう一つは、麓を始めるまで京都の東の山を中心にやっていた“行商”を再開して、今度は京都のもっと色々な山でもやってみたいですね。これまで通り自転車で売るのはもちろん、背負子(しょいこ)を背負って山を登りながら、仲間が作ったお菓子も売れたら面白いなと思っています。」

行商の様子

自分たちが良いと思ったものを、手渡しで消費者に丁寧に届けていく。等身大で、信念をぶらさずに自分たちの地図を広げていくお店、それが『山道具とごはん 麓』なのかもしれません。

そこは比叡山の山歩きを楽しむ人々にとってのベースキャンプだった

営業時間に差しかかったころ、お店の開店とともに1人のお客さんが入ってきました。

YAMAPのスタンプラリーで麓を知ったという方で、珈琲を注文するやいなや、山談義が始まります。

自分たちが使って「良い」と思ったものだけを提供する。

“言うは易く行うは難し”なスタイルを貫く『山道具とごはん  麓』。

“当たり前”といわれる固定概念にしばられずに自分たちの感性を大切に、進化を遂げていく『麓』がこれからどのように進化していくのか目が離せません。

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山道具とごはん 麓

営業時間:平日11時-18時(17時半Lo) 土日祝日11時-19時(18時半Lo)
定休日:火曜日 水曜日
電話番号:090-2198-0898
MAIL:rokukyoto@gmail.com

ご予約、お弁当の注文も承ります。お気軽にご相談ください。

※営業時間の変更、臨時休業もございます。詳しくはinstagram、営業日カレンダーをご覧ください。

WEBサイト:https://rokukyoto.shopinfo.jp/
Instagram:https://www.instagram.com/roku_kyoto/?hl=ja

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ライター:
.HYAKKEI編集部 町田