体験レポート

熊野古道中辺路徹底ガイド – もじゃまると歩く、人生を変える巡礼トレイル【前編】

世界に誇るトレイルルートとして知られる熊野古道”中辺路(なかへち)”。

その中辺路の1セクションである滝尻王子~熊野本宮大社を歩いてくださった、もじゃまるさんにインタビューをさせていただきました。世界中のハイカーから羨望の眼差しを向けられる中辺路の見どころや魅力を聞いてきました。

人生が変わる巡礼トレイル 熊野古道中辺路

2024年に世界遺産登録20周年を迎える熊野古道。古くは院政期に熊野本宮大社、熊野那智大社、熊野速玉大社を巡礼することが流行り「蟻の熊野詣」と呼ばれたほどに親しまれた道です。

.HYAKKEIでは熊野古道を含む「紀伊山地の霊場と参詣道」の世界遺産登録20周年を記念して特設ページを開設しています。
中辺路を中心とした熊野古道トレイルを楽しめるコンテンツをご用意しております。

特設ページ「人生が変わる巡礼トレイル 熊野古道中辺路」

その中の企画として、熊野古道中辺路4泊5日。熊野三山参拝フルトレイルの総距離約80㎞を、3名のハイカーに歩いてもらいました。

【前編】滝尻王子~熊野本宮大社:もじゃまるさん(YouTuber兼 sankakustand店主)

【中編】熊野那智大社~本宮大社:JINさん (YouTuber)

【後編】熊野速玉大社~那智大社:安涼奈さん(YouTuber兼 モデル)


それぞれ、各人のYouTubeチャンネルにてトレイルの様子がうかがえるのでぜひ見てみてください。

もじゃまるさんの山行記録

滝尻王子~近露
約12.5㎞/△1,166m・▽954m

近露~熊野本宮大社
23.0km △1,614m ▽1,862m

11月14日(曇りのち晴・17.4℃/7.5℃)
11月15日(曇りのち晴・18.9℃/8.0℃)

純粋な山歩きの楽しみが詰まった道

左:もじゃさん 右:まるさん

―――今回は、中辺路歩いていただいてありがとうございました。

いえ。とんでもないです。ありがとうございました。こちらこそ機会をいただいて。

―――熊野古道を歩いたご経験はおありでしたか?

なかったんですよ。いつかは歩いてみたいな~って思っていたんですけど、なかなか伊豆からだと距離的にも遠くになるのでまあいつかみたいな感じでした。今回お話しいただいて「よし、今だ」ってちょっとわくわくしてたんですよね。実は。

―――そうだったのですね。熊野古道に対してどのような印象をお持ちでしたか?

やっぱり世界遺産っていうのと、古道歩きっていうことで歴史とか感じながら歩くんかな~っていう。普段あまり歴史を見ながら登山するっていうことをしないので、もうちょっと大人な人の遊びなのかな~って印象はありましたね。

―――確かに。文脈を楽しむ登山という側面はありますよね。

そう。だからそういう感じなのかなと思ってたんですけど、実際行ってみるともちろんそういう面もありつつ、低山歩きが好きな方とかにも、見どころがあったりするじゃないですか。

茶屋があったり、景色が広がるところがあったりとか。そういう、歴史っていう面だけでなくって普通に山歩きとしても楽しいなあっていうのは感じました。

熊野古道“中辺路”。世界的に注目されている「歩ける世界遺産」

―――ありがとうございます。今回、中辺路を一部歩かれたと思うのですが、コースについて簡単にご説明いただけますか?

今回、滝尻王子というところからスタートして近露で一泊して、最後に本宮大社を目指したっていう1泊2日の山行でした。総距離35kmくらいでしたかね。

はじめ総距離見た時に「ちょっとこれ1泊2日で大丈夫かな」ってドキッとしたんですけど。笑 自分たち普段から登山していて慣れているっていうのもありますが、ちょこっと登山やってますという方でも意外と平坦なところも多くて歩きやすいんじゃないかなと思いました。

【参照】山と渓谷オンライン:もじゃまるさんが2日間で歩いたコース。35.5km △2,780m ▽2,816m

―――なるほど。

あと、2日目ですが本宮大社の手前くらいに結構アップダウンがありました。山を3つくらい超えたと思うんですけど、そこが熊野古道らしい雰囲気にも変わったりするので良かったですね。

―――2日目は高低差も1,000mを超えますもんね。

あとは、全体を通して樹林帯だなっていう。予想はしてたんですけど。わりかし苔むしてるなっていう感じはありました。

そうだ、海外ハイカーさんもすごく多くてびっくりしました。

―――話した人はいましたか?海外のハイカーさんで。

何人かイタリアの方とか。あとポーランドかな?「なんで来たんですか」って聞いたら「世界遺産だから」って言ってたりとか。世界的にも熊野古道って有名なトレイルなんだなって、改めてすごいなと思いましたね。

道中、他のハイカーと会話するもじゃさん

Day1:滝尻王子~近露2つの「見どころ」と1つの「ツッコミどころ」

出産を考えられている方は必見「胎内くぐり」

―――ありがとうございます。そしたら初日の滝尻王子から近露までの歩いた過程についてちょっと聞いていきたいんですけど、まず滝尻王子まではバスで行かれた感じですよね。

そうですね。はい。

―――初日は近露までいかれたと思うのですが、なにか途中で記憶に残っているところとか、見どころの部分ってあったりしましたか?

ありましたよ。胎内くぐりって言うのがわりかし序盤にでてくるんですけど、中通ったら安産祈願ができるって書いてあって。

まるがテンション上がって「よっしゃ!いくぞ!」とか言ってやってたんですけど、やっぱり子供産むのは大変なんやなっていうのを実感したらしいです。笑

「これもう無理かも~」ってめちゃめちゃ頑張ってましたね。

参照】胎内くぐりにチャレンジするまるさん。これはtake2。

―――動画でほぼ挟まってましたもんね(笑)

あれ結構大変やったらしいですよ。一回ザック背負った状態で行ったらひっかかってどっちにも行かれへんくなって、ザック脱いだ状態で再チャレンジしたんですよ。

―――動画に出ていたのはザックないバージョンだったんですね。

そうですね。尺が長すぎたので。尺の関係で(笑)

空からみる熊野の魅力「高原霧の里休憩所」

あと、そこから30~40分くらい行ったところに休憩所があったと思うんですけど、そこがパッと景色が広がって、水車とか田園風景とかきれいでした。

星も綺麗に見えますと看板に書いてたので夜もきれいなんだと思います。ずっと樹林帯やったんで景色が開けた瞬間に気持ちがファっと晴れましたね。

参照】高原霧の里休憩所からの景色

―――なるほど。高原霧の里休憩所ですね。

ぼくら行ったシーズンは雪残ってなかったんですけど、雪のシーズンもすごいいいよみたいな看板があって冬も行ってみたいな~って思いました。

あなたは見つけることができますか?「牛馬童子像」

―――ありがとうございます。そのほかはいかがですか。

すごい記憶に残ってるのは、牛馬童子像(ぎゅうばどうじぞう)

一回熊野古道を出て休憩所みたいなところに(道の駅 熊野古道中辺路)あったんですよ。あ、これ結構でかいんやな~って言ってて、でまたルート戻ってしばらく歩いてたら牛馬童子像こっちって矢印書いてて行ったら実際は手のひらサイズのめちゃくちゃ小さいやつやったんですよね。

―――(笑)

参照】「牛馬童子像」は花山法皇の熊野詣の旅姿であるとも言われる。田辺市指定史跡。

本物めちゃくちゃ小さかったです(笑)ほんとはねぇそこがなんか物語があって好きな人はそこで「こんな話があるんやみたい」な感じで盛り上がるポイントなのかもしれないですけど、自分的には「こっちが本物かい」みたいな(笑)そこはちょっとテンション上がったりしました。

―――ツッコミどころってことですね(笑)

そうですね~。なんか要所要所にお茶屋さんとか町が出てくるんで、そういうところを散策するのもすごく楽しかったですね。

―――どこか寄った茶屋はありますか?

そうなんですね。なにか注文しました?

団子は食べなかったんですよ。晩御飯近かったんで、団子ちょっとやめとこか言うて、なんでもないポンジュースみたいなの飲みましたね。

参照】道の駅 熊野古道中辺路にて

でもわりかし補給場所がしっかりあるんで、ちょっとこう荷物いっぱい背負うのが不安やなみたいな人も補給しやすいんですよ、あのルートは。

day1 近露 宿「近露 櫻の園」

とにかく晩御飯が豪華

―――近露には1日目の何時くらいに到着されましたか?

近露は15:00くらいですね。

―――着いてからは何をされてたんですか?

前日は夜まで仕事してから長距離運転で、到着してから寝ずに歩いたんで、ちょっと1時間くらい仮眠してましたね。それからお風呂入ってってやってたら、ちょうど晩御飯作ってくれる宿だったので、すごい豪華な食事を出していただいて。

―――どんな晩御飯ですか?

近露のあたりでとれた川魚とか、そこの旦那さんが作ってる梅酒とか出してくれましたよ。お酒もおいしいですよ~って言っていただいた旦那さんが漬けてる梅酒とか。あと和歌山の地酒とかいただいて、なんやかんやしてるともうすぐ寝てましたね。

参照】実際の夕食

―――すごい。至れり尽くせりだったんですね。

ごはんであったりとか、お部屋がすごい広くて、海外のお客さんが多いらしいんですよ。で、そういった方々ファミリーで来たりするらしくて、そういう方々にも対応できるようにお部屋が広めになってるとかおっしゃってて。ご飯の量もね申し分ないくらい出ましたし。

宿泊者によって作り変える朝ごはん。そしてお弁当まで。

―――なるほど。翌朝の朝食も結構ボリュームあったんですか?

そうですね、ボリューム結構いっぱいでしかもお弁当も持たせてくれて。食に関しては近露周辺はそんなに充実してるわけじゃないんですけど、宿を利用させていただいて食事付けるともう十分かな、というくらいの満足感はありましたね。

―――朝ごはんは何が出ましたか?

朝ごはんもそれぞれの国の方に合わせて作ってるらしくて、日本人が来た時には日本食出すらしいんですけど、海外の方来たときはパン食にしたりとか国によって変えてるって言うてましたね。

―――えー!すごいですね。

味噌汁が海外の方だとしょっぱすぎるらしくて。

それに加えてお弁当も持たせてくれたんですもんね。

参照】実際のお弁当

そうですね。ボリューミーな唐揚げ弁当みたいなの持たせてくれたんですけど。ほんとに熊野古道の後半は前半と違って補給場所が結構少ないので助かりましたね。

朝一もお店あんまりやってないので。

Day2 近露~本宮大社 迫りくるアップダウンと熊野の魔物。

熊野らしい歴史と林道を進む

―――次の日出発は何時くらいでしたか?

8時くらいだったと思います。

―――近露を出発して二日目。二日目の方が距離的には長かったんですかね?

そうですね。二日目の方が距離が長くてアップダウンもちょっとあったかなって感じですかね。

宿のご主人が安全祈願をしてくれる

―――二日目に際して一日目と装備変えた部分ってあります?

はい。二日目の方がアップダウンが激しいということだったので、ウェアをよりアクティブな汗いっぱいかくことを予測してたのでちょっと薄くしましたかね。

一日目に着てたやつをしまって、その中に着てたやつで歩いてみたらジャストくらいでしたかね。

―――なるほど。気候的には暑くもなく寒くもなく、不快な感じではなかったですか?

そうですね。ほんとに運動量が多い山行やったのでちょうどくらいでしたね

―――ありがとうございます。そこから二日目歩いていくわけですが、長かったと思うんですけど印象に残っていることとかってありますか?

二日目の方がイメージしていた熊野古道感というか、石畳があったりとか苔むしてたりしている箇所が多かったです。

あと歴史的な部分では看板での解説が多かった印象です。距離は長いんですけど立ち止まって写真撮ったりとか、読み物読んだりする時間が二日目の方があったかなという感じがしますね。じっくり楽しめたかな。

道中、名所には看板による解説がある。

迫りくる妖怪「ダル」

―――なるほど。なにか記憶に残ってる読み物とかあります?

その魔物がこけさすから気をつけろよ的な。なんだっけな…

蛇形地蔵かな。そこがなんかちょっと気を付けていかないとなあみたいな話をしてたんですけど。

参照】蛇形地蔵。「ダル」という妖怪の言い伝えがあり、憑りつかれて遭難する人がいたとされる。

―――大丈夫でした?

なんとかもうめちゃめちゃ気を付けたので。大丈夫でした。

――― (笑)

魔物に勝ちましたよ(笑)

―――無事帰ってきてくれて良かったです(笑) その後、アップダウンはなかったですか?

アップダウンね、結構あったんですよ。

―――そうですよね。体力的には大丈夫でした?

体力的には大丈夫でしたよ。ただ自分ら長い距離とか歩くの好きでよく行ってるもので大丈夫だったんですけど、慣れてない方だと結構きついんじゃないですかね。

アップダウンがあるので。ちょうどアメリカのトレイル終わったくらいだったので、体力いちばんあるときだったので。無双状態のときだったのでぜんぜんサクッと行っちゃいました。

熊野を歩くハイカーに祝福を

参照】熊野本宮まで残り数百メートルの「ちょっとよりみち展望台」

あと後半なんですけど、熊野本宮にあるでっかい鳥居あるじゃないですか。あれが見えるビュースポットみたいなのがあったんですけど。

そこは皆さん立ち止まって写真撮ったりとかしてて、熊野古道の僕らが歩いたルートの中でもかなり印象的なバーンと広がる景色が見えたので、ここまで来たかっていうちょっとこう達成感もありつつ、感動しましたね。

前編完結。熊野古道を歩くのにあると助かるものとは?

―――ありがとうございます。今後熊野古道歩きたいな~って、中辺路歩きたいな~って思っている人に対して、気を付けておいた方が良いこととかなんてアドバイスしますか?

補給場所がしっかりある区間とない区間ていうのがあるので、事前にしっかり練っておくことも必要です。

意外とアップダウンがあって運動量が多いんですけど、そのあとこうやっぱり樹林帯なんで冷えがグッとくるので、しっかりと汗を吸い取るような防寒具、フリースであったりとかそういったものを持っとくと安心かもしれないですね。

―――大変参考になります。ありがとうございます!

まとめ

・樹林帯で日の当たらない箇所があるので、フリースなどの保温着があるとよい

・2日目は特にアップダウンがあるので汗がたくさん出ます。

・2日目は補給できる箇所が少ないので、行動食や水分をしっかり持っていく必要がある。

今回の記事で取り上げた場所

今回もじゃまるさんのトレイル内に出てきた施設は下記です。

宿:近露 櫻の園

休憩所:道の駅 熊野古道中辺路

中辺路を歩くうえで知っておくと役立つ情報

また知っていると熊野古道をより楽しめる情報をまとめておきました。

是非一度、こちらを見てから熊野古道を歩いてみてください。

押印帳

和歌山県内の参詣道「熊野古道中辺路」「熊野古道紀伊路」「熊野古道大辺路」「高野七口」をすべて踏破された方には、和歌山県より証明書が発行されます。

4つの押印帳を入手後、各地の押印所でスタンプを押してください。

https://www.sekaiisan-wakayama.jp/walk/ouinchou.html

熊野古道世界遺産登録20周年記念「人生が変わる巡礼トレイル 熊野古道中辺路」特設ページ

今回、.HYAKKEIでは熊野古道の世界遺産登録20周年を記念して特設ページを開設しています。はじめての方に向けた熊野古道についての解説や、道中の宿・お店の情報。また有名ハイカーによる中辺路トレイルの動画など、これから熊野古道を歩く人にとっても、もう1度歩く人にとっても発見のあるページに仕上げています。是非一度ご覧ください。

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ライター:
.HYAKKEI編集部

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