山のどの季節が好きなのかと聞かれると
答えに困ってしまう。
いつの季節を歩いても楽しいというのが
その返答に困る理由のひとつではあるのだけれども、
1番の理由は、季節というものは
はっきりと区切られているものではないと思うからだ。
山を歩いていると、
流れる時のなかで
自然の小さな変化のひとつひとつが
その日、その時の季節であって、
その季節が連なって存在しているように
感じるようになった。
そんなふうに季節が見えはじめたのは
いつ頃からだったろう。
何度も同じ山を、道を歩くことが
好きになったのも同じ頃だった。
そして、東京の街も同じように
季節を重ねていることに
気づいたのもちょうどその頃だったと思う。
きっと山も街もずっと前から
その日、その時の季節を重ねて
その場所に存在していたのだろう。
もうすこしゆっくりと歩いてみよう。
その時の季節を見つめるために。