東京の西のはてにある絶景のチルアウトスポット、奥多摩湖。
四季ごとに移ろう美しい風景を見ていると、多くの人は、ここが東京であることを忘れてしまうだろう。
この圧倒的なパノラマを眼下に控える注目のカフェが昨年4月にオープンした「インディゴ・ブルー」だ。
ただひたすら目を奪われる湖の絶景。聞こえてくるのは、鳥の声と風のさやめき。ここに来て数分も過ごせば、体と心がみるみる生気を取り戻すのを感じられるだろう。
「都会だけで生活をしていると人間てやっぱりリズムが狂ってくる。それを感じたら、このカフェで体と心を癒やしてほしい。都内のカフェだと人の出入りも頻繁で、芯からゆったりできないでしょ。でもインディゴ・ブルーに来たら、何時間でもぼーっと過ごしてほしい。きっと帰るころには脳がすっかり休まって、満面の笑顔になっているはずですので」
そう話すのは、このカフェの仕掛人であるオーナーの小林利男さん。
実際、平日の昼間に一人で訪れ、2〜3時間もの間、何をするでもなくぼーっと縁側で過ごす常連客も少なくないとか。
その気になれば、2時間ちょっとで都心からアプローチできるこのカフェ。忙しすぎる日常のペースをちょっとスローダウンさせるにはもってこいのスポットなのである。
アイドル歌手、ホテルマンといったユニークなキャリアを積み、今ではこのカフェの他、複数のホテルを経営する小林さん。ここまでの歩みで一貫するのは、多くの人を喜ばせるために知恵と力を注ぐということだ。
現在、経営する東京・渋谷のホテル「サクラ・フルール青山」も若い女性向けに数々の工夫を施し、ユニークなホスピタリティで多くのファンの支持を得る。
小林さんとともに各地で企画を練り上げ、ホテルやカフェのあり方やデザインをディレクションした、代表取締役社長の嶋田美恵子さんはこう話す。
「『サクラ・フルール青山」』は渋谷で都会のど真ん中なんですが、大切な方を自分の家に招待するような感覚でホテルづくりをしてきました。
このホテルの特徴は、6割以上が女性のお客様であるということと、ビジネスホテルなのにリピーターがものすごく多いこと。仕事や飲み会で遅くなり、無理に自宅に帰るぐらいならこのホテルに泊まって自分のペースを保とうと、もう一つの自分の部屋のような感覚で利用されているんです。
これはまさにこちらが意図したホテルのあり方です。
インディゴ・ブルーも共通するコンセプトを持っています。コーヒーを飲むとかジェラートをいただくっていうことが第一の目的でなくてもいい。
都会に住む方々にとって、この非日常的空間が心身のバランスを良好に保つような場所になってくれればと考えているんです」
地方を盛り上げるプロジェクトを実現するため、ちょうど適切な場所を探していたという小林さん。
そんなタイミングでこの絶好の物件と巡り会えた。奥多摩との出会いは言ってみれば偶然だったが、この場所を見た途端、イマジネーションがどんどん膨らんでいったという。
「これだけ奥多摩湖を一望できる場所はそうそうありません。もとは庄屋さんだったという建物も雰囲気抜群ですしね。こんなに素敵な場所でありながら、東京っていうのがすごい。僕らがカフェを運営することで、もっとこのエリアを輝かせることができると思ったし、ここを中心として奥多摩全体の魅力をどんどん発信していけると感じたんです。」
インディゴブルーのこだわりのポイントは、地産地消。とってつけたオシャレさだけで地方を活気づける店作りはできないと話す。
カフェで出すカレーには燻製にした鹿肉と、奥多摩名産のわさびを使ったオイルを少々。奥多摩ならではの味わいに仕立てた。
和と洋を絶妙にミックスしたジェラート、麦味噌と赤味噌をあわせた味噌うどんも絶品。
どこまでもこだわった店づくりで、至福のひとときをゲストに提供する。
「オシャレさとかトレンドを追求していってしまうと、一過性の場所になっていってしまう。だから時代に振り回されず、本当に良いもの、良い空間づくりをして、都会で働く方々が何度でも遊びに来たいと思ってもらえるようなスポットにしていきたい。」
「奥多摩なら、都心に住む人にとって日常的に利用する隠れ家にもなり得るでしょう。数時間いるとなんだか気分がよくなっていく。そんな場所があれば誰だってやっぱりうれしいじゃないですか」
主張は強くないが確実にゆったりとした空間を演出するメロウな音楽。時が止まったかのような室内に置かれている小物・家具・器たちも、こだわりをもって一つ一つ丁寧に選ばれたことがよくわかる。
店内にさりげなく散らばるお店の気配りを探すだけでも、気持ちよくなれる。
可能なら、天気の良い平日、一人でこのカフェを訪れてみてほしい。
おそらく休日にはない平穏が、心地良く感じることだろう。
そして、時間を気にせず、静かな湖面を眺め続けていれば、
きっと自分のなかで、何かが変わるはずだ。