「テントサウナ」というワード。みなさんは耳にしたことがあるでしょうか?
山登りにしても、キャンプにしても、楽しみ方が多様化している昨今、もっともアツい視線を浴びているのがテントサウナです。
テントサウナは、アウトドアでサウナを楽しむことができる、いわば“持ち運べる楽園”のようなもの。
川沿いにテントを張って、その中で薪を焚き、100度近くまでアツアツに温度を上げる。その中でジュワッと大量の汗をかき、目の前の清流に飛び込んで、いざクールダウン。
ふと見上げれば、風にそよぐ木の葉、そしてまっさらで大きな空。「あぁ~気持ちいいな……」なんてぼやきつつ、清流で汗をサッパリ流したら、椅子に腰かけたり、寝転んだりして、ただただぼーっと、心ゆくまで安らぎます。
自分だけの心地いいひととき……。テントサウナは、そんな究極のリラックスを味わえるひとつのツールなのです。
朝晩の冷え込みを感じるようになった、10月頭の週末。奥多摩湖からほど近い山梨県・小菅村の玉川キャンプ村に集結したのは、11のテントサウナと、160人のサウナ愛好家(通称:サウナー)のみなさん。
そこで行われていたのは、『サウナキャンプフェスティバル2019』。日本最大級のモバイルサウナの祭典です。
普段、サウナとは縁のない人なら、「サウナはガマン比べする場所」とか、「ただ熱いだけ」というイメージを持っている方、多くいると思います。けれど、本来のサウナの姿は、熱さをガマンするのではなく、身を清め、心を落ち着かせる空間。いわば温泉に入る感覚で楽しめるもの。
なので、サウナ初心者でも全然オッケー。「熱い!もう無理!」と感じたら、自分のタイミングで外に出ればいい。無理する必要はないのです。
ちなみに、日本のサウナは電気ストーブを使用するのが主流ですが、サウナ発祥の地フィンランドやロシアでは、薪ストーブで火をおこすスタイルも根強い人気を誇っているそう。ストーブの上に石を積み、石が温められたところで水をかけ、発生した蒸気を浴びる“ロウリュ”を楽しみます。
はっきり言って、このロウリュがめちゃくちゃキモチイイ! 一瞬でカラダが香りのいい蒸気に包まれて、汗がジュワッ~と出てくる、出てくる。
テントの中は100度近く、けっこうな高温をキープしていますが、蒸気が充満するので、カラカラした印象の強い日本のサウナとはひと味違った感覚です。
テントから出ると、そこには澄んだ空気、みずみずしい森、そして、ひんやりとした清流。火照ったカラダを清流でいたわり、ベンチにゴロン。これぞ、今までに味わったことのない究極のリラックス……!
ちなみに、この至極に達することを、サウナーのみなさんは“ととのう”と表現するそう。
この“ととのう”感覚、アウトドア愛好家のみなさんなら絶対に思い当たる節があるはず。
たとえば、山できれいな景色と出くわした瞬間。キャンプでパチパチとはじける炎のゆらぎを見つめているとき。森の中で朝早くに淹れるコーヒー。どこまでもクリーンな青空を見上げたとき……。これも最高に気持ちいい瞬間、“ととのう”感覚ですよね。
ちなみにサウナ初心者の筆者、最初は3分足らずで熱さに耐えられずギブアップしてしまいまして。でも、IN→OUTを繰り返していくうちに、段々とヤミツキになり、5分、10分と、少しずつ長く楽しめるようになりました。そして、しばらくしてハッとしたこと。これ本当にガマンとは真逆の世界じゃん……!
もちろん、「ヒィ~アツいぃ~」という思いはあるものの、カラダ中の血流を循環させながらドバーッと汗をかき、外の川に浸かって出た瞬間、長い登山道を経て山頂に立ったときのような最高の爽快さがあるというか。
山登りも、キャンプも、テントサウナも、自然のなかで心を落ち着かせる体験ができるというのは共通項目。テントサウナで必要なのは、“ととのいたい”気持ちそのものなんじゃないかな、と思いました。
ちなみに、会場では多くのサウナーたちがタオルポンチョとサウナハットというスタイル。タオルポンチョは川から上がったあとカラダを冷やさないため、サウナハットは、髪の毛を熱から守ることができるそう。このスタイルもめちゃくちゃカワイイ。
今年で2回目の開催となる『サウナキャンプフェスティバル2019』。この仕掛け人は、自身もサウナーでありキャンパーでもある、大西洋さんと兼康希望さん。
もともとキャンプが大好きで、アウトドア雑誌を手掛ける出版社に勤めていた経歴もある大西さん。当初は、キャンプはキャンプ、サウナはサウナで楽しんでいましたが、あるとき「テントサウナのあるキャンプが楽しすぎる」ことに気が付き、2017年に兼康さんと一緒に「Sauna Camp.」を結成。
アウトドアで楽しめるテントサウナの情報を発信していくなかで、「テントサウナに入ってみたい」、「自然の水風呂に飛び込みたい!」というサウナ愛好家の声に応えるべく、このイベントをスタートさせました。
今回、参加者の多くは、日頃からサウナを楽しんでいる愛好家の方が大多数でしたが、「今後はキャンパーの人たちにもテントサウナの良さをどんどん広めていきたい」と、大西さん。
うんうん、わたしも本当にそう思います。だって想像以上の気持ちよさですもん。それぞれを単体で味わうより、気持ちよさは2倍、いや30倍くらい増している気がします、本当に。
なかには大西さんのように、キャンプとサウナを別々に楽しんでいたけれど、テントサウナの存在を知ってハマってしまった! という参加者もいらっしゃいました。
イベントに参加していたゴルフィンさんとSurimiさんは、キャンプ、登山、釣りを楽しむアウトドア派。
Surimiさんは2年前の冬、とある静岡の銭湯での体験をきっかけにサウナ愛が沸騰。最近は友人とお金を出し合ってロシア製のテントサウナを購入したそうで、「仲間たちとキャンプでサウナを楽しみたい」とのこと。
そんなお二人とは対照的に、「普段アウトドアはしないけど、サウナが好きすぎてテントサウナを体験したら、キャンプが好きになった」という女性も。
今日の子さんは、「何か考えごとをしていても、サウナに入ると、熱い、でも気持ちいい!みたいに、感覚的になれる。余計なことを考えなくなって、頭のなかがまっさらになる。そういうところが好き」なんだとか。
サウナ好きの人がテントサウナを通して、アウトドアの魅力を知り、アウトドア好きの人がテントサウナを通して、サウナの魅力を知る。
サウナとキャンプって、考えてみるとめちゃくちゃ相思相愛。とってもイイ関係なのです!
個性豊かな11張りのテントサウナを行き来しながら、思い思いの時間を楽しむサウナーのみなさん。本当にイイ顔してました。みんな“ととのってる”!
ほかにも、“ウィスキング”と呼ばれるサウナ内で行うトリートメントブースや、小菅村のジビエが食べられる飲食店も参加。
会場は終始ピースフルさで満ちていて、五感フル活用で楽しめる空間になっていました。テントサウナ、本当に癖になる予感。
癒しあり、爽快さあり、身も心も深~い部分から“ととのう”テントサウナの世界。
きっとこれから、新しいアウトドアの楽しみ方のひとつになっていくだろうと思いました。これはもう、確信に近いです。
Sauna Camp.としては今後、キャンプ以外のアウトドアアクティビティー×テントサウナのコラボも企画中とのことなので、気になった方はぜひウェブサイトを覗いてみてください。
われわれ.HYAKKEIチームも、いずれ読者のみなさんと共同でテントサウナを作ったり、体験型イベントをやったりしてみたいなーと思う、今日この頃です。
(写真:飯坂大)