ここは、なんと東京から船で約3時間。
伊豆諸島のひとつ、黒潮が流れる神津島(こうづしま)。
“神が集う島”と呼ばれるこの島の山の名前は、
「天上山(572m)」(名前までカッコイイ!)
天上山は島の中心にあり、
台形状の形をしている山です。
花の百名山でもあり、
日帰りで登れることから
初心者でも気軽に登りやすい山といえます。
歩くごとに景観が目まぐるしく変わり、
まるで2,000m級の山々のような景色も多いため、
熟練者でもかなりのワクワク気分が味わえるでしょう。
白い砂漠や池の数々、晴れれば伊豆諸島の島々も眺められます。
今回は竹芝桟橋ターミナルから、
大型客船でのんびり12時間かけて
神津島まで向かいました。
レインボーブリッジを通り過ぎ、
東京湾がどんどん離れていきます。
今左に見えている東京タワーは、
このあとだんだん中心に見えるようになり、
海からきた人を迎える灯台のように、真っ赤に灯ります。
船内で就寝し、翌朝10時ごろには
神津島・多幸湾に到着。
真っ白な岸壁と砂浜、
コバルトブルーの海に圧倒されます!
が、私たちはひどい船酔いでふらふら。
すぐ登山口に向かうつもりでしたが、とても無理。
予想以上に風が強いのも不安でした。
港まで迎えに来てくれた宿「丈栄丸」のご主人にも
「昨日まで大荒れでずっと休航だったんだよ。
お客さんたちかなり運がいいよ。
でも漁はまだだめだけどね。
明日には風も弱まって、凪(海がおだやか)になるよ。
今日はゆっくりしなさい」
といわれ、大人しく休むことに。
宿でしばらく休んだあと、付近の散策を開始。
神津島には数多くの神社があり、
島の人の信仰深さを感じられます。
ここは、参道が海と山の風をつなぐように
まっすぐ伸びていた、「物忌奈命神社」。
体がふわっと軽くなる気持ちのいい神社でした。
他にも、島の人から「ここが島の玄関だよ」
と教えてもらった港の竜神様など、
ご縁のあった神社に手を合わせたり
島の塩っぽい温泉に浸かったりしているうちに、
「今日天上山に登られなかったのは、
まず禊(心身の清め)をすべきってことだったのかな」
なんてことを思いました。
「丈栄丸」は漁師の宿。
冬が旬の金目鯛は、
残念ながら漁に出られないためお目にかかれませんでしたが、
代わりにマグロやタイやカンパチなどがどっさり!
これでも夕飯の一部で、一人朝食付き7,500円〜。
今回のルートは黒島登山口ピストン。山上まで一気に登り、あとは千代池や裏砂漠、展望地などをゆっくり周遊します。
しっかり身を清め(?)、体力も十分。
日の出と同時刻に、黒島登山口へ到着。
付近にはお手洗いもあります。
港町を背に、シダの茂る山道を登ります。
宿のご主人はもう、1週間ぶりの漁に出たのでしょうね。
日の出の町はとても静か。
登りきったところには大きな岩があり、
まるで別世界へ誘う門のように見えました。
天上山は、麓から上まで一気に登って、
あとは高山植物の生い茂る広い大地の上を
周遊するように巡ります。
ここからはきついアップダウンもほとんどないので、
ぜひのんびり歩きたいところ。
ときたま、こんなジャングルに出くわすことも。
神社にもお供えする榊(さかき)が自生していました。
砂漠帯には“裏砂漠”と“表砂漠”があり、より広大な裏砂漠をまずは目指します。にしても、標高500m台とは思えない景観ですね。屋久島の宮ノ浦岳や、北アルプスあたりにいるような錯覚に陥りそう。
裏砂漠。ここに立っていると、足の裏が少しぴりぴりしました。
花崗岩の砂礫(されき)によってできた不思議な大地。
ここに降った雨は時間をかけて伏流水となり、
島の人々の生活を長年潤してきたのだとか。
春にはオオシマツツジがそこかしこに咲いて、
この一帯はとても華やかになるんだそう。
振り返ると、なんだか宇宙人になった気分。
「新東京百景」にも選ばれた絶景。
手前が式根島、右が新島です。
一番奥には大島が、手前の三角形の島は利島ですね。
それまでずっと空に薄い雲がかかっていたのですが、
不動池にきたとたんピカーっときれいに晴れました。
ここは龍神様が祀られているという場所。
池は枯れて湿地になっていますが、
苔がまるで龍のうろこのように波打っています。
私たちは、しばらくじーっと佇んでいました。
山頂から海を見渡すと、朝方とは違って
とても濃いブルーになっていました。
フェリーの汽笛が空に響きます。
表砂漠まで下ります。
この窪地は西暦838年ごろ、
天上山が最後に噴火したときの噴火口と言われています。
白い砂地がだんだん雪渓に見えてきますね…。
さて、そろそろ下山しましょう。
神津島は、海も温泉も神社もあって山もある!
広大なキャンプ地やマリンスポーツが盛んな場所もあり、
温泉好きにもおすすめ。
島の魅力と登山を掛け合わせれば2倍楽しめるでしょう。
花咲く春や夏に、ぜひ訪れてみてくださいね。