こんにちは!.HYAKKEIライターの弥山ひかりです。
今日の屋久島は、晴れです。
これまで、深い森を歩く白谷雲水峡、奇跡の岩を目指す太忠岳と、いずれも日帰りで行ける、とっておきのトレッキングスポットをご紹介してきました。
ラストは、屋久島古来の歴史を感じながら、静かな森の中を神秘の屋久杉に会いに行く、「龍神杉」ルートをご紹介。あまり人に会わず、とにかく静かに登山をしたい人にとって、非常に魅力的なコースです。
標高1,370m地点にある龍神杉。そばにある風神・雷神杉を加えた「三神杉」が佇むこの領域は、とても神秘的な雰囲気が漂います。屋久島の森本来の神々しさが感じられる不思議な場所です。
登山口→龍神杉 往復:約9〜10時間
龍神杉に続く登山道は、もともと益救参道と呼ばれる、岳参りのためのルートでした。2007年より解放され、苔むす石畳やトロッコ道の枕木跡など、古くからの森と人との関わりを感じさせる、風情ある道が続きます。ただし、徒渉ポイントが2つあるので、増水時には引き返しましょう。標高差1,100mの急登が続くため、健脚向きです。
森の入り口からしばらくは、心地よい沢の音を聴きながら歩きます。
石畳がこれだけ苔に覆われているところを見ると、ここを訪れる人が他の登山道に比べて少ないこと、同時に屋久島の森の再生の力強さが伺えます。かつて岳参りのために作られたこの石畳は、山と人との関わりを感じさせる“祈り”の側面を物語ります。
巨大な岩に根を這わせ、太陽へしっかり枝葉を伸ばす木の生命力。
薄暗い森が突然ぱあっと明るくなってきたら、そこは作業林地帯。ここからは、トロッコ道が続きます。
山の恵みをいただく“林業”もまた、屋久島における、もうひとつの森と人との関わりを物語ります。
トロッコ道が切れ、さらに急登を登っていくと沢にぶつかります。徒渉箇所は2つ。繰り返しますが、増水時はくれぐれも無理して渡らないようにしましょう。
標高が上がるにつれ、杉から照葉樹へと森が様変わりしていきます。かなりきつい登りが続きます。
石畳の道がまっすぐ直登に続く道へさしかかると、それまで聴こえていた沢の音がふっと消え、明らかにこれまでとはなにかが違う、神秘的な雰囲気が漂います。空気が少し冷たいせいか、鳥肌が…。思わず手を合わせ、挨拶をしてから入りました。
神の名を冠する杉が3つもあるのだから、この辺りは神域と呼んで差し支えないのでしょう。三股に分かれたこの杉、なんだかゾウのおじいちゃんのように見えてきませんか?
空から地に向かって手が伸びているかのよう。杉の裏側を見ると、ハリボテのように空洞になっています。雷に打たれたところを見ると、こちらが雷神杉でしょうか。
龍神杉は、神域のずっと奥に鎮座していました。推定樹齢は2000年と言われており、昭和50年頃にはすでに今の名前で呼ばれていたそうです。これまで見た屋久杉の中でも、ひときわご神気に溢れた柔らかいものを感じます。きっと霧が漂う時は、その気配をより感じられるのでしょう。
人に開けた縄文杉に比べ、こちらはアクセスが困難な閉じた場所。だからこそ、この神秘的な雰囲気が保たれているのかもしれません。にぎやかなトレッキングが苦手な人は、ぜひ足を伸ばしてみてくださいね。
宮之浦から車で2〜30分。
登山口までの交通機関がないため、タクシーorレンタカー推奨。ただし、登山口付近は電波がなく、未舗装で道が荒れているため、不安な場合はガイドを頼みましょう。駐車場有。