去年、開業した時にオープニングノベルティとして「てぬぐい」を配りました。
「てぬぐい」を選んだのは『一石山鳥』なお店を作ろうとした時、このコンセプトを象徴する道具はなんだろうと考えて最初にパッと思い浮かんだものだったからです。
登山を通して「てぬぐい」を使い始めるまで、汗を拭くといえばタオルでした。
タオルは汗をガンガン吸ってくれるし、なんというか、あの優しい肌触りが好きです。
だけど「てぬぐい」を使い始めてからは、その万能さにタオルの上位互換になってしまいました(僕の中で)
ちなみに風が強い日に写真を撮る時は、よく「てぬぐい」をかかげます。
写真を見返した時に、風のことも思い出せるからです。
風、好きっす。
さて、そんな「てぬぐい」はどのように一石山鳥なのか?
登山の時は首にかけることが多いです。
汗を拭くのはもちろん、夏などの暑い時期は水場や沢で濡らして清涼感を楽しむのですが、水を吸い過ぎないので乾きやすいのが嬉しい。
「てぬぐい」の端が縫われていないのは、水はけを良くして乾きやすくするためでもあるそうです。
日差しが強い時、稜線などの日を遮るものが無い場所では帽子と頭の間に「てぬぐい」を挟めて日よけとしても使えます。
バーナーの調整つまみやクッカーなどは使っているとものすごく熱くなり、素手で触れないこともあります。
アウトドアの服は化学繊維のを使ったものが多く、熱に弱いこともあります。
そのため、化学繊維のアウトドアの服越しに熱いものを触るよりも何回か折った綿の「てぬぐい」をミトン代わりにした方が手にも服にも優しいです。
薄くて軽いのでコンパクトになり、ハンカチ代わりとして使うことができます。
立秋は一ヶ月以上前に過ぎ、秋分の日はもう間近。
なのに汗ばむ日はもう少し続きそうです。
一般的なハンカチよりも面積の大きな「てぬぐい」で汗をガッと拭きたくなることもあります。
汗だけじゃなくて涙もたっぷり拭えます。
「てぬぐい」も折り紙のように「折り方」があります。
その折り方の中に「キセル入れ」があり、それがとても重宝します。
お弁当などのカトラリー入れとしても便利。
風呂敷よりも小さいので、ちょっとしたものを包むのにお勧めです。
骨折などをした時に添え木を固定するのに使えます。
裂傷をした時は止血にも使えます。
粉塵が舞っていればマスクとしても使えます。
もちろん「てぬぐい」じゃなくてもロープやベルトやタイツなどでも固定することはできます。
でも、山や街がいつイザという場になるか分かりません。
そんな時に常に持っている「てぬぐい」の汎用性は心強いです。
避難先の体育館。
停電している部屋。
ライトはとても重要な道具。
ところが、明かりが強すぎると眩しいことがあります。
その場に慣れたら安全第一な範囲で、ほんの少し明かりをやわらげるだけで自分の目にも周りにも優しい環境が作れます。
おろしたての「てぬぐい」の端は、よくほつれます。
でも数回使っていくと、だんだん落ち着いていきます。
これを「育てる」と言うのが合っているか分かりませんが、自分が使いやすい落ち着いた状態に育っていく「てぬぐい」はなんとも愛着のある道具になります。
僕は、そんな「てぬぐい」が大好きです。
イッセキサンチョウ。
アウトドア、普段使い、イザという時。この三つのシーンから見た一石三鳥な道具を、仙台にあるインドア&アウトドア雑貨店ENstyleの川村峻介が紹介する連載コーナー。
アウトドアを絡めて紹介していくので、一石三鳥の三を山としました。